甲陽軍鑑 / 品第四十三
第五に法度背く人は軍法を破るはぶりをいたし、先へゆきてかせぐふりを見すれば、侍は我おとらじと思ふにより、此人に付大勢法度を背き、ゆくといへども、敵つかゆれば迯散り、そのうちに本の兵をも捨放す子細は、恩を得奉る主君の法度を破る、智惠·才覺はこたへべき所をも破つて迯るは必定也、ここを以て軍に法度をそむく人をきらふなり、第六に法度よろづの善惡しらざる人は、貪りて武士道をわきへなし亂妨ばかりにふけり、人をうつべき心聊かもなくして不心懸なり、こゝをもつて軍に此人を嫌ふ也、
新字:第五に法度背く人は軍法を破るはぶりをいたし、先へゆきてかせぐふりを見すれば、侍は我おとらじと思ふにより、此人に付大勢法度を背き、ゆくといへども、敵つかゆれば迯散り、そのうちに本の兵をも捨放す子細は、恩を得奉る主君の法度を破る、智恵·才覚はこたへべき所をも破つて迯るは必定也、ここを以て軍に法度をそむく人をきらふなり、第六に法度よろづの善悪しらざる人は、貪りて武士道をわきへなし乱妨ばかりにふけり、人をうつべき心聊かもなくして不心懸なり、こゝをもつて軍に此人を嫌ふ也、
書き下し
第五に法度背く人は軍法を破るはぶりをいたし、先へゆきてかせぐふりを見すれば、侍は我おとらじと思ふにより、此人に付大勢法度を背き、ゆくといへども、敵つかゆれば迯散り、そのうちに本の兵をも捨放す子細は、恩を得奉る主君の法度を破る、智恵·才覚はこたへべき所をも破つて迯るは必定也、ここを以て軍に法度をそむく人をきらふなり、第六に法度よろづの善悪しらざる人は、貪りて武士道をわきへなし乱妨ばかりにふけり、人をうつべき心聊かもなくして不心懸なり、こゝをもつて軍に此人を嫌ふ也、
現代語訳
第五に、法度に背く人は、軍法を破る振りをいたし、先へ行って稼ぐ振りを見せれば、侍は我劣らじと思うにより、この人に付いて大勢が法度に背き、行くといえども、敵がつかえれば逃げ散り、そのうちに本の兵をも捨て放す。子細は、恩を得奉る主君の法度を破る智恵・才覚は、こたえるべき所をも破って逃げるは必定である。ここをもって、軍に法度に背く人を嫌うのである。第六に、法度も万づの善悪も知らざる人は、貪って武士道を脇へなし、乱妨ばかりにふけり、人を討つべき心が聊かもなくして不心掛けである。ここをもって、軍にこの人を嫌うのである。右、三対六人の人は、陣の時に大いに嫌う人である。
解説
この章句が説くこと
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