宋名臣言行録 / 前集巻七・杜衍
吏部審官主天下吏員而居職者類以不乆遷去故吏得為奸公始視銓事一日選者三人爭某闕公以問吏吏受丙賕對曰當與甲乙不能爭遂授他闕居數日吏教丙訟甲負某事不當得公悟召乙問之乙謝曰僕已得他闕不願爭公不得已與丙而笑曰此非吏罪乃吾未知銓法爾因命諸曹各具格式科條以白問曰盡乎曰盡矣明日勑諸吏無得升堂使坐聴行文書而已由是吏不與銓事與奪一出於公其在審官有以賂求官者吏謝不受曰我公有賢名不乆見用去矣姑少待之
新字:吏部審官主天下吏員而居職者類以不乆遷去故吏得為奸公始視銓事一日選者三人争某闕公以問吏吏受丙賕対曰当与甲乙不能争遂授他闕居数日吏教丙訟甲負某事不当得公悟召乙問之乙謝曰僕已得他闕不願争公不得已与丙而笑曰此非吏罪乃吾未知銓法爾因命諸曹各具格式科条以白問曰尽乎曰尽矣明日勑諸吏無得升堂使坐聴行文書而已由是吏不与銓事与奪一出於公其在審官有以賂求官者吏謝不受曰我公有賢名不乆見用去矣姑少待之
書き下し
吏部審官は天下の吏員を主る。而して職に居る者、類ね乆しからずして遷り去るを以て、故に吏、奸を為すを得たり。公、始めて銓事を視る。一日、選ぶ者三人、某の闕を爭う。公、以て吏に問う。吏、丙の賕を受け、對えて曰く、當に甲に與うべしと。乙、爭う能わず。遂に他の闕を授かる。居ること數日、吏、丙に教えて甲の某事に負くを訟えしめ、當に得べからずとす。公悟る。乙を召して之に問う。乙謝して曰く、僕、已に他の闕を得たり。爭うを願わずと。公、已むを得ずして丙に與えて笑いて曰く、此れ吏の罪に非ず。乃ち吾が未だ銓法を知らざるのみと。因りて諸曹に命じて各々格式・科條を具えて以て白さしむ。問いて曰く、盡くせりやと。曰く、盡くせりと。明日、諸吏に勑して堂に升るを得る無からしめ、坐して行文書を聴かしむるのみ。是に由りて吏、銓事に與らず。與奪、一に公より出づ。其の審官に在るや、賂を以て官を求むる者有り。吏、謝して受けず。曰く、我が公に賢名有り。乆しからずして用いられて去らんと。姑く少しく之を待てと。
現代語訳
吏部審官は天下の官吏の任用を司る。ところがその職にある者は、たいてい長くいないうちに転任していくので、それで役人が不正をはたらけた。公がはじめて選任の事務を見た。ある日、選ばれる三人がある空席を争った。公はそれを役人に尋ねた。役人は丙から賄賂を受けていて、答えた。「甲に与えるべきです」。乙は争えなかった。そこで他の空席を授かった。数日して、役人は丙に教えて、甲がある件で咎めを受けていて資格が無いと訴えさせた。公は悟った。乙を呼んで尋ねた。乙は詫びて言った。「私はもう他の空席を得ました。争いたくありません」。公はやむを得ず丙に与えて、笑って言った。「これは役人の罪ではない。私がまだ選任の法を知らなかっただけだ」。そこで諸課にそれぞれ書式と条文を揃えて提出させた。尋ねた。「これで尽くしたか」。「尽くしました」と答えた。翌日、役人たちに命じて堂に上がってはならないとし、坐って書類の処理を聞くだけにさせた。これによって役人は選任の事務に関われなくなった。与えるも奪うも、すべて公から出るようになった。公が審官にいたとき、賄賂で官を求める者があった。役人は断って受け取らなかった。言った。「うちの公には賢い評判がある。ほどなく用いられて去られるだろう。しばらく待ちなさい」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
論語・為政篇子曰く、由よ、女(なんじ)に之を知るを誨えんか。之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す、是れ知るなり。
-
論語・子路篇子曰く、詩三百を誦し、之に授くるに政を以てして達せず。四方に使いして、専対する能わず。多しと雖も、亦た奚を以て為さん。
-
葉隠・聞書第二御家(おいえ)の事、御家中(ごかちゅう)の事、古来根元(こらいこんげん)、よく存ぜず候て叶わざる事に候。然れども、時によりて物識(ものしり)が差合(さしあ)う事これあるものなり。了簡(りょうけん)入るべし。石井新五左衛門(いしいしんござえもん)、山本紛(やまもとまぎ)れの事。平生(へいぜい)の事にも、案内(あんない)知って支(つか)えになることあるものなり。了簡入るべし。口達(くたつ)。
-
論語・季氏篇孔子曰く、天下に道有れば、則ち礼楽征伐は天子より出づ。天下に道無ければ、則ち礼楽征伐は諸侯より出づ。諸侯より出づれば、蓋し十世にして失わざるは希なり。大夫より出づれば、五世にして失わざるは希なり。陪臣国命を執れば、三世にして失わざるは希なり。天下に道有れば、則ち政は大夫に在らず。天下に道有れば、則ち庶人は議せず。
-
『韓非子』二柄第七人主、自ら其の刑徳を用うれば、則ち群臣、其の威を畏れて其の利に歸せん。
-
論語・八佾篇林放礼の本を問う。子曰く、「大なるかな問いや。礼は其の奢らんよりは、寧ろ倹せよ。喪は其の易めんよりは、寧ろ戚めよ。」