宋名臣言行録 / 前集巻七・种世衡
將軍知謀已行因欲并間天都又為置祭境上作文書於版以弔多述野利與天都相結有意本朝悼其垂成而失其文雜紙幣伺有虜至急爇之以歸版字不可遽滅虜人得之以獻元昊天都以此亦得罪元昊既失二將乆之始悟為將軍所賣遂定講和之䇿焉
新字:将軍知謀已行因欲并間天都又為置祭境上作文書於版以弔多述野利与天都相結有意本朝悼其垂成而失其文雑紙幣伺有虜至急爇之以帰版字不可遽滅虜人得之以献元昊天都以此亦得罪元昊既失二将乆之始悟為将軍所売遂定講和之策焉
書き下し
將軍、謀の已に行わるるを知る。因りて并びに天都を間たんと欲す。又た為に祭を境上に置く。文を版に書して以て弔す。多く野利と天都と相い結び、本朝に意有るを述ぶ。其の垂成にして失するを悼む。其の文を紙幣に雜え、虜の至る有るを伺いて急に之を爇きて以て歸る。版字、遽かには滅す可からず。虜人之を得て以て元昊に獻ず。天都、此を以て亦た罪を得たり。元昊、既に二將を失う。乆しくして始めて將軍に賣らるるを悟る。遂に講和の䇿を定めしなり。
現代語訳
将軍は謀りがもう効いたと知った。そこであわせて天都王をも離間しようとした。さらに国境の上に祭壇を置いた。文を板に書いて弔った。文にはもっぱら、野利と天都が結び合って本朝に心を寄せていたこと、それが成る寸前で失われたのを悼むことが述べてあった。その文を紙銭に混ぜて、敵が来るのを見計らって急いで焼いて帰った。板の字は、すぐには消えなかった。敵の者がそれを手に入れて元昊に献じた。天都王はこれによってやはり罪を得た。元昊は二人の将を失った。長いことたって、はじめて将軍に売られたのだと悟った。そこで講和の策を定めた。
解説
一人を除いたあと、その弔いを口実にもう一人を除いた条です。仕掛けが細かい。**国境に祭壇を置いて、板に弔いの文を書く。文には、野利と天都が結んで本朝に心を寄せていた、それが成る寸前で失われた、と書いた。**そして敵が近づいたところで急いで焼いて帰る。**板の字は、すぐには消えなかった。**焼き損なったように見せています。拾った敵がそれを元昊に届けました。**元昊は長いことたって、はじめて売られたのだと悟った。**
この章句が説くこと
文を版に書して以て弔す多く野利と天都と相い結び本朝に意有るを述ぶ其の文を紙幣に雑え虜の至る有るを伺いて急に之を爇きて以て帰る版字遽かには滅す可からず虜人之を得て以て元昊に献ず離間偽装証拠
関連する章句
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『宋名臣言行録』前集巻七・种世衡元昊、是に於て野利を疑う。隂かに愛將を遣わし、假りて野利の使いと為して將軍に使いせしむ。將軍、元昊の遣わす所なるを知り、未だ即ちには見えず。屬官に命じて館に入りて之を勞わしむ。虜中の山川・地形を問う。興州の左右に在るは則ち言うこと詳らかなり。野利の所部に迫れば、多くは悉くする能わず。適ま生虜數人を擒う。因りて隙中に之を視しむ。生虜、能く其の姓名を言う。果たして元昊の使いなり。將軍の意決す。乃ち之に見ゆ。使者、野利の語を傳え、將軍に元昊を慢罵して、野利、内附するに心有りと稱す。乃ち厚く使者を遣りて曰く、吾が為に若の王に語れ、速やかに決して遲留する無かれと。使者の至るを度るに、嵩即ち還る。而して野利、已に死を報ず。
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『宋名臣言行録』前集巻七・种世衡始め元昊、邉を冦す。王師屢々撓む。虜の氣燄益々張る。常に關中を并吞するの意有り。其の將剛浪㖫は野利王と號し、某は天都王と號す。元昊、倚りて腹心と為す。凡そ我が軍に勝つは、皆な二將の䇿なり。公方に青澗に城く。謀りて以て之を去る有り。王嵩なる者有り。本と青澗の僧なり。將軍、其の堅朴なるを察し、誘いて冠帶せしむ。因りて師を出だし、賊の級を以て之に予う。帥府に白して表して三班借職を授け、經略司の指使に充つ。且つ力めて為に其の家事を辦ず。凡そ居室・騎從・衣食の具、悉く將軍より出づ。嵩、恩に感ずること既に深し。將軍、反って禮せず、奴を以て之を畜う。或いは掠治して械繫すること數日。嵩、其の苦しみに勝えずと雖も、卒に一辭も將軍を望むこと無し。