宋名臣言行録 / 後集巻二・富弼
熈寧初公再相神宗首問邉事公曰陛下臨御未久臣愚以為首當推恩愛布德澤二十年未可道着用兵事若干戈一興上貽宸慮下竭民力願勿首先留意邉事萬一戎狄渝盟神人共憤為應敵之計可也上問所先當如何公曰阜安宇内為先
新字:熈寧初公再相神宗首問邉事公曰陛下臨御未久臣愚以為首当推恩愛布徳沢二十年未可道着用兵事若干戈一興上貽宸慮下竭民力願勿首先留意邉事万一戎狄渝盟神人共憤為応敵之計可也上問所先当如何公曰阜安宇内為先
書き下し
熙寧の初め、公再び相たり。神宗首めて邊事を問う。公曰く、陛下臨御未だ久しからず。臣愚以爲えらく、首めに當に恩愛を推し德澤を布くべし。二十年は未だ用兵の事を道着す可からず。若し干戈一たび興らば、上は宸慮を貽し、下は民力を竭くす。願わくは首先に邊事に意を留むる勿かれ。萬一戎狄盟を渝え、神人共に憤らば、敵に應ずるの計を爲すも可なりと。上、先んずる所は當に如何にすべきかを問う。公曰く、宇内を阜安するを先と爲すと。
現代語訳
熙寧のはじめ、富弼は再び宰相となった。神宗はまず辺境の事を問うた。富弼は言った。「陛下が位に即かれてまだ久しくありません。臣の愚見では、まず恩愛を推し及ぼし、徳の恵みを行き渡らせるべきです。二十年は、用兵の事を口になさるべきではありません。もし戦がひとたび起これば、上は陛下のお心を煩わせ、下は民の力を尽きさせます。どうか真っ先に辺境の事にお心を向けられませぬよう。万一、異民族が盟約を破り、神も人もともに憤るようなときは、敵に応ずる計を立てればよいのです」。天子は「では先にすべきことは何か」と問うた。富弼は言った。「国内を豊かに安んずることを先とします」。
解説
即位したばかりの若い天子が、最初に聞いたのが辺境の事でした。答えは、その問い自体を後ろへ回すものです。**二十年は、用兵の事を口になさるべきではありません。**期限を切ったのが効いています。永久にするな、ではない。順番の話にしています。しかも防衛は否定していません。**万一、異民族が盟約を破り、神も人もともに憤るようなときは、敵に応ずる計を立てればよい。**こちらから始めるな、ということだけを言った。**国内を豊かに安んずることを先とします。**この助言が容れられなかった顛末が、次から続きます。
この章句が説くこと
首めに当に恩愛を推し徳沢を布くべし二十年は未だ用兵の事を道着す可からず願わくは首先に辺事に意を留むる勿かれ万一戎狄盟を渝え神人共に憤らば敵に応ずるの計を為すも可なり抑制内政
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