宋名臣言行録 / 前集巻三・曹瑋
曹侍中將薨太宗親臨視之問以後事對曰臣無可言固問之對曰臣二子璨與瑋材器有取皆堪為將上問其優劣對曰璨不如瑋已而果然瑋知秦州嘗出循城以城上遮箭版太髙召主者令下之主者對曰舊如此乆矣瑋怒曰舊固不可改耶命斬之僚佐以主者老將諳兵事罪小宜可赦皆諌瑋瑋不聴卒誅之軍中懾伏瑋在秦州有士卒十餘人叛赴虜中軍吏来告瑋方與客圍棊不應吏亟言之瑋怒叱之曰吾固遣之去汝再三顯言耶虜聞之亟歸告其將盡殺之
新字:曹侍中将薨太宗親臨視之問以後事対曰臣無可言固問之対曰臣二子璨与瑋材器有取皆堪為将上問其優劣対曰璨不如瑋已而果然瑋知秦州嘗出循城以城上遮箭版太高召主者令下之主者対曰旧如此乆矣瑋怒曰旧固不可改耶命斬之僚佐以主者老将諳兵事罪小宜可赦皆諌瑋瑋不聴卒誅之軍中懾伏瑋在秦州有士卒十余人叛赴虜中軍吏来告瑋方与客囲棊不応吏亟言之瑋怒叱之曰吾固遣之去汝再三顕言耶虜聞之亟帰告其将尽殺之
書き下し
曹侍中將に薨ぜんとす。太宗親ら臨みて之を視、問うに後事を以てす。對えて曰く、臣、言う可き無しと。固く之を問う。對えて曰く、臣が二子、璨と瑋、材器取る有り。皆な將と為るに堪えたりと。上其の優劣を問う。對えて曰く、璨は瑋に如かずと。已にして果たして然り。瑋、秦州を知る。嘗て出でて城を循る。城上の遮箭版の太だ髙きを以て、主る者を召して之を下げしむ。主る者對えて曰く、舊より此くの如きこと乆しと。瑋怒りて曰く、舊は固より改む可からざるかと。命じて之を斬らしむ。僚佐、主る者は老將にして兵事に諳んじ、罪小さければ宜しく赦す可しと以て、皆な瑋を諌む。瑋聴かず。卒に之を誅す。軍中懾伏す。瑋、秦州に在り。士卒十餘人の叛きて虜中に赴く有り。軍吏来り告ぐ。瑋、方に客と棊を圍みて應ぜず。吏亟かに之を言う。瑋怒りて之を叱して曰く、吾れ固より之を遣り去らしむ。汝再三顯かに言うかと。虜之を聞き、亟かに歸りて其の將に告ぐ。盡く之を殺す。
現代語訳
曹彬がまさに亡くなろうとしていた。太宗が自ら臨んで見舞い、後のことを尋ねた。曹彬は答えた。「臣には申し上げることがありません」。強いて問うた。「臣の二人の子、曹璨と曹瑋は、才と器に見るところがあります。どちらも将となるに堪えます」。帝はその優劣を尋ねた。「曹璨は曹瑋に及びません」と答えた。後にはたしてそのとおりであった。曹瑋が秦州の長官となった。あるとき出て城壁を巡った。城上の矢除けの板が高すぎるので、担当の者を呼んで下げさせようとした。担当の者は答えた。「昔からこうなっていて、もう長いことです」。曹瑋は怒って言った。「昔からのものは、まったく改められないというのか」。命じてこれを斬らせた。属僚たちは、担当の者は老練な将で兵事に通じており、罪も小さいのだから赦すべきだと言って、みな曹瑋を諌めた。曹瑋は聞かなかった。ついに誅した。軍中は恐れ入って服した。曹瑋が秦州にいたとき。兵十余人が叛いて敵地へ走った。軍の役人が来て告げた。曹瑋はちょうど客と碁を囲んでいて応じなかった。役人が急いでもう一度言った。曹瑋は怒って叱った。「私がもともとあの者たちを送り出したのだ。おまえは二度も三度も大声で言うのか」。敵はそれを聞いて、急いで帰って将に告げた。そして十余人をみな殺した。
解説
この章句が説くこと
