宋名臣言行録 / 後集巻一・韓琦
公自長安入覲朝廷欲留之公隂知時事遂堅請相陛辭日上謂卿去誰可屬國者公引元老一二人上問金陵何如公曰為翰林學士則有餘處此地則不可上又不答公便退後有問公何以識之公曰嘗讀金陵答楊忱一書窺其心術只為一身不為天下以此知非宰相器
新字:公自長安入覲朝廷欲留之公陰知時事遂堅請相陛辞日上謂卿去誰可属国者公引元老一二人上問金陵何如公曰為翰林学士則有余処此地則不可上又不答公便退後有問公何以識之公曰嘗読金陵答楊忱一書窺其心術只為一身不為天下以此知非宰相器
書き下し
公長安より入覲す。朝廷之を留めんと欲す。公陰かに時事を知り、遂に堅く請う。陛辭の日、上謂う、卿去らば誰か國を屬す可き者ぞと。公、元老一二人を引く。上問う、金陵は何如と。公曰く、翰林學士と爲らば則ち餘り有り。此の地に處るは則ち不可なりと。上又た答えず。公便ち退く。後に公に問う有り、何を以て之を識れるやと。公曰く、嘗て金陵の楊忱に答うる一書を讀み、其の心術を窺えり。只だ一身の爲にして、天下の爲にせず。此を以て宰相の器に非ざるを知ると。
現代語訳
韓琦は長安から都に入って朝見した。朝廷は引き留めようとした。韓琦はひそかに時の情勢を知って、それで堅く外任を願った。天子に別れを告げる日、天子は言った。「卿が去ったら、誰に国を託せるだろうか」。韓琦は元老を一、二人挙げた。天子は尋ねた。「金陵(王安石)はどうか」。韓琦は言った。「翰林学士とするなら余りあります。この地位に置くのは、いけません」。天子はそれには答えなかった。韓琦はそのまま退いた。後にある人が韓琦に尋ねた。「どうしてそれがお分かりになったのですか」。韓琦は言った。「かつて金陵が楊忱に答えた一通の手紙を読んで、その心の働きようを窺った。ただ一身のためであって、天下のためではない。これで宰相の器ではないと知った」。
解説
前条で「人を用いるには邪と正を見分けよ」と言った人が、その見分けを実演した条です。評は職に分けて出されました。**翰林学士とするなら余りある。この地位に置くのは、いけません。**能力を否定していません。置く場所の話をしています。根拠を問われての答えが、この条の値打ちです。**かつて金陵が楊忱に答えた一通の手紙を読んで、その心の働きようを窺った。**業績でも評判でもなく、私信の書きぶりから見ています。**ただ一身のためであって、天下のためではない。**天子は答えませんでした。のちの新法をめぐる二十年を知って読むと、この沈黙が重く残ります。
この章句が説くこと
卿去らば誰か国を属す可き者ぞ翰林学士と為らば則ち余り有り此の地に処るは則ち不可なり其の心術を窺えり只だ一身の為にして天下の為にせず此を以て宰相の器に非ざるを知る人物評器量
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人物志・接識故に一流の人は、能く一流の善を識る。二流の人は、能く二流の美を識る。
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論語・子路篇子曰く、君子は事え易くして説ばせ難きなり。之を説ばすに道を以てせざれば、説ばざるなり。其の人を使うに及びてや、之を器にす。小人は事え難くして説ばせ易きなり。之を説ばすに道を以てせずと雖も、説ぶなり。其の人を使うに及びてや、備わらんことを求む。
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説苑・臣術楚の令尹死す。景公成公幹に遇いて曰く、「令尹将た焉くにか帰せん」と。成公幹曰く、「殆ど屈春に於いてか」と。景公怒りて曰く、「国人以て我に帰すと為す」と。成公幹曰く、「子の資少なく、屈春の資多し。子義天下の至憂を獲て、而れども以て友と為す。鳴鶴と芻狗と、其の知甚だ少なきも、而れども子之を玩ぶ。鴟夷子皮日に屈春に侍し、損頗友と為る。二人の智、以て令尹と為るに足るも、敢えて其の智を専らにせずして之を屈春に委ぬ。故に曰く、政其れ屈春に帰せんかと」と。
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説苑・善說子路孔子に問いて曰く、「管仲は何如なる人ぞや。」子曰く、「大人なり。」子路曰く、「昔者管子襄公に說くも、襄公說ばず、是れ辯ならざるなり。公子糾を立てんと欲するも能わず、是れ能無きなり。家齊に殘わるるも憂色無し、是れ慈ならざるなり。桎梏せられて檻車の中に居るも慚色無し、是れ愧無きなり。射る所の君に事う、是れ貞ならざるなり。召忽之に死すれども、管仲死せず、是れ仁無きなり。夫子何を以て之を大とするか。」子曰く、「管仲襄公に說くも、襄公說ばず、管仲辯ならざるに非ず、襄公說ぶを知らざるなり。公子糾を立てんと欲するも能わざるは、能無きに非ず、時に遇わざるなり。家齊に殘わるるも憂色無きは、慈ならざるに非ず、命を知るなり。桎梏せられ檻車に居りて慚色無きは、愧無きに非ず、自ら裁するなり。射る所の君に事うるは、貞ならざるに非ず、權を知るなり。召忽之に死すれども、管仲死せざるは、仁無きに非ず。召忽なる者は、人臣の材なり、死せずんば則ち三軍の虜なり。之に死すれば則ち名天下に聞こゆ、夫れ何為れぞ死せざらんや。管仲なる者は、天子の佐、諸侯の相なり。之に死すれば則ち溝中の瘠と爲るを免れず、死せずんば則ち功復た天下に用いらる、夫れ何爲れぞ之に死せんや。由よ、汝知らざるなり。」
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