將軍、兵事に任ず可きを知る。居ること半年、嵩を召して之に謂いて曰く、吾れ將に事を以て汝を使わさんとす。吾れ汝に戒む、言わざる所、其の苦しみ此に甚だしき者有りと雖も、汝、吾が為に卒に言わざる能うや否やと。嵩泣きて對えて曰く、將軍の恩教を䝉り、身を榮顯に致す。常に誓うに死を以て報いんとするも、未だ其の所を知らず。況んや敢えて捶楚を辭せんやと。將軍乃ち野利に遺る書を草す。書辭は大抵、世間の起居を問うの儀の如し。惟だ數句の隠辭を以て、嘗て私約有りて其の速やかに之を行うを勸むるの意の如くす。尺素に書し、且つ膏るに蠟を以てし、衲衣の間に置きて宻かに之を縫う。嵩に告ぐ、濵死に非ずんば泄らすを得ず。如し之を泄らさば、當に恩に負き吾が事を成す能わざるを以て言を為すべしと。并びに畫□一幅・棗一部を以て信牌と為して野利に遺る。
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『宋名臣言行録』前集巻七・种世衡又た數日、召して一官寺に入る。㕔事廣楹、皆な班竹の箔を垂る。緑衣の小竪、其の左右に立つ。嵩、元昊の宫室ならんと意う。少頃して箔中に人有りて出づ。又た前の問を以て之を責めて曰く、若、速やかに言わずんば死せんと。嵩、對うること前の如し。乃ち曳き出して之を誅するを命ず。嵩大いに號し、且つ言いて曰く、始め將軍、嵩を遣わして宻かに野利王に書を遺らしむ。戒めて妄りに泄らすを得ざらしむ。今、不幸にして空しく死し、將軍の事を了せず。吾れ將軍に負く、吾れ將軍に負くと。箔中、急に人をして之を追い問わしむ。嵩、具さに以て對う。乃ち衲衣を禠ぎ、書を取りて以て進む。書入りて刻を移す。始めて嵩に館に就きて優待するに禮を以てするを命ず。
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『宋名臣言行録』前集巻七・种世衡嵩、教を受けて野利の居る所に至り、將軍の命を致す。棗・龜を出だして之に投ず。野利、侮らるるを見るを知り、笑いて曰く、吾れ素より种將軍を竒とす。今、何ぞ兒女子の見識ぞと。嵩を度るに别に書有らんと。嵩、佯りて左右を目す。既にして答うるに無しと以てす。野利、敢えて匿さず。乃ち其の信を封じて元昊に上る。數日、元昊、野利を召す。嵩と俱に西北に行くこと數百里。一大城に至る。興州と曰う。先ず一官寺に詣る。樞宻院と曰う。次を中書と曰う。數羌人の雜坐する有り。野利焉に與る。嵩を召して將軍の書を廷詰し、所在を問う。嵩、堅く前の對を執る。稍稍として巾櫛を去り、執縛を加え、捶楚に至りて極めて苦しむ。嵩、終に其の言を易えず。
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『宋名臣言行録』前集巻七・种世衡寳元中、党頃、邉を犯す。明珠族の首領有り。驍悍にして、最も邉患と為る。世衡、將と為り、計を以て之を擒えんと欲す。其の鼔を擊つを好むを聞く。乃ち一馬に戰鼓を持たしむるを造り、銀を以て之を裹み、極めて華焕なり。宻かに諜者をして陽りて之を賣りて明珠族に入らしむ。後に乃ち驍卒數百人を擇びて之を戒めて曰く、凡そ銀鼓を負いて自ら隨う者を見れば、力を併せて之を擒えよと。一日、羌酋、鼔を負いて出づ。遂に擒うる所と為る。
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『宋名臣言行録』前集巻九・余靖慶歴四年、元昊、和を請う。將に封册を加えんとす。而して契丹、兵を以て境に臨む。上、使いを遣わして言う、中國の爲に賊を討たん。請う、止めて和するを與うる毋かれと。朝廷、之を患う。議、未だ决せず。公獨り謂う、中國、兵に厭くこと久し。此れ契丹の幸う所なり。一日、吾をして兵を息め勇を養わしむるは、其の利に非ざるなり。故に此を用いて以て我を撓むるのみ。是れ聽く可からずと。朝廷、公の言を是とすと雖も、猶お夏册を留めて遣らず。而して公に諫議大夫を假して以て報ぜしむ。公、十餘騎を從えて居庸闗を馳せ、虜に九十九泉に見ゆ。從容として帳中に坐し、辨析すること徃復數十。卒に其の議を屈し、其の要領を取りて還る。朝廷、遂に册を發して元昊を臣とす。西師既に嚴を解き、而して北邉も亦た事無し。