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宋名臣言行録 / 前集巻一・范質

周祖自鄴舉兵向闕京師亂公隠于民間一日坐封丘巷茶肆中有人貌怪陋前揖曰相公無慮時暑中所執扇偶書大暑去酷吏清風來故人二句其人曰世之酷吏寃獄何止如大暑也公他日當深究此弊幸無忘吾言公惘然乆之後至祅廟後門見一土木短鬼其貌肖茶肆見者公心異焉亂定公大用首建議律條繁廣輕重無據吏得以因縁為姦周祖特詔詳定是為刑統

新字:周祖自鄴舉兵向闕京師乱公隠于民間一日坐封丘巷茶肆中有人貌怪陋前揖曰相公無慮時暑中所執扇偶書大暑去酷吏清風来故人二句其人曰世之酷吏冤獄何止如大暑也公他日当深究此弊幸無忘吾言公惘然乆之後至祅廟後門見一土木短鬼其貌肖茶肆見者公心異焉乱定公大用首建議律条繁広軽重無拠吏得以因縁為姦周祖特詔詳定是為刑統

書き下し

周祖鄴より兵を舉げて闕に向かう。京師亂る。公民間に隠る。一日、封丘巷の茶肆の中に坐す。人有り、貌怪陋なり。前みて揖して曰く、相公慮る無かれと。時に暑中、執る所の扇に偶ま書す、大暑酷吏去り、清風故人來ると二句。其の人曰く、世の酷吏・寃獄、何ぞ止だ大暑の如きのみならんや。公他日當に深く此の弊を究むべし。幸わくは吾が言を忘るる無かれと。公惘然たること乆し。後、祅廟の後門に至り、一土木の短鬼を見る。其の貌、茶肆に見し者に肖たり。公心に之を異とす。亂定まりて公大いに用いらる。首として議を建つ。律條繁廣にして輕重據る無く、吏因縁して姦を為すを得と。周祖特に詔して詳定せしむ。是れを刑統と為す。

現代語訳

後周の太祖が鄴から兵を挙げて都へ向かった。京師は乱れた。公は民間に隠れた。ある日、封丘巷の茶店の中に坐っていた。ある人がいて、姿かたちが異様で見苦しかった。進み出て会釈して言った。「相公、案ずることはありません」。当時は暑中で、手にしていた扇にたまたま二句を書いていた。「大暑と酷吏は去り、清風と旧友は来たる」。その人は言った。「世の酷吏や冤罪の獄は、どうして大暑どころのものでしょうか。公はいつか必ず、この弊を深く究めなければなりません。どうか私の言葉をお忘れなく」。公はぼんやりとして長いあいだ考え込んだ。のちに祆廟の裏門に至り、土と木で作った背の低い鬼像を見た。その姿は茶店で会った者に似ていた。公は心の中でこれを不思議に思った。乱が収まって公は大いに用いられた。まっさきに議を立てた。律の条文が繁多で、軽重の拠りどころがなく、役人がそれにかこつけて不正を働くことができる、と。後周の太祖は特に詔を下して詳しく定めさせた。これが『刑統』である。

解説

怪しい者に声をかけられた不思議話が、法典編纂の由来として置かれている条です。扇に書いた「大暑と酷吏は去る」を見咎めて、その者はこう言いました。**世の酷吏や冤罪の獄は、大暑どころのものではない。**乱が収まって用いられた范質が、まっさきに立てた議がこれでした。律の条文が多すぎて軽重の拠りどころがなく、役人がそこにつけこんで不正を働ける、と。こうしてできたのが『刑統』です。

この章句が説くこと

世の酷吏冤獄何ぞ止だ大暑の如きのみならんや律条繁広にして軽重拠る無く吏因縁して姦を為すを得大暑酷吏去り清風故人来る裁量冤罪

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