宋名臣言行録 / 前集巻四・畢士安
契丹謀入冦公首疏五事陳選將餉兵理財之䇿甚備帝多納用中書闕宰相乃進公參政入謝帝曰未也行且相卿然時方多事求與卿同進者其誰可曰冦凖兼資忠義善斷大事此宰相才也帝曰聞其剛使氣對曰凖資方正慷慨有大節忘身狥國秉道疾邪此其素所蓄積也朝臣罕出其右者苐不為流俗所喜今天下之民雖䝉休徳涵養安佚而西北跳梁為邉境患若凖者所宜用也帝曰然當藉卿宿徳鎮之不閲月拜公本官平章事冦公並命而以公監修國史位在上既而契丹益犯邉北州皆警二公始合議請帝幸澶淵
新字:契丹謀入寇公首疏五事陳選将餉兵理財之策甚備帝多納用中書闕宰相乃進公参政入謝帝曰未也行且相卿然時方多事求与卿同進者其誰可曰寇凖兼資忠義善断大事此宰相才也帝曰聞其剛使気対曰凖資方正慷慨有大節忘身狥国秉道疾邪此其素所蓄積也朝臣罕出其右者苐不為流俗所喜今天下之民雖䝉休徳涵養安佚而西北跳梁為邉境患若凖者所宜用也帝曰然当藉卿宿徳鎮之不閲月拝公本官平章事寇公並命而以公監修国史位在上既而契丹益犯邉北州皆警二公始合議請帝幸澶淵
書き下し
契丹入冦を謀る。公首として五事を疏し、將を選び兵を餉い財を理むるの䇿を陳ぶること甚だ備わる。帝多く納用す。中書に宰相を闕く。乃ち公を進めて參政とす。入謝す。帝曰く、未だしなり。行く行く且に卿を相とせんとす。然れども時方に事多し。卿と同に進む者を求むるに、其れ誰か可なると。曰く、冦凖は忠義を兼資し、善く大事を斷ず。此れ宰相の才なりと。帝曰く、其の剛にして氣を使うを聞くと。對えて曰く、凖の資は方正、慷慨にして大節有り。身を忘れて國に狥い、道を秉りて邪を疾む。此れ其の素より蓄積する所なり。朝臣、其の右に出づる者罕なり。苐だ流俗の喜ぶ所と為らず。今、天下の民、休徳を䝉り涵養安佚すと雖も、而して西北跳梁して邉境の患いと為る。凖の若き者は、宜しく用うべき所なりと。帝曰く、然り。當に卿の宿徳を藉りて之を鎮むべしと。月を閲せずして公に本官平章事を拜す。冦公と並び命ず。而して公を以て國史を監修せしめ、位は上に在り。既にして契丹益々邉を犯す。北州皆な警む。二公始めて合議して帝の澶淵に幸せんことを請う。
現代語訳
契丹が侵入を謀った。公はまっさきに五つの事を上奏し、将を選び兵を養い財を治める策を、たいそう詳しく述べた。帝はおおむね採用した。中書省に宰相の欠員があった。そこで公を進めて参知政事とした。参内して礼を述べた。帝は言った。「まだだ。いずれ卿を宰相にする。しかし今は事が多い。卿とともに進める者を求めるなら、誰がよいか」。公は言った。「寇準は忠と義を兼ね備え、大事をよく決断します。これは宰相の才です」。帝は言った。「その者は剛直で気を張ると聞いている」。公は答えた。「寇準の資質は方正で、慷慨として大きな節があります。身を忘れて国に殉じ、道を守って邪を憎む。これは平素から積み上げてきたものです。朝廷の臣で、その右に出る者はまれです。ただ、世間並みの好みには合わないというだけのことです。いま天下の民は美しい徳をこうむって養われ安らかにしていますが、西と北が跳ねまわって国境の患いとなっております。寇準のような者こそ、用いるべきです」。帝は言った。「そのとおりだ。卿の年功と徳を借りて、これを鎮めてもらおう」。ひと月とたたないうちに、公に本官のまま平章事を授けた。寇準とともに任命した。そして公に国史の監修をさせ、席次は上とした。ほどなく契丹はますます国境を侵した。北の州はみな警戒した。二公ははじめて議を合わせ、帝が澶淵へ行幸することを願い出た。
解説
この章句が説くこと
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『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖契丹澶淵を犯す。急書一夕に凡そ五たび至る。萊公封を發かず、飲みて笑うこと自若たり。明日、同列以て聞す。真宗大いに駭き、取りて之を發く。皆な急を告ぐるなり。大いに懼れて以て公に問う。公曰く、陛下、了えんと欲するか、未だ了えざらんと欲するかと。曰く、國危うきこと此くの如し。豈に乆しきを欲せんやと。曰く、陛下了えんと欲せば、五日に過ぎざるのみと。其の説、澶淵に幸せんことを請う。上語らず。同列懼れて退かんと欲す。公曰く、士安等止まれ。駕の起つを候ちて駕に從いて北せよと。上之を難んじ、内に還らんと欲す。公曰く、陛下入らば則ち臣見るを得ずして大事去らん。請う、還る無くして行かんと。遂に行く。六軍百司、追いて之に及ぶ。
