宋名臣言行録 / 前集巻七・种世衡
羌酋蘓慕恩部落最強世衡皆撫而用之嘗夜與慕恩飲出侍姬以佐酒既而世衡起入内潛於壁隙窺之慕恩竊與侍姬戲世衡遽出掩之慕恩慙懼請罪世衡笑曰君欲之耶即以遺之由是得其死力諸部有貳者使慕恩討之无不克
新字:羌酋蘓慕恩部落最強世衡皆撫而用之嘗夜与慕恩飲出侍姫以佐酒既而世衡起入内潜於壁隙窺之慕恩窃与侍姫戯世衡遽出掩之慕恩慚懼請罪世衡笑曰君欲之耶即以遺之由是得其死力諸部有貳者使慕恩討之无不克
書き下し
羌酋蘓慕恩の部落、最も強し。世衡、皆な撫して之を用う。嘗て夜、慕恩と飲む。侍姬を出だして以て酒を佐けしむ。既にして世衡起ちて内に入り、潛かに壁隙に於て之を窺う。慕恩、竊かに侍姬と戲る。世衡遽かに出でて之を掩う。慕恩、慙懼して罪を請う。世衡笑いて曰く、君、之を欲するかと。即ち以て之に遺る。是に由りて其の死力を得たり。諸部に貳有る者は、慕恩をして之を討たしむ。克たざる无し。
現代語訳
羌の首長の蘇慕恩の部落が最も強かった。种世衡はみなを慰撫して用いた。あるとき夜、蘇慕恩と酒を飲んだ。侍女を出して酌をさせた。ほどなく种世衡は立って奥へ入り、ひそかに壁の隙間から様子をうかがった。蘇慕恩はこっそり侍女と戯れていた。种世衡はすぐに出て行ってそれを取り押さえた。蘇慕恩は恥じ恐れて罪を請うた。种世衡は笑って言った。「君はこれが欲しいのか」。そのまま与えた。これによってその死力を得た。諸部族で二心のある者があれば、蘇慕恩に討たせた。勝てないことがなかった。
解説
わざと機会を作って、押さえて、そのまま与えた条です。壁の隙間からうかがい、すぐ出て行って取り押さえた。恥をかかせるところまで作っておいて、罰しませんでした。君はこれが欲しいのか。そのまま与えている。これによってその死力を得た。恩を売るために、相手に弱みを作らせた手だとも読めます。読み方の分かれる条ですが、この書は解釈を付けずに置いています。
この章句が説くこと
潜かに壁隙に於て之を窺う慕恩竊かに侍姬と戯る潜かに壁隙に於て之を窺う慕恩窃かに侍姫と戯る世衡笑いて曰く君之を欲するか即ち以て之に遺る是に由りて其の死力を得たり懐柔弱み
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