宋名臣言行録 / 後集巻二・富弼
英宗一日因公進除目而震怒響滿一殿擲除目榻下公慨然搢笏拾除目進之曰天子亦有怒焉出九師以伐四夷否則陳斧鉞以誅大臣今日陛下之怒不為常事除目也必以臣等有大過惡可怒者何不誅臣以謝天下英宗為之霽色温言公進說猶久之不已
新字:英宗一日因公進除目而震怒響満一殿擲除目榻下公慨然搢笏拾除目進之曰天子亦有怒焉出九師以伐四夷否則陳斧鉞以誅大臣今日陛下之怒不為常事除目也必以臣等有大過悪可怒者何不誅臣以謝天下英宗為之霽色温言公進説猶久之不已
書き下し
英宗一日、公の除目を進むるに因りて震怒す。響き一殿に滿つ。除目を榻下に擲つ。公慨然として笏を搢し、除目を拾いて之を進めて曰く、天子にも亦た怒り有り。九師を出して以て四夷を伐つか、否らずんば則ち斧鉞を陳ねて以て大臣を誅すかなり。今日の陛下の怒りは、常事の除目の爲ならず。必ず臣等に大過惡の怒る可き者有らん。何ぞ臣を誅して以て天下に謝せざるやと。英宗之が爲に色を霽らし言を溫かにす。公の說を進むること猶お之を久しくして已まず。
現代語訳
英宗がある日、富弼が人事の書類を進めたことで激怒した。その響きは殿中に満ちた。書類を長椅子の下に投げ捨てた。富弼は憤然として笏を帯に差し、書類を拾い上げて、これを差し出して言った。「天子にもまた怒りはございます。九師を出して四方の異民族を討つか、そうでなければ斧鉞を並べて大臣を誅するか、そのどちらかです。今日の陛下のお怒りは、日常の人事書類のためではありますまい。必ず臣らに、お怒りになるべき大きな過ちがあるのでしょう。どうして臣を誅して天下にお詫びなさらないのですか」。英宗はそのために顔色を和らげ、言葉を温かにした。富弼は、そのあとも長いあいだ説き続けてやめなかった。
解説
投げ捨てられた書類を、拾って差し出し直すところから始まります。逃げも謝りもしていません。そして怒りの寸法を測り直しました。**天子にもまた怒りはございます。九師を出して四方の異民族を討つか、斧鉞を並べて大臣を誅するか、そのどちらかです。**天子の怒りとは、そういう規模のものだ、と定義した。だから結論はこうなります。**今日のお怒りは、日常の人事書類のためではありますまい。必ず臣らに、お怒りになるべき大きな過ちがあるのでしょう。**怒りを受け流さず、正面から引き受けて、その行き先を用意しました。
この章句が説くこと
公慨然として笏を搢し除目を拾いて之を進む天子にも亦た怒り有り九師を出して以て四夷を伐つか否らずんば則ち斧鉞を陳ねて以て大臣を誅すかなり何ぞ臣を誅して以て天下に謝せざるや怒り諫言
関連する章句
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