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『宋名臣言行録』前集巻三・曹瑋天雄の卒、法を犯す者有り。衆、獄具わらば必ず之を殺さんと謂う。公乃ち處するに常法を以てす。或ひと以て疑いと為す。公笑いて曰く、邉に臨み敵に對して、命を用いざる者を斬るは、衆に令する所以なり。吾れ殺すを喜ぶに非ざるなり。平時に内郡を治むるに、安んぞ此を事とせんやと。初め邉を守る時、山東の知名の士賈同、公を造る。外舍に客たり。公、邉を按ぜんと欲す。即ち同に邀えて與に俱にす。同、從兵は安くに在りやと問う。曰く、已に具わると。既に出でて騎に就く。甲士三千の環列するを見るも、人馬の聲を聞かず。同歸りて人に語りて曰く、瑋は果たして名將なりと。公の將と為るは、其の父の寛然として自ら一家を為すに如かずと云う。
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『宋名臣言行録』前集巻一・曹彬樞宻使と為り、向敏中副使と為る。時に契丹塞を犯し、繼遷命に叛く。軍書狎びに至る毎に、上必ず亟かに樞臣を召して計議す。彬則ち曰く、此れ狂㓂なり。當に速やかに兵を發して誅討し、斬決すべきのみ。止だ強弩若干・步兵若干を用いれば足れりと。敏中徐ろに曰く、某の儲廩する所未だ備わらず、或いは道途邉逺なり、或いは兵を出だすは其の時に非ず。當に别に方略を施して之を制すべしと。纎悉の措置、多く敏中の議する所に從う。上、將帥其の人を難しとすと謂う。彬必ず懇激して言う、臣自ら效さんことを請う、更に它説無しと。敏中常に私かに之を怪しむ。子の瑋に及びて亦た將材有り。累々邉任を厯て威名甚だ重し。晚に樞貳より出でて西鄙を鎮す。事に臨みて衆を整うること酷だ先君に類たり。復た戰鬭に果にして、安民柔逺を以て意と為すことを肯んぜず。豈に將帥の體、固より當に若是くなるべきか。
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『宋名臣言行録』前集巻三・曹瑋渭州を知る。涇原・環慶兩路の山川・城郭・戰守の要を圖して以て獻ず。真宗其の一を樞宻院に留め、其の一を以て本路に付す。諸將をして兵を出ださしむるに、皆な圖に按じて事を議す。
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『宋名臣言行録』前集巻九・李及曹瑋、久しく秦州に在り。累章して代を求む。真宗、王旦に問う、誰か代わる可き者ぞと。旦、公を薦む。上、即ち公を以て秦州を知らしむ。衆皆な謂う、公は謹厚にして行檢有りと雖も、邉を守るの材に非ずと。楊億、衆言を以て旦に告ぐ。旦、答えず。公、秦州に至る。將吏の心も亦た之を輕んず。㑹々屯駐の禁軍の、白晝、婦人の銀釵を市に掣する有り。吏、執えて以て聞す。公、方に書を觀る。之を召して前ましめ、略ぼ詰問を加う。其の人、罪に服す。公、復た吏に下さず。亟かに命じて之を斬らしむ。復た書を觀ること故の如し。將吏皆な驚服す。日ならずして聲譽、京師に達す。億之を聞き、復た旦に見えて其の事を道いて且つ曰く、向者、相公、初めて及を用う。外廷の議、皆な及の其の任に勝えざるを恐る。今、及の材器、乃ち此くの如し。信なるかな、相公の人を知るの明なるやと。旦笑いて曰く、外廷の議、何ぞ其れ易く得るや。夫れ禁軍を以て邉に戍り、白晝、盗を市に爲す。主將、之を斬るは事の常なり。旦の及を用うる者、其の意、此が爲に非ざるなり。夫れ瑋、秦州を知ること七年、羗人讋服す。邉境の事、瑋、之に處して巳に其の宜を盡くせり。他人をして徃かしめば、必ず其の聪明を矜りて變置する所多く、瑋の成績を敗らん。旦の及を用うる所以の者は、及の重厚にして必ず能く謹んで瑋の規模を守るを以てのみと。億、是に由りて旦の識度に服す。
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『宋名臣言行録』前集巻一・曹彬太祖、王全斌等を遣わして蜀を平らげしむ。全斌、降兵三千人を殺す。時に曹彬從わず、但だ其の文案を收めて字を署せず。師還るに及び、太祖傳宣して中書に送りて勘を取らしむ。左右曰く、方に西蜀を克復して回るなり。降兵を殺すと雖も、亦た便ち案劾す可からず。今後、陛下如何ぞ人を用いんと。太祖曰く、然らず。河東・江南皆な未だ歸服せず。若し勘劾せずんば、恐らくは今後委任する者、轉た亂りに人を殺さんと。但だ且く勘劾せしむ。勘案の成るに洎び、宣して後殿に見えしめて責問して曰く、如何ぞ敢えて亂りに人を殺すと。又た曰く、曹彬は但だ退け、你が事に干らずと。曹退かず。但だ叩頭して罪に伏して曰く、臣同じく商議す。罪は誅戮に合すと。太祖遂に皆な之を原す。後、忽ち一日、曹并びに潘美を宣して曰く、汝に命じて江南を收めしむと。又た曹を顧みて曰く、更に往時の西川の亂りに人を殺すに似る得ずと。曹徐ろに奏して曰く、臣若し奏せずんば、恐らくは陛下未だ知らざらん。曩日西川の殺降の事、臣曽て商量して固く執りて下さず。臣見に收め得たる當日の文案、元と字を著けずと。太祖之を取覧して謂いて曰く、此くの如くんば則ち當時何の故に堅く執りて罪に服せしと。曰く、臣初め全斌等と同じく委任を被る。若し全斌等罪を獲て臣獨り清雪せば、穏便為らず。所以に一向に罪に服せりと。太祖曰く、卿既に自ら罪に當たらんと欲す。又た安んぞ此の文字を留むるを用いんと。曰く、臣初め謂えらく、陛下必ず誅戮を行わんと。故に此の文書を留め、老母をして進呈せしめ、老母の命を全うせんことを乞わんとせりと。太祖尤も之を器遇す。
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『宋名臣言行録』前集巻三・曹瑋寳元中、王忠穆公、樞宻使と為る。河西の首領趙元昊叛く。上、邉偹を問う。輔臣皆な對うる能わず。明日、樞宻四人皆な罷む。忠穆、虢州に謫せらる。翰林學士蘇公儀、忠穆と善し。城を出でて之を見る。忠穆、公儀に謂いて曰く、□の此の行、前十年已に人の之を言う有りと。公儀曰く、必ず術士ならんと。忠穆曰く、非ざるなり。昔時、三司鹽鐵副使と為り、獄囚を疏決して河北に至る。時に曹南院、陜西より謫官せられ、初めて起ちて定帥と為る。□定に至りて事を治め畢わる。瑋、□に謂いて曰く、事を決すること已に畢わる。此れより當に還るべし。明日、願わくは少しく一日を留まれ。言わんとする所有らんと欲すと。既に其の雄才を愛し、又た言わんとする所有るを聞く。遂に之が為に留まる。明日、饌を具うること甚だ簡儉なり。食罷めて左右を屛けて曰く、公は滿面權骨なり。樞副と為らずんば即ち邉帥ならん。或いは公は當に相と作るべしと謂うも、則ち然らざるなり。然れども十年ならずして必ず樞柄を總ぶ。此の時、西方に當に警有るべし。公宜しく預め邉備を講じ人才を蒐閲すべし。然らずんば以て卒に應ずる無しと。□曰く、何を以て教えらるると。曹曰く、瑋、陜西に在りし日、河西の趙徳明、嘗て人をして馬を以て中國に博易せしむ。其の息の㣲なるを怒り、之を殺さんと欲す。諌め止むる可き莫し。徳明に一子有り、方に十餘歳。極諌して已まずして曰く、戰馬を以て鄰國を資くるは已に是れ失計なり。今更に貨を以て邉人を殺さば、則ち誰か肯えて我が用と為らんやと。瑋、其の言を聞き、私かに之を念いて曰く、此の子、其の人を用いんと欲するなり。是れ必ず異志有らんと。其の嘗て牙市の中に往來すと聞く。瑋、一たび之を識らんと欲す。屢々人をして誘致せしむるも得可からず。乃ち善く畫く者をして其の貌を圖せしめて之を觀るに、真に英物なり。此の子必ず邉患と為らん。其の時節を計るに、正に公の政を秉るの日に在り。公、其れ勉めよと。□是の時、殊に未だ以て然りと為さず。今、其の畫く所は乃ち元昊なるを知ると。