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『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖相い持すること十餘日。契丹計索きて始めて和を請う。既に約有り。又た其の衆を率いて詐りて壕を填めんと欲す。㑹々飛矢の其の統軍を射て之を殺す有り。契丹大いに擾る。其の和を請うこと遂に益々堅し。凖肯んぜず。敵の使い來ること益々恭し。上將に之を許さんとす。凖、使いを邀えて臣と稱し、且つ幽州の地を獻ぜしめんと欲す。時に上、兵事を厭う。是に於て凖を譛る者有り、敵と平らぐを願わず、兵事有りて以て自ら重きを取るを幸うと。上も亦た悦ばず。凖已むを得ずして之を許す。時に敵、國を舉げて來冦し、中國に入ること千餘里。其の歸ること十日ならずんば漢地を出づる能わず。郡邑、壁を堅くし野を清くして以て冦を待たば、敵の人馬飢乏し、百萬の衆、戰う毋くして死す可し。敵の窘まること此くの如し。誠に少しく之を抑え緩くせば、契丹敢えて臣と稱せずんばあらず。幽州必ず得可きなり。
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『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖天子北巡して澶州に至る。敵騎已に魏府を過ぐ。上疑いて河を渡らんと欲せず、南澶州に駐まる。凖、上に北渡して以て衆心を固くし、敵をして勝ちに乘ずるを得しむる毋からんことを勸む。上猶豫して未だ決せず。時に陳堯叟、上に蜀に避けんことを勸む。王欽若、上に金陵に避けんことを勸む。上以て凖に問う。凖曰く、誰か陛下の為に此の計を畫く者ぞと。上曰く、顧みて畫く所何如を問うのみ。其の名を問う毋かれと。凖曰く、臣姑く之を知らんと欲す。先ず此の曹を斬りて以て天下に令せんと。且つ先帝、都を建てて五十年に埀んとす。天下の財用・兵甲、京師に聚まる。宗廟社稷の寄する所なり。不幸にして事有らば、陛下當に臣等と死を以て之を守るべし。今、一旦棄て去らば、復た陛下の有する所に非ず。若し盗賊縁に因りて起こらば、陛下當に何くにか歸すべきやと。上喟然たり。
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『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖凖又た上に北渡を勸む。上猶お未だ決せず。因りて起ちて衣を更う。凖も亦た殿を下りて去る。時に髙瓊、殿前都指揮使と為り、殿下に宿衛す。凖、瓊に謂いて曰く、事當に奈何すべき。太尉、胡ぞ一言せざると。瓊曰く、相公之を廟堂に謀る。瓊、何ぞ敢えて與り知らん。然れども相公、上に謂う所以は何ぞと。凖曰く、今、河を渡らば則ち河北は力を勞せずして定まる。渡らずんば則ち敵日に益々熾んにして、人心敢えて自ら固からず。智者有りと雖も、其の後を善くする能わざらんと。瓊呼びて曰く、陛下、凖の語を聴け。凖の言は是なりと。上還りて之を問う。語ること良や乆し。凖即ち瓊を趣して其の兵を以て先ず渡らしめ、又た自ら馬を牽きて上に奉ず。上乃ち之に從う。既に澶州に至る。上、城の北門に御す。凖、上の前に居る。上盡く軍事を以て凖に委ぬ。凖因りて制を承けて專決す。號令明肅にして、士卒喜悦す。敵數千騎、勝ちに乘じて城下に薄る。詔有りて吏士之を迎え擊つ。斬獲大半なり。敵乃ち引き退き、敢えて復た逼らず。㑹々暮れて上宫に還る。凖を留めて城上に居らしむ。上、人をして凖の何を為すかを視しむ。曰く、凖方に酒を飲み歌笑すと。上、未だ嘗て釋然たらずんばあらざるなり。
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『宋名臣言行録』前集巻二・王旦冦凖、樞使と為り、當に罷むべし。人をして私かに公に使相と為らんことを求めしむ。公大いに驚きて曰く、將相の任、豈に求む可けんや。且つ吾れ私を受けずと。凖深く之を恨む。已にして制出でて凖を武勝軍節度使・同中書門下平章事に除す。凖入見して泣涕して曰く、陛下、臣を知るに非ずんば、何を以て此に至らんと。真宗具さに公の凖を薦むる所以を道う。凖始めて愧嘆して以て及ぶ可からずと為す。
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『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖公、樞使と為り、利用副たり。公、其の武人なるを以て之を輕んず。事を議して合わざる者有れば、輙ち曰く、君は一夫のみ。豈に此の國家の大體を解せんやと。利用、是に由りて之を銜む。真宗將に劉氏を立てんとす。公及び王旦・向敏中、皆な諌議して、出づること側㣲に于いてすれば不可と為す。劉氏の宗人、蜀に横にして民の鹽井を奪う。上、后の故を以て之を捨てんと欲す。公固く法を行わんことを請う。時に上已に豫まず、記覽する能わず。政事、多く宫中の決する所なり。丁、曹・冦の平らかならざるを知り、遂に利用と合謀して公の政事を罷めんことを請い、太子太傅に除す。上、初め知らず。歳餘、忽ち左右に問う、吾が目中に乆しく冦凖を見ざるは何ぞやと。左右も亦た敢えて言わず。上崩じ、太后稱制す。公、再び雷州に貶せらる。