宋名臣言行録 / 前集巻一・曹彬
太祖始事周世宗于澶州彬為世宗親吏掌茶酒太祖嘗從求酒彬曰此官酒不敢相與自沽酒以飲太祖既即位語羣臣曰世宗舊吏不欺其主者獨曹彬耳由是委以腹心使監征蜀之軍
新字:太祖始事周世宗于澶州彬為世宗親吏掌茶酒太祖嘗従求酒彬曰此官酒不敢相与自沽酒以飲太祖既即位語羣臣曰世宗旧吏不欺其主者独曹彬耳由是委以腹心使監征蜀之軍
書き下し
太祖始め周の世宗に澶州に事う。彬、世宗の親吏と為りて茶酒を掌る。太祖嘗て從いて酒を求む。彬曰く、此れ官酒なり、敢えて相い與えずと。自ら酒を沽いて以て飲ましむ。太祖既に即位し、羣臣に語りて曰く、世宗の舊吏、其の主を欺かざる者は獨り曹彬のみと。是に由りて委ぬるに腹心を以てし、蜀を征するの軍を監せしむ。
現代語訳
太祖ははじめ後周の世宗に澶州で仕えていた。曹彬は世宗の側近の役人として茶と酒を管理していた。太祖はかつて曹彬のもとへ行って酒を求めた。曹彬は言った。「これは官の酒です。差し上げるわけにはいきません」。そして自分で酒を買って飲ませた。太祖は即位すると、群臣に語った。「世宗の旧臣で、その主人を欺かなかった者は曹彬ただ一人だ」。そこで腹心として任せ、蜀を征伐する軍の監軍とした。
解説
曹彬(九三一〜九九九)の最初の一条です。まだ将軍でも何でもない、茶と酒の管理役だったころの話。**求めてきたのが後の皇帝でも、官の酒は渡さず、自分の金で買って飲ませた。**断ったのではなく、公と私を分けただけです。太祖はこれを覚えていて、即位後に「主人を欺かなかった者は曹彬ただ一人」と言い、腹心に据えました。小さな一件が、十数年後の登用の理由になっています。
この章句が説くこと
此れ官酒なり敢えて相い与えず自ら酒を沽いて以て飲ましむ世宗の旧吏其の主を欺かざる者は独り曹彬のみ是に由りて委ぬるに腹心を以てす公私信用規律
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