宋名臣言行録 / 後集巻一・韓琦
公在大名日有人獻玉盞二隻云耕者入壞塜而得表裏無纎瑕可指亦絶寳也毎開宴召客特設一棹覆以錦衣置盞其上一日召漕使且將用之酌酒勸座客俄為一吏誤觸倒玊盞俱碎坐客皆愕然吏且伏罪公神色不動笑謂座客曰凡物之成毁亦自有數俄頋吏曰汝誤也非故也何罪之有坐客皆嘆公寛厚不已
新字:公在大名日有人献玉盞二隻云耕者入壊塜而得表裏無繊瑕可指亦絶宝也毎開宴召客特設一棹覆以錦衣置盞其上一日召漕使且将用之酌酒勧座客俄為一吏誤触倒玊盞倶砕坐客皆愕然吏且伏罪公神色不動笑謂座客曰凡物之成毀亦自有数俄頋吏曰汝誤也非故也何罪之有坐客皆嘆公寛厚不已
書き下し
公大名に在るの日、人の玉盞二隻を獻ずる有り。云う、耕す者壞塜に入りて得たりと。表裏に指す可き纖瑕無く、亦た絶寶なり。宴を開き客を召す毎に、特に一棹を設け、覆うに錦衣を以てし、盞を其の上に置く。一日、漕使を召し、且に將に之を用いて酒を酌み座客に勸めんとす。俄かに一吏の誤り觸るる爲に倒れ、玉盞倶に碎く。座客皆愕然たり。吏且に罪に伏せんとす。公神色動かず、笑いて座客に謂いて曰く、凡そ物の成毀は亦た自ら數有りと。俄かに吏を顧みて曰く、汝は誤れるなり、故に非ざるなり。何の罪か之れ有らんと。座客皆公の寬厚を嘆じて已まず。
現代語訳
韓琦が大名にいたころ、玉の盃を二つ献上した人があった。「耕す者が壊れた墓に入って手に入れたもの」だと言う。表にも裏にも指せるほどの細かい傷もなく、たぐいまれな宝であった。宴を開いて客を招くたび、わざわざ一つの卓を設け、錦の布で覆い、その上に盃を置いた。ある日、漕運の使者を招き、まさにこれを使って酒を酌み、客に勧めようとした。突然、一人の役人が誤って触れて倒し、玉の盃は二つとも砕けた。列席の客はみな愕然とした。役人は罪に服そうとした。韓琦は顔色ひとつ変えず、笑って列席の客に言った。「およそ物の成ることも毀れることも、おのずと定めがあるものだ」。ややあって役人を顧みて言った。「お前は誤ったのだ。わざとではない。何の罪があろうか」。列席の客はみな、韓琦の寛厚を嘆じてやまなかった。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『忍経』物成毀有時數魏國公韓琦大名に鎮たり。日に人の玉杯二隻を獻ずる有りて曰く、「耕す者壞塚に入りて之を得たり。表裏暇(瑕)の指すべき無し、絕寶なり」と。公白金を以て之に答へ、尤も寶玩と爲す。開宴して客を召す每に、將に一桌を設け、覆ふに錦衣を以てし、玉杯を其の上に置く。一日漕使を召し、且に將に之を用ひんとし、酒を酌みて坐客に勸む。俄かに一吏の誤りて觸倒する所と爲り、玉杯俱に碎く。坐客皆な愕然とし、吏且つ地に伏して罪を待つ。公神色動かず、笑ひて坐客に謂ひて曰く、「凡そ物の成毀も、亦た自ら時數有り」と。俄かに吏を顧みて曰く、「汝の誤りなり、故にするに非ざるなり、何の罪か之れ有らん」と。坐客皆な公の寬厚の德を歎服して已まず。
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『宋名臣言行録』後集巻一・韓琦公定州を帥いる時、夜書を作る。一の侍兵をして燭を持たしむ。侍兵旁ら視て、燭公の鬚を燃やす。公遽かに袖を以て之を摩し、而して書を作ること故の如し。少頃回り視れば、則ち已に其の人を易えたり。公、主吏の之を鞭うつを恐れ、亟かに呼びて之を視て曰く、易うる勿かれ。渠已に燭を把るを解せりと。軍中感服す。
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『宋名臣言行録』後集巻一・韓琦公の元勲盛德は此くの如きも、人の一小善を聞かば則ち曰く、琦は及ばざるなりと(別錄)。公平日、人才を奬進すること極めて博し。心に許す者に至っては一二人に過ぎず。多く其の人の長を與え人の短を忘れて之を用うるを見て、太だ濫なりと謂う。其の實、胸中は黑白ならざるにあらず。
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『宋名臣言行録』後集巻一・韓琦同館の王拱辰・御史の蕭定基と同じく開封府の舉人を發解す。二公時に爭喧有り。公幕中に安坐して試卷を閲し、聞かざるが如し。拱辰、己を助けざるを忿り、公の室に詣りて公に謂いて曰く、此の中にて宰相の氣度を習うかと。公和顔して之を謝す。
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『宋名臣言行録』後集巻一・韓琦公魏府に在り。僚屬の路拯なる者、案に就きて有司の事を呈す。而して狀の尾に名を書くを忘る。公即ち袖を以て之を覆い、首を仰げて與に語り、稍稍潛かに卷きて以て之に授く。
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『宋名臣言行録』後集巻一・韓琦魏公・潞公倶に嘗て北門に鎮す。魏公の時、朝城の令、一の守把の兵士を決す。方に二下にして輒ち悖罵して已まず。令、以て府に解す。魏公前ましめて問いて云う、汝長官を罵るとは信なるかと。對えて曰く、當時忿に乘じて實に之有りと。公即ち解狀に於いて處斬と判ず。從容平和にして、略ミ色を變ぜず。潞公の時、復た一卒を解する者有り、猶お前者のごとし。潞公震怒して之を問う。兵の對うること實の如し。公も亦た處斬と判ず。此を以て二公の量の同じからざるを見る。魏公の如きは則ち、彼れ自ら法を犯す、吾何の怒りか之れ有らんと。惟だ學術の妙のみならず、亦た天資の髙きのみ。

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