宋名臣言行録 / 前集巻二・王旦
公乆疾不愈上命肩輿入禁中使其子雍與直省吏扶之見于延和殿命曰卿萬一有不諱使朕以天下事付之誰乎公謝曰知臣莫若君時張詠馬亮皆為尚書上曰張詠如何不對又曰馬亮何如不對上曰試以卿意言之公強起舉笏曰以臣之愚莫若冦凖上憮然有間曰凖性剛褊卿更思其次公曰他人臣不知也公薨嵗餘上卒用凖為相
新字:公乆疾不愈上命肩輿入禁中使其子雍与直省吏扶之見于延和殿命曰卿万一有不諱使朕以天下事付之誰乎公謝曰知臣莫若君時張詠馬亮皆為尚書上曰張詠如何不対又曰馬亮何如不対上曰試以卿意言之公強起舉笏曰以臣之愚莫若寇凖上憮然有間曰凖性剛褊卿更思其次公曰他人臣不知也公薨歳余上卒用凖為相
書き下し
公乆しく疾みて愈えず。上、肩輿もて禁中に入るを命ず。其の子雍と直省の吏をして之を扶けしめ、延和殿に見えしむ。命じて曰く、卿萬一不諱有らば、朕をして天下の事を誰に付せしめんやと。公謝して曰く、臣を知るは君に若くは莫しと。時に張詠・馬亮皆な尚書為り。上曰く、張詠は如何と。對えず。又た曰く、馬亮は何如と。對えず。上曰く、試みに卿の意を以て言えと。公強いて起ちて笏を舉げて曰く、臣の愚を以てすれば、冦凖に若くは莫しと。上憮然たること間有りて曰く、凖の性は剛褊なり。卿更に其の次を思えと。公曰く、他人は臣知らざるなりと。公薨じて歳餘、上卒に凖を用いて相と為す。
現代語訳
公は長く病んで治らなかった。帝は輿で宮中に入ることを命じた。子の王雍と当直の役人に支えさせて、延和殿でまみえさせた。帝は言った。「卿に万一のことがあれば、私は天下の事を誰に託せばよいのか」。公は詫びて言った。「臣を知る者は、君に及ぶ者はございません」。当時、張詠と馬亮がどちらも尚書であった。帝は「張詠はどうか」と言った。答えなかった。また「馬亮はどうか」と言った。答えなかった。帝は「試しに卿の考えを言ってみよ」と言った。公は無理に起き上がり、笏を掲げて言った。「臣の愚かな考えでは、寇準に及ぶ者はございません」。帝はしばらく茫然としてから言った。「寇準の性質は剛直で偏っている。卿はさらに次の者を考えよ」。公は言った。「他の者については、臣は存じません」。公が亡くなって一年あまり、帝はついに寇準を用いて宰相とした。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『宋名臣言行録』前集巻二・王旦冦凖、樞使と為り、當に罷むべし。人をして私かに公に使相と為らんことを求めしむ。公大いに驚きて曰く、將相の任、豈に求む可けんや。且つ吾れ私を受けずと。凖深く之を恨む。已にして制出でて凖を武勝軍節度使・同中書門下平章事に除す。凖入見して泣涕して曰く、陛下、臣を知るに非ずんば、何を以て此に至らんと。真宗具さに公の凖を薦むる所以を道う。凖始めて愧嘆して以て及ぶ可からずと為す。
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『宋名臣言行録』前集巻二・王旦病を以て罷めんことを求め、入りて滋福殿に見ゆ。真宗曰く、朕方に大事を以て卿に託せんとするに、卿の病むこと此くの如しと。因りて皇太子に命じて公を拜せしむ。公言う、皇太子の盛徳、必ず陛下の事に任えんと。因りて大臣と為る可き者十餘人を薦む。其の後、宰相に至らざる者は李及・凌䇿のみ。然れども亦た皆な名臣と為る。
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『宋名臣言行録』前集巻二・王旦王太尉、莱公を薦めて相と為す。萊公數々太尉を上前に短ず。而して太尉專ら其の長を稱す。上一日太尉に謂いて曰く、卿は其の美を稱すと雖も、彼は專ら卿の惡を談ずと。太尉曰く、理固より當に然るべし。臣、相位に在ること乆し。政事の闕失必ず多からん。凖、陛下に對して隠す所無し。益々其の忠直を見る。此れ臣の凖を重んずる所以なりと。上是に由りて益々太尉を賢とす。初め萊公藩鎮に在り。嘗て生日に因りて山棚を造り大いに宴す。又た服用僣侈なり。人の奏する所と為る。上怒ること甚だし。太尉に謂いて曰く、冦凖は每事朕に效わんと欲す。可ならんやと。太尉徐ろに對えて曰く、凖は誠に賢能なり。騃なるを如何ともする無しと。上の意遽かに解けて曰く、然り。此れ正に是れ騃なるのみと。遂に問わず。
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『宋名臣言行録』前集巻二・王旦王曽・張知白・陳彭年、政事に參預す。因りて公に白して曰く、事を奏する毎に、其の間に上覽を經ざる者有り。公但だ㫖を批して奉行す。恐らくは人之を言いて以て不可と為さんと。公遜謝するのみ。一日、奏對して公退く。諸公身を留む。上驚きて曰く、何の事有りて王旦と同に来らざるやと。諸公前説を以て對う。上曰く、旦は朕が左右に在ること多年なり。朕之を察するに毫髪の私無し。東封より後、朕諭すに小事は一面奉行するを以てす。卿等當に謹みて之を奉ずべしと。諸公退きて愧謝す。公曰く、向に諭及を䝉る。自ら上㫖を得たりと言う可からず。然れども今後更に諸公の規益を賴らんと。
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『宋名臣言行録』前集巻二・王旦張尚書、成都を知りて召還せらる。朝議、任中正を以て之に代えんとす。言者以て不可と為す。時に公相と為る。上之を責問す。對えて曰く、中正に非ずんば詠の規を守る能わず。他人往かば妄りに變更有らんと。上之を是とす。言者も亦た王の能く人を用うるに服す。
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『宋名臣言行録』前集巻四・冦凖公、樞使と為り、利用副たり。公、其の武人なるを以て之を輕んず。事を議して合わざる者有れば、輙ち曰く、君は一夫のみ。豈に此の國家の大體を解せんやと。利用、是に由りて之を銜む。真宗將に劉氏を立てんとす。公及び王旦・向敏中、皆な諌議して、出づること側㣲に于いてすれば不可と為す。劉氏の宗人、蜀に横にして民の鹽井を奪う。上、后の故を以て之を捨てんと欲す。公固く法を行わんことを請う。時に上已に豫まず、記覽する能わず。政事、多く宫中の決する所なり。丁、曹・冦の平らかならざるを知り、遂に利用と合謀して公の政事を罷めんことを請い、太子太傅に除す。上、初め知らず。歳餘、忽ち左右に問う、吾が目中に乆しく冦凖を見ざるは何ぞやと。左右も亦た敢えて言わず。上崩じ、太后稱制す。公、再び雷州に貶せらる。