宋名臣言行録 / 前集巻八・狄青
智髙兵敗奔邕州其下皆欲窮其窟穴青亦不從以謂趨利乘勢入不測之城非大將事智髙因而獲免天下皆罪青不入邕州脱智髙於埀死然青之用兵主勝而已不求竒功故未嘗大敗計功最多卒爲名將譬如奕棋巳勝敵可止矣然猶攻擊不已徃徃大敗此青之所戒也臨利而能戒乃青之過人處
新字:智高兵敗奔邕州其下皆欲窮其窟穴青亦不従以謂趨利乗勢入不測之城非大将事智高因而獲免天下皆罪青不入邕州脱智高於埀死然青之用兵主勝而已不求奇功故未嘗大敗計功最多卒為名将譬如奕棋巳勝敵可止矣然猶攻擊不已往往大敗此青之所戒也臨利而能戒乃青之過人処
書き下し
智髙、兵敗れて邕州に奔る。其の下、皆な其の窟穴を窮めんと欲す。青も亦た從わず。以謂えらく、利に趨り勢いに乘じて不測の城に入るは、大將の事に非ずと。智髙、因りて免るるを獲たり。天下皆な青の邕州に入らずして、智髙を埀死に脱せしむるを罪とす。然れども青の兵を用うる、勝を主とするのみ。竒功を求めず。故に未だ嘗て大敗せず。功を計るに最も多し。卒に名將と爲る。譬えば奕棋の如し。巳に敵に勝てば止む可きのみ。然るに猶お攻擊して已まざれば、徃徃にして大敗す。此れ青の戒むる所なり。利に臨みて能く戒む。乃ち青の人に過ぐる處なり。
現代語訳
儂智高は兵が敗れて邕州へ逃げた。その部下たちはみな、その巣穴まで追い詰めようとした。狄青はやはり従わなかった。「利に走り勢いに乗って、測り知れない城に入るのは、大将のすることではない」と考えた。儂智高はそれによって免れた。天下はみな、狄青が邕州に入らず、儂智高を死に瀕したところから逃がしたことを咎めた。しかし狄青の用兵は、勝つことを主とするだけであった。奇抜な功を求めなかった。だから一度も大敗しなかった。功を数えれば最も多い。ついに名将となった。たとえば碁のようなものである。すでに敵に勝ったなら、そこでやめればよい。それなのになお攻撃をやめなければ、しばしば大敗する。これが狄青の戒めていたところである。利を前にして戒められる。それが狄青の人に勝るところである。
解説
追い詰めなかったことを、天下が咎めた条です。理由が一行でした。**利に走り勢いに乗って、測り知れない城に入るのは、大将のすることではない。**編者の弁護が良い。**勝つことを主とするだけで、奇抜な功を求めなかった。だから一度も大敗しなかった。功を数えれば最も多い。**そして碁の喩え。**すでに勝ったならやめればよい。なお攻撃をやめなければ、しばしば大敗する。利を前にして戒められる。それがこの人の人に勝るところだ。**
この章句が説くこと
利に趨り勢いに乗じて不測の城に入るは大将の事に非ず青の兵を用うる勝を主とするのみ奇功を求めず故に未だ嘗て大敗せず巳に敵に勝てば止む可きのみ利に臨みて能く戒む抑制深追い勝ち
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『宋名臣言行録』前集巻八・狄青初め青、自ら智髙を擊たんことを請う。諌官韓絳、上言す、青は武人なり。專任するに足らず。固く侍從の文臣を以て之が副と爲さんことを請うと。上、以て執政に問う。時に龎籍、獨り相と爲る。對えて曰く、屬者、王師の屢々敗るる所以は、皆な大將自ら輕んじ、偏禆人人自ら用い、賊に遇いて或いは進み或いは退き、力、制する能わざるに由るなり。今、青は行伍より起こる。若し侍從の臣を以て之に副えば、彼、青を視ること無きが如し。青の號令、復た行うを得ず。是れ覆車の軌を循るなり。青、昔、鄜延に在りて臣の麾下に居る。沉勇にして智略有り。若し專ら智髙の事を以て之に委ね、青をして先ず威を以て衆を齊えしめ、然る後に之を用いば、必ず能く賊を辦ぜん。幸わくは陛下、以て憂いと爲す勿かれと。上曰く、善しと。是に於て詔して、嶺南の用兵、皆な青の節度を受けしむ。
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『宋名臣言行録』前集巻八・狄青青の命を受くるや、貴近に因りて青に從いて行かんことを求むる者有り。青、延見して之に謂いて曰く、君、青に從いて行かんと欲す。此れ青の求むる所なり。何ぞ必ずしも人の言に因らんや。然れども智髙は小冦なり。青を遣わして行かしむるに至る。以て事の急なるを知る可し。青に從うの士、能く賊を擊ちて功有らば、朝廷に厚賞有り。青、敢えて之が爲に請わずんばあらず。若し徃きて賊を擊つ能わずんば、則ち軍中の法重し。青、敢えて私せざるなり。君、其れ之を思え。行くを願わば則ち即ち奏して君を取らん。獨り君のみに非ず。君の親戚・交遊の士、幸わくは皆な此の言を以て之に告げよ。茍しくも行かんと欲する者は、皆な青の求むる所なりと。是に於て聞く者大いに駭き、復た敢えて言いて青に從いて行かんことを求むる者無し。其の辟取する所は、皆な青の素より知る所にして、以て用う可しと爲す者なり。人望固より巳に歸せり。