宋名臣言行録 / 前集巻三・張詠
有僧行止不明有司執之以白公公判其牒曰勘殺人賊既而按問果一民也與僧行于道中殺僧取其祠部戒牒二衣因自披剃為僧寮屬問何以知之公曰吾見其額上猶有繫巾痕也
新字:有僧行止不明有司執之以白公公判其牒曰勘殺人賊既而按問果一民也与僧行于道中殺僧取其祠部戒牒二衣因自披剃為僧寮属問何以知之公曰吾見其額上猶有繋巾痕也
書き下し
僧の行止明らかならざる者有り。有司之を執えて以て公に白す。公其の牒に判して曰く、殺人の賊を勘せよと。既にして按問すれば果たして一民なり。僧と道中に行き、僧を殺して其の祠部の戒牒と二衣を取り、因りて自ら披剃して僧と為れり。寮屬、何を以て之を知るかを問う。公曰く、吾れ其の額上に猶お繫巾の痕有るを見ればなりと。
現代語訳
行動のはっきりしない僧があった。役所がこれを捕らえて公に申し上げた。公はその書類に判を下して言った。「人殺しの賊として取り調べよ」。取り調べてみると、はたして一人の民であった。僧と道中を行き、僧を殺してその度牒と二着の衣を取り、そのまま自分で髪を剃って僧になっていたのである。属僚が、どうしてそれが分かったのかと尋ねた。公は言った。「私は、その額に頭巾を締めていた痕がまだ残っているのを見たからだ」。
解説
一目で見抜いた条です。額に頭巾を締めていた痕がまだ残っていた。僧なら剃髪していて頭巾の痕は付きません。証言でも自白でもなく、身体に残った痕を見ています。前に出てきた向敏中の井戸の一件が「盗品が見つかっていない」という欠けを見たのに対し、こちらは「あるはずのないものがある」を見た。どちらも書類の外を見ています。
この章句が説くこと
吾れ其の額上に猶お繋巾の痕有るを見ればなり其の牒に判して曰く殺人の賊を勘せよ僧を殺して其の祠部の戒牒と二衣を取り自ら披剃して僧と為れり観察証拠見抜き
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