宋名臣言行録 / 前集巻六・韓億
公知洋州有大校李申以財豪于鄉里誣其兄之子為他姓賂里嫗之貌類者使認之為已子又醉其嫂而嫁之盡奪其奩橐之富嫂姪訴于州及提轉申賂獄吏嫂姪被笞掠反自誣服受杖而去積十餘年洎公至又出訴公察其寃因取前後案牘視之皆未嘗引乳醫為證一日盡召其黨立庭下出乳醫示之衆皆伏罪子母復歸如初
新字:公知洋州有大校李申以財豪于鄉里誣其兄之子為他姓賂里嫗之貌類者使認之為已子又酔其嫂而嫁之尽奪其奩橐之富嫂姪訴于州及提転申賂獄吏嫂姪被笞掠反自誣服受杖而去積十余年洎公至又出訴公察其冤因取前後案牘視之皆未嘗引乳医為證一日尽召其党立庭下出乳医示之衆皆伏罪子母復帰如初
書き下し
公、洋州を知る。大校李申なる者有り。財を以て鄉里に豪たり。其の兄の子を誣いて他姓と為す。里嫗の貌の類する者に賂して之を認めて己が子と為さしむ。又た其の嫂を醉わしめて之を嫁がしむ。盡く其の奩橐の富を奪う。嫂・姪、州及び提轉に訴う。申、獄吏に賂す。嫂・姪、笞掠を被り、反って自ら誣服し、杖を受けて去る。積むこと十餘年。洎び公至る。又た出でて訴う。公、其の寃を察す。因りて前後の案牘を取りて之を視るに、皆な未だ嘗て乳醫を引きて證と為さず。一日、盡く其の黨を召して庭下に立たしむ。乳醫を出だして之に示す。衆皆な罪に伏す。子母復た歸すること初めの如し。
現代語訳
公が洋州の長官となった。李申という大校がいた。財によって郷里で権勢を振るっていた。自分の兄の子を、他家の姓の者だと言い張った。顔の似た村の老婆に賄賂を渡して、その子を自分の子だと認めさせた。さらにその兄嫁を酔わせて嫁がせてしまった。持参の財産をすべて奪った。兄嫁と甥は州と提点・転運使に訴えた。李申は獄吏に賄賂を渡した。兄嫁と甥は笞打たれ、かえって自分から偽りの自白をし、杖の刑を受けて去った。それが十数年積み重なった。公が着任した。また出てきて訴えた。公はその冤を見抜いた。そこで前後の書類を取って見ると、どれも一度も産婆を証人として呼んでいなかった。ある日、その一味をすべて召して庭に立たせた。産婆を出して見せた。一同はみな罪に服した。子と母は、もとどおりに戻った。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『宋名臣言行録』前集巻三・張詠公杭に在り。富民の病みて將に死せんとする有り。子方に三歳なり。乃ち其の婿に命じて其の貲を主らしめ、婿に與うるに遺書を以てして曰く、他日、財を分かたんと欲せば、即ち十の三を以て子に與え、七を婿に與えよと。子の時に長立し、果たして財を以て訟えを為す。婿其の書を持して府に詣り、元約の如くせんことを請う。公之を閲し、酒を以て地に酹ぎて曰く、汝の婦翁は智人なり。時に子幼きを以ての故に、此を以て汝に屬す。然らずんば、子は汝の手に死せんと。乃ち命じて其の財、三を以て婿に與え、子には七を與う。皆な泣謝して去る。公の明斷に服す。
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『宋名臣言行録』前集巻六・韓億公、子を教うること嚴肅、犯す可からず。亳州を知る。第二子舍人、西京より告を謁して省覲す。康公と右相及び姪柱史宗彦と、皆な甲科に中りて歸る。公喜びて酒を置き、僚屬の親厚なる者を召し、諸子をして隅に坐せしむ。坐中、忽ち云う、二郎、吾れ聞く、西京に疑獄の奏讞する者有りと。其の詳は云何と。舍人之を思うも未だ得る能わず。已にして之を訶して再び問う。未だ對うる能わず。遂に案を推し杖を索め、大いに詬りて曰く、汝、朝廷の厚禄を食み、一府に倅貳す。事に巨細と無く、皆な當に心を究むべし。大辟の奏案すら尚お記す能わずんば、則ち細務の舉がらざること知る可し。吾れ千里の外に在りて干與する所無きも、猶お能く之を知る。爾、廪禄を叨冒す。何の顔ありて國に報いんと。必ず之を撻たんと欲す。衆賔力めて解きて方に已む。諸子股慄すること累日、釋くる能わず。家法の嚴なること此くの如し。所以に賢なる子孫多きなり。
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『宋名臣言行録』前集巻三・向敏中公西京に在り。僧有り、暮に村民の家を過ぎて寄止せんことを求む。主人許さず。僧、門外の車廂の中に寢せんことを求む。之を許す。夜、盗の其の家に入る有り。墻上より一婦人并びに嚢衣を扶けて出づ。僧適々寐ねず、之を見る。自ら念う、主人の納宿する所と為らず、今、主人其の婦及び財を亡う、明日必ず我を執えて縣官に詣らんと。因りて夜亡げ去り、荒草の中を走る。忽ち眢井に墮つ。則ち婦人已に盗の殺す所と為り、先に其の中に在り。明日、主人搜訪して之を井中に得たり。執えて以て縣に詣る。掠治す。僧自ら誣いて云う、子婦と姦し、誘いて與に俱に亡ぐ。人の得る所と為らんことを恐れ、因りて之を殺して井中に投ず。暮夜、覺えず足を失いて亦た其の中に墜つ。贓は井傍に在るも、亡失して何人の取る所かを知らずと。獄成りて府に言う。府皆な以て疑いと為さず。獨り公のみ贓の獲られざるを以て之を疑う。僧を引きて詰問すること數四。僧罪に服す。但だ言う、某、前生に當に此の人に負くべくして死すと。公固く之を問う。乃ち實を以て對う。公宻かに吏をして其の賊を訪ねしむ。吏、村店に食す。店嫗、其の府中より来たるを聞く。其の吏なるを知らざるなり。之に問いて曰く、僧の獄は何如と。吏之を紿きて曰く、昨日已に笞死せりと。嫗曰く、今、賊を獲らば何如と。吏曰く、已に誤りて此の獄を決せり。賊を獲ると雖も亦た問わざるなりと。嫗曰く、之を言うも傷む無し。婦人は乃ち此の村の少年某甲の殺す所なりと。吏曰く、其の人安くに在りと。嫗其の舍を指示す。吏、舍中に就きて掩捕して之を獲たり。案問すれば具に服す。并びに其の贓を得たり。一府咸な以て神と為す。
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『宋名臣言行録』前集巻二・錢若水同州の推官と為る。富民の家に小女奴の逃亡して之く所を知らざる有り。奴の父母、州に訟う。錄事に命じて之を鞫せしむ。錄事嘗て富民に錢を貸して獲ざりき。乃ち富民の父子數人共に女奴を殺して屍を水中に棄つと劾す。遂に其の屍を失う。富民搒楚に勝えず、自ら誣いて服す。具さに州官に上りて審覆するも反異無し。若水獨り之を疑い、其の獄を留むること數日、決せず。錄事、若水に詣りて之を詬りて曰く、若し富民の錢を受けて其の死罪を出ださんと欲するかと。若水笑いて謝して曰く、今、數人死に當たる。豈に少しく留めて熟ら其の獄辭を觀ざる可けんやと。之を留むること旬日。知州屢々之を趣すも得る能わず。上下皆な之を怪しむ。若水一旦州に詣り、人を屏けて言いて曰く、若水の其の獄を留むる所以の者は、宻かに人をして女奴を訪求せしむればなり。今、之を得たりと。知州驚きて曰く、安くに在りと。若水因りて宻かに人をして女奴を知州の所に送らしむ。知州乃ち簾を垂れて女奴の父母を引きて問いて曰く、汝、今、汝が女を見て之を識るかと。曰く、安んぞ識らざること有らんやと。因りて簾中より推し出だして之に示す。父母泣きて曰く、是れなりと。乃ち富民父子を引きて悉く械を破りて之を縱つ。其の人號泣して曰く、使君㣲かりせば、某滅族せんと。知州曰く、推官の賜なりと。其の人家貲を傾けて僧に飯して若水の為に福を祈る。知州其の功を奏論せんと欲す。若水固く辭して曰く、若水は但だ獄事の正しくして人寃せざるを求むるのみ。功を論ずるは其の本心に非ざるなり。朝廷若し此を以て若水の功と為さば、當に錄事を何の地に置くべきやと。知州歎服して曰く、此くの如きは尤も及ぶ可からずと。太宗之を聞き、驟かに褒擢を加う。二年の中に樞宻副使と為る。
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