宋名臣言行録 / 後集巻一・韓琦
公帥定州時夜作書令一侍兵持燭侍兵旁視燭燃公鬚公遽以袖摩之而作書如故少頃囬視則已易其人矣公恐主吏鞭之亟呼視之曰勿易渠已解把燭矣軍中感服
書き下し
公定州を帥いる時、夜書を作る。一の侍兵をして燭を持たしむ。侍兵旁ら視て、燭公の鬚を燃やす。公遽かに袖を以て之を摩し、而して書を作ること故の如し。少頃回り視れば、則ち已に其の人を易えたり。公、主吏の之を鞭うつを恐れ、亟かに呼びて之を視て曰く、易うる勿かれ。渠已に燭を把るを解せりと。軍中感服す。
現代語訳
韓琦が定州を統べていたとき、夜に書き物をしていた。一人の侍衛の兵に燭を持たせていた。その兵がよそ見をして、燭が韓琦の鬚を焼いた。韓琦はとっさに袖でこれをこすり、そのまま書き物を続けた。しばらくして振り返ると、すでにその者は交代させられていた。韓琦は担当の役人がその兵を鞭打つのを恐れ、急いで呼んで確かめて言った。「替えるな。あの者はもう燭の持ち方を覚えた」。軍中の者は感服した。
解説
六十六字に、三つの手当てが入っています。まず、その場で騒がなかった。**とっさに袖でこすり、そのまま書き物を続けた。**次に、いなくなっているのに気づいた。黙って処理されていたのを見逃していません。そして止めに行きます。**替えるな。あの者はもう燭の持ち方を覚えた。**罰を免じただけではありません。失敗した直後のその人こそ、いちばん確実に持てるようになっている、と理屈で言い切っています。責めない理由が同情ではなく、能力の話になっているところが利いています。
この章句が説くこと
侍兵旁ら視て燭公の鬚を燃やす公遽かに袖を以て之を摩し而して書を作ること故の如し公主吏の之を鞭うつを恐る易うる勿かれ渠已に燭を把るを解せり失敗育成
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