宋名臣言行録 / 前集巻四・冦凖
契丹犯澶淵急書一夕凡五至萊公不發封飲笑自如明日同列以聞真宗大駭取而發之皆告急也大懼以問公曰陛下欲了欲未了耶曰國危如此豈欲乆耶曰陛下欲了不過五日爾其説請幸澶淵上不語同列懼欲退公曰士安等止候駕起從駕而北上難之欲還内公曰陛下入則臣不得見而大事去矣請無還而行也遂行六軍百司追而及之
新字:契丹犯澶淵急書一夕凡五至萊公不発封飲笑自如明日同列以聞真宗大駭取而発之皆告急也大懼以問公曰陛下欲了欲未了耶曰国危如此豈欲久耶曰陛下欲了不過五日爾其説請幸澶淵上不語同列懼欲退公曰士安等止候駕起従駕而北上難之欲還内公曰陛下入則臣不得見而大事去矣請無還而行也遂行六軍百司追而及之
書き下し
契丹澶淵を犯す。急書一夕に凡そ五たび至る。萊公封を發かず、飲みて笑うこと自若たり。明日、同列以て聞す。真宗大いに駭き、取りて之を發く。皆な急を告ぐるなり。大いに懼れて以て公に問う。公曰く、陛下、了えんと欲するか、未だ了えざらんと欲するかと。曰く、國危うきこと此くの如し。豈に乆しきを欲せんやと。曰く、陛下了えんと欲せば、五日に過ぎざるのみと。其の説、澶淵に幸せんことを請う。上語らず。同列懼れて退かんと欲す。公曰く、士安等止まれ。駕の起つを候ちて駕に從いて北せよと。上之を難んじ、内に還らんと欲す。公曰く、陛下入らば則ち臣見るを得ずして大事去らん。請う、還る無くして行かんと。遂に行く。六軍百司、追いて之に及ぶ。
現代語訳
契丹が澶淵に攻め込んだ。緊急の報せが一晩に五度も届いた。萊公は封を開かず、酒を飲んで笑い、平然としていた。翌日、同僚がそれを奏上した。真宗はひどく驚き、取り寄せて開いた。どれも急を告げるものであった。大いに恐れて公に尋ねた。公は言った。「陛下は片づけたいとお思いですか、それとも片づけたくないとお思いですか」。「国の危うさがこのとおりだ。どうして長引かせたいものか」と言った。公は言った。「陛下が片づけたいとお思いなら、五日とかからないだけのことです」。その策とは、澶淵へ行幸することであった。帝は何も言わなかった。同僚たちは恐れて退出しようとした。公は言った。「畢士安ら、留まりなさい。御車が発つのを待って、御車に従って北へ行くのだ」。帝は難色を示し、奥へ戻ろうとした。公は言った。「陛下が奥へ入られれば、臣はお目にかかれなくなり、大事は去ってしまいます。どうか戻らずにお進みください」。そこで出発した。六軍と百官が追いついた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『智囊』識斷・周瑜・寇準・陳康伯契丹、澶州を寇し、辺書の告急は一夕に五たび至り、中外震駭す。寇準は発せず、飲み笑うこと自如たり。真宗は之を聞き、準を召して計を問う。準曰く、「陛下、此れを了わらんと欲せば、五日に過ぎず。願わくは駕して澶州に幸せよ」と。帝は之を難しとし、内に還らんと欲す。準は還る毋くして行かんことを請い、乃ち群臣を召して之を議す。王欽若は金陵に幸せんことを請い、陳堯叟は閬州の人にして、成都に幸せんことを請う。準曰く、「陛下は神武にして、将臣協和す。若し大駕親征せば、敵は当に自ら遁るべし。奈何ぞ廟社稷を棄てて遠く楚、蜀に幸せんや。所在の人心は崩潰し、敵は勢いに乗じて深入せば、天下は復た保つべけんや」と。帝は乃ち策を決して澶州に幸す。準曰く、「陛下若し宮に入らば、臣は到るを得ず、又た見るを得ずんば、則ち大事去らん。請う、内に還る毋かれ」と。駕は遂に発し、六軍、有司は追いて及ぶ。河に臨みて未だ渡らず。是の夕、内人は相い泣く。上は人を遣わして准を目間せしむるに、方に酒を飲みて鼾睡す。明日又た金陵の謀を言う者有り、上の意動く。准は固く河を渡らんことを請い、議すること数日にして決せず。准は出でて高烈武王の瓊に見え、之に謂いて曰く、「子は上将たり。国の危うきを視て一言せざるか」と。瓊は之に謝す。乃ち復た入り、従官を召問せんことを請う。至るも皆な黙然たり。上は南下せんと欲す。准曰く、「是れ中原を棄つるなり」と。又た橋を断ちて河に因りて守らんと欲す。准曰く、「是れ河北を棄つるなり」と。上は首を搖りて曰く、「儒者は兵を知らず」と。
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『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖凖又た上に北渡を勸む。上猶お未だ決せず。因りて起ちて衣を更う。凖も亦た殿を下りて去る。時に髙瓊、殿前都指揮使と為り、殿下に宿衛す。凖、瓊に謂いて曰く、事當に奈何すべき。太尉、胡ぞ一言せざると。瓊曰く、相公之を廟堂に謀る。瓊、何ぞ敢えて與り知らん。然れども相公、上に謂う所以は何ぞと。凖曰く、今、河を渡らば則ち河北は力を勞せずして定まる。渡らずんば則ち敵日に益々熾んにして、人心敢えて自ら固からず。智者有りと雖も、其の後を善くする能わざらんと。瓊呼びて曰く、陛下、凖の語を聴け。凖の言は是なりと。上還りて之を問う。語ること良や乆し。凖即ち瓊を趣して其の兵を以て先ず渡らしめ、又た自ら馬を牽きて上に奉ず。上乃ち之に從う。既に澶州に至る。上、城の北門に御す。凖、上の前に居る。上盡く軍事を以て凖に委ぬ。凖因りて制を承けて專決す。號令明肅にして、士卒喜悦す。敵數千騎、勝ちに乘じて城下に薄る。詔有りて吏士之を迎え擊つ。斬獲大半なり。敵乃ち引き退き、敢えて復た逼らず。㑹々暮れて上宫に還る。凖を留めて城上に居らしむ。上、人をして凖の何を為すかを視しむ。曰く、凖方に酒を飲み歌笑すと。上、未だ嘗て釋然たらずんばあらざるなり。
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『宋名臣言行録』前集巻四・畢士安契丹入冦を謀る。公首として五事を疏し、將を選び兵を餉い財を理むるの䇿を陳ぶること甚だ備わる。帝多く納用す。中書に宰相を闕く。乃ち公を進めて參政とす。入謝す。帝曰く、未だしなり。行く行く且に卿を相とせんとす。然れども時方に事多し。卿と同に進む者を求むるに、其れ誰か可なると。曰く、冦凖は忠義を兼資し、善く大事を斷ず。此れ宰相の才なりと。帝曰く、其の剛にして氣を使うを聞くと。對えて曰く、凖の資は方正、慷慨にして大節有り。身を忘れて國に狥い、道を秉りて邪を疾む。此れ其の素より蓄積する所なり。朝臣、其の右に出づる者罕なり。苐だ流俗の喜ぶ所と為らず。今、天下の民、休徳を䝉り涵養安佚すと雖も、而して西北跳梁して邉境の患いと為る。凖の若き者は、宜しく用うべき所なりと。帝曰く、然り。當に卿の宿徳を藉りて之を鎮むべしと。月を閲せずして公に本官平章事を拜す。冦公と並び命ず。而して公を以て國史を監修せしめ、位は上に在り。既にして契丹益々邉を犯す。北州皆な警む。二公始めて合議して帝の澶淵に幸せんことを請う。
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『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖天子北巡して澶州に至る。敵騎已に魏府を過ぐ。上疑いて河を渡らんと欲せず、南澶州に駐まる。凖、上に北渡して以て衆心を固くし、敵をして勝ちに乘ずるを得しむる毋からんことを勸む。上猶豫して未だ決せず。時に陳堯叟、上に蜀に避けんことを勸む。王欽若、上に金陵に避けんことを勸む。上以て凖に問う。凖曰く、誰か陛下の為に此の計を畫く者ぞと。上曰く、顧みて畫く所何如を問うのみ。其の名を問う毋かれと。凖曰く、臣姑く之を知らんと欲す。先ず此の曹を斬りて以て天下に令せんと。且つ先帝、都を建てて五十年に埀んとす。天下の財用・兵甲、京師に聚まる。宗廟社稷の寄する所なり。不幸にして事有らば、陛下當に臣等と死を以て之を守るべし。今、一旦棄て去らば、復た陛下の有する所に非ず。若し盗賊縁に因りて起こらば、陛下當に何くにか歸すべきやと。上喟然たり。
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『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖相い持すること十餘日。契丹計索きて始めて和を請う。既に約有り。又た其の衆を率いて詐りて壕を填めんと欲す。㑹々飛矢の其の統軍を射て之を殺す有り。契丹大いに擾る。其の和を請うこと遂に益々堅し。凖肯んぜず。敵の使い來ること益々恭し。上將に之を許さんとす。凖、使いを邀えて臣と稱し、且つ幽州の地を獻ぜしめんと欲す。時に上、兵事を厭う。是に於て凖を譛る者有り、敵と平らぐを願わず、兵事有りて以て自ら重きを取るを幸うと。上も亦た悦ばず。凖已むを得ずして之を許す。時に敵、國を舉げて來冦し、中國に入ること千餘里。其の歸ること十日ならずんば漢地を出づる能わず。郡邑、壁を堅くし野を清くして以て冦を待たば、敵の人馬飢乏し、百萬の衆、戰う毋くして死す可し。敵の窘まること此くの如し。誠に少しく之を抑え緩くせば、契丹敢えて臣と稱せずんばあらず。幽州必ず得可きなり。
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『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖真宗の澶淵に次するや、一日、公に語りて曰く、今、敵騎未だ退かずして天雄軍は截かれて賊の後に在り。萬一陷沒せば則ち河朔皆な敵境ならん。何人か朕の為に魏を守る可きと。公曰く、此の際に當たり、方畧の展ぶ可き無し。古人言える有り、智將は福將に如かずと。臣、參政王欽若を觀るに、福禄未だ艾えず。宜しく守と為す可しと。是に於て即時に殿に進み、勑を出だす。退きて欽若を召し、諭すに上意を以てし、勑を授けて行かしむ。欽若茫然自失し、未だ言う有るに及ばず。公遽かに曰く、主上親征したまう。臣子の難を辭するの日に非ず。參政は國の柄臣なり。當に此の意を體すべし。馹騎已に集まる。仍りて朝辭を放ち、便宜に塗に就け。身、乃ち安からんと。遽かに大白を酌みて之を飲ましめ、命じて上馬盃と曰う。欽若驚懼して敢えて辭せず。飲み訖わりて拜别す。公答拜して曰く、參政勉めよ。回る日、即ち同列と為らんと。欽若馳せて魏に入れば、則ち戎敵野に滿つ。以て計を為す無く、但だ四門を屯塞し、終日危坐す。數日を越えて敵退く。乃ち召して次相と為す。或いは云う、王公數々疑辭を上前に進む。故に公、事に因りて之を出だし、以て敵に勝つの績を成すのみと。

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