甲陽軍鑑 / 品第四十三
去々年三河國長篠において後を取給ふ也○於陣所制札一火事は其陣之內にて鬮をとらせ成敗の事一牛馬取はなし候者夫馬は見出し候者とる、乘馬は過錢三百疋、上樣御厩衆とる事一喧嘩は兩方共に成敗、但し穿鑿のさた有て道理非を分け坂をこさすべき事一不淨これあらば繩を張り、其陣の近き所より過錢五十文是れも新衆とる事一高聲·こうた·大酒無用の事右之札は武者奉行よりかきいだすにより、
新字:去々年三河国長篠において後を取給ふ也○於陣所制札一火事は其陣之内にて鬮をとらせ成敗の事一牛馬取はなし候者夫馬は見出し候者とる、乗馬は過銭三百疋、上様御厩衆とる事一喧嘩は両方共に成敗、但し穿鑿のさた有て道理非を分け坂をこさすべき事一不浄これあらば縄を張り、其陣の近き所より過銭五十文是れも新衆とる事一高声·こうた·大酒無用の事右之札は武者奉行よりかきいだすにより、
書き下し
去々年三河国長篠において後を取給ふ也○於陣所制札一火事は其陣之内にて鬮をとらせ成敗の事一牛馬取はなし候者夫馬は見出し候者とる、乗馬は過銭三百疋、上様御厩衆とる事一喧嘩は両方共に成敗、但し穿鑿のさた有て道理非を分け坂をこさすべき事一不浄これあらば縄を張り、其陣の近き所より過銭五十文是れも新衆とる事一高声·こうた·大酒無用の事右之札は武者奉行よりかきいだすにより、
現代語訳
去々年、三河国の長篠において後れを取り給うのである。陣所における制札。一、火事はその陣の内にて籤を取らせて成敗の事。一、牛馬を取り放し候者、夫馬は見出し候者が取る。乗馬は過銭三百疋、上様の御厩衆が取る事。一、喧嘩は両方ともに成敗。ただし詮索の沙汰があって道理と非を分け、坂を越さすべき事。一、不浄がこれあらば縄を張り、その陣の近き所より過銭五十文、これも新衆が取る事。一、高声・小唄・大酒無用の事。
解説
陣中の掟が五つ、そのまま書き写されている。火事は責任者を籤で決めて成敗する、逃げた馬は見つけた者の物になる、喧嘩は両成敗だが理非は分ける。罰を決めておくだけでなく、誰が取り立てるかまで書いてあるのが特徴である。罰を決めておくだけでなく、誰が取り立てるかまで書いてあるのが特徴である。執行する者まで決めて、初めて掟が動くということである。
この章句が説くこと
制札陣中罰則執行喧嘩規律
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