宋名臣言行録 / 後集巻一・韓琦
公論近世宰相獨許裴晉公本朝惟師服王沂公又嘗云若晉公㸃檢着亦有未盡處君子成人之美不可言也不知摘晉公何事或問威克厥愛允濟如潞公臨大事全是威何如曰待威而後濟者亦是也然不湏以威而能濟者觀公意豈以德不足者必待威以立事耶古人謂鵰鶚百鳥望而畏之鸞鳯百鳥望而愛之其服則一其品相逺矣
新字:公論近世宰相独許裴晉公本朝惟師服王沂公又嘗云若晉公㸃検着亦有未尽処君子成人之美不可言也不知摘晉公何事或問威克厥愛允済如潞公臨大事全是威何如曰待威而後済者亦是也然不須以威而能済者観公意豈以徳不足者必待威以立事耶古人謂鵰鶚百鳥望而畏之鸞鳯百鳥望而愛之其服則一其品相遠矣
書き下し
公、近世の宰相を論ずるに、獨り裴晉公を許す。本朝は惟だ王沂公を師服す。又た嘗て云う、晉公の若きも點檢し著くれば、亦た未だ盡くさざる處有り。君子は人の美を成す、言う可からざるなりと。晉公の何事を摘めるかを知らず。或るひと問う、威、厥の愛に克たば、允に濟る、と。潞公の大事に臨むが如きは全く是れ威なり。何如と。曰く、威を待ちて而る後に濟る者も亦た是れなり。然れども威を須いずして能く濟る者ありと。公の意を觀るに、豈に德の足らざる者は必ず威を待ちて以て事を立つるを以てせんや。古人謂う、鵰鶚は百鳥望みて之を畏る。鸞鳳は百鳥望みて之を愛す。其の服するは則ち一なるも、其の品は相い遠しと。
現代語訳
韓琦は近ごろの宰相を論じて、ただ裴度だけを認めた。本朝では王曾だけを師として服した。またかつて言った。「裴度のような人でも、点検してみれば、なお尽くさぬところがある。君子は人の美点を成すものだ、口にすべきではない」。裴度のどの事を指摘したのかは分からない。ある人が問うた。「『威がその愛に勝てば、まことに事は成る』と言います。文彦博が大事に臨むさまは、まったく威です。いかがでしょうか」。韓琦は言った。「威を待ってはじめて成し遂げる者も、それはそれでよい。しかし威を用いずに成し遂げられる者もある」。韓琦の意を推し量ると、徳の足りない者こそ、必ず威を待ってはじめて事を立てるということであろうか。古人は言った。「鵰や鶚は、百の鳥が望んでこれを畏れる。鸞や鳳は、百の鳥が望んでこれを愛する。従うという点では同じだが、その品位は遠く隔たっている」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
論語・衛霊公篇子曰く、由、徳を知る者は鮮なし。
-
論語・為政篇子曰く、政を為すに徳を以てすれば、譬えば北辰其の所に居て衆星之に共(むか)うが如し。
-
論語・為政篇子曰く、之を道びくに政を以てし、之を斉(ととの)うるに刑を以てすれば、民免れて恥無し。之を道びくに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥有り且つ格(いた)る。
-
論語・憲問篇南宮适、孔子に問いて曰く、「羿は射を善くし、奡は舟を盪かす。倶に其の死を得ざりき。禹・稷は躬ら稼して天下を有てり。」夫子答えず。南宮适出づ。子曰く、「君子なるかな若き人。徳を尚ぶかな若き人。」
-
呂氏春秋・精通③德なる者は、萬民の宰なり。月なる者は、群陰の本なり。月望なれば則ち蚌蛤實ち、群陰盈つ。月晦なれば則ち蚌蛤虚しく、群陰虧く。夫れ月、天に形われて、群陰、淵に化す。聖人、德を己に行いて、四方咸仁に飭し。
-
孫子・始計篇将とは、智・信・仁・勇・厳なり。