甲陽軍鑑 / 品第四十三
一第三に小敵の强きは能々弓矢强ければこそ、少身にて大軍と戰かはんと存るなれば是れもつてあなづるに及ばず、一第四に弱敵の小身なるが不隨に何ぞあて處ありて如件と分別して、是をもつてあなづる事なかれ、一第五若敵のほまれなきは卒爾のはたらきを仕懸られ、是れに勝たるといふても、味方のよき者を失なひて、いかゞと遠慮尤も成ときんば必らず謾る事なかれ、小敵·若敵·弱敵に負て敵方に名をとらする故、一入工夫·思案の分別ある處也、
新字:一第三に小敵の强きは能々弓矢强ければこそ、少身にて大軍と戦かはんと存るなれば是れもつてあなづるに及ばず、一第四に弱敵の小身なるが不随に何ぞあて処ありて如件と分別して、是をもつてあなづる事なかれ、一第五若敵のほまれなきは卒爾のはたらきを仕懸られ、是れに勝たるといふても、味方のよき者を失なひて、いかゞと遠慮尤も成ときんば必らず謾る事なかれ、小敵·若敵·弱敵に負て敵方に名をとらする故、一入工夫·思案の分別ある処也、
書き下し
一第三に小敵の强きは能々弓矢强ければこそ、少身にて大軍と戦かはんと存るなれば是れもつてあなづるに及ばず、一第四に弱敵の小身なるが不随に何ぞあて処ありて如件と分別して、是をもつてあなづる事なかれ、一第五若敵のほまれなきは卒爾のはたらきを仕懸られ、是れに勝たるといふても、味方のよき者を失なひて、いかゞと遠慮尤も成ときんば必らず謾る事なかれ、小敵·若敵·弱敵に負て敵方に名をとらする故、一入工夫·思案の分別ある処也、
現代語訳
一、第三に小敵の強きは、よくよく弓矢が強ければこそ、小身で大軍と戦おうと存ずるのであるから、これをもって侮るに及ばず。一、第四に弱敵の小身なるが、不随に何ぞ当て所があってこの件のごとしと分別して、これをもって