宋名臣言行録 / 後集巻一・韓琦
定卒惡米陳下執籌不請公時為帥聞之馳入倉羣卒約十餘人皆持米前訴公曰米乃如此餘人皆退後出懷中米一裹曰琦亦請此朝廷置此米一㪷約八鐶内地不售一百今雖陳下售猶不失四鐶適皆自汝扇揺命盡戮十卒於前公凝然不動一軍股栗
新字:定卒悪米陳下執籌不請公時為帥聞之馳入倉羣卒約十余人皆持米前訴公曰米乃如此余人皆退後出懐中米一裹曰琦亦請此朝廷置此米一㪷約八鐶内地不售一百今雖陳下售猶不失四鐶適皆自汝扇揺命尽戮十卒於前公凝然不動一軍股栗
書き下し
定の卒、米の陳きを惡み、籌を執りて請けず。公時に帥爲り。之を聞きて馳せて倉に入る。羣卒約そ十餘人、皆米を持ちて前みて訴う。公曰く、米乃ち此くの如きかと。餘人皆退く。後に懷中の米一裹を出して曰く、琦も亦た此を請く。朝廷此の米を置くに、一㪷約そ八鐶。内地にては一百に售らず。今陳きに下ると雖も、售れば猶お四鐶を失わず。適ま皆汝より扇搖せりと。命じて十卒を前に盡く戮す。公凝然として動かず、一軍股栗す。
現代語訳
定州の兵が、米が古いといって嫌い、受け取りの札を手にしたまま受領を拒んだ。韓琦はそのとき司令官であった。これを聞いて馬を飛ばして倉に入った。兵十数人ばかりが、みな米を手にして進み出て訴えた。韓琦は言った。「米はこのとおりか」。ほかの者はみな退いた。そのあと懐から米を一包み取り出して言った。「韓琦もまた、この米を受け取っている。朝廷がこの米を置くのに、一斗でおよそ八鐶かかる。内地では百銭でも売れない品だ。いま古びたとはいえ、売ればなお四鐶は下らない。さっきのはみな、お前たちが煽ったものだ」。命じて十人の兵をその場ですべて斬った。韓琦は身じろぎもせず、全軍が震え上がった。
解説
訴えを受けた司令官が、最初にしたのは反論ではありません。**懐から米を一包み取り出して、韓琦もまた、この米を受け取っている、と言った。**同じものを食べている、という一点を先に置いてから、値の話をしています。そのうえで、これは不満ではなく煽動だと断じ、十人を斬りました。**身じろぎもせず、全軍が震え上がった。**現代の目には行き過ぎに映る条です。この書はそれを削らずに、恩を書いた次の頁に威を並べて置きます。前条の「恩と威のどちらも信じられるように」の、威のほうの実物です。
この章句が説くこと
米乃ち此くの如きか琦も亦た此を請く朝廷此の米を置くに一㪷約そ八鐶適ま皆汝より扇揺せり公凝然として動かず一軍股栗す公平扇動
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