宋名臣言行録 / 後集巻一・韓琦
公嘗從容議及養兵事慨然曰琦有所思而得之未嘗語人人亦未必信養兵雖非古然積習既久不可廢之又自有利處不為不深昔者發百姓戍邉無虚嵗父子兄弟有生離死别之苦議者但以不如漢唐調兵於民獨不見杜甫石壕吏一篇調兵於民其弊至此後世既收拾強悍無頼者養之以為兵良民雖歛稅良厚而終身保骨肉相聚之樂此豈小事又其練習戰陣而豪壯可使安得與農民同日道也
新字:公嘗従容議及養兵事慨然曰琦有所思而得之未嘗語人人亦未必信養兵雖非古然積習既久不可廃之又自有利処不為不深昔者発百姓戍邉無虚歳父子兄弟有生離死別之苦議者但以不如漢唐調兵於民独不見杜甫石壕吏一篇調兵於民其弊至此後世既収拾強悍無頼者養之以為兵良民雖歛税良厚而終身保骨肉相聚之楽此豈小事又其練習戦陣而豪壮可使安得与農民同日道也
書き下し
公嘗て從容として議、養兵の事に及ぶ。慨然として曰く、琦思う所有りて之を得たり。未だ嘗て人に語らず。人も亦た未だ必ずしも信ぜざらん。兵を養うは古に非ずと雖も、然れども積習既に久しく、之を廢す可からず。又た自ら利する處有り、深からずと爲さず。昔は百姓を發して邊を戍らしめ、虚しき歳無し。父子兄弟に生離死別の苦有り。議する者は但だ漢唐の兵を民に調うるに如かずと以う。獨り杜甫の石壕吏一篇を見ざるか。兵を民に調うれば、其の弊此に至る。後世既に強悍無賴の者を收拾し、之を養いて以て兵と爲す。良民は稅を歛めらるること良に厚しと雖も、而れども終身骨肉相い聚まるの樂しみを保つ。此れ豈に小事ならんや。又た其の戰陣を練習して豪壯なるは使う可し。安んぞ農民と日を同じくして道うを得んやと。
現代語訳
韓琦がくつろいだ場で議論し、兵を養う制度の話に及んだ。感慨をこめて言った。「琦は考えるところがあって、この見方を得た。まだ人に語ったことがないし、人もまた必ずしも信じないだろう。兵を養う制度は古のやり方ではないが、積み重ねてきて久しく、廃止することはできない。またおのずと利のあるところがあり、それも浅くはない。昔は民を徴発して国境を守らせ、それのない年はなかった。父子兄弟に生き別れ死に別れの苦しみがあった。論ずる者はただ、漢や唐が兵を民から徴発したのに及ばないと言う。しかし杜甫の『石壕吏』一篇を見ないのか。兵を民から徴発すれば、その弊害はここまで行く。後世は荒々しく身を持て余した者を集め、これを養って兵とした。良民は税を取られることこそ確かに重いが、生涯にわたって肉親が寄り集まる楽しみを保っている。これがどうして小さな事であろうか。そのうえ、彼らは戦陣を訓練して勇壮であり、使いものになる。どうして農民と同じに論じられようか」。
解説
この章句が説くこと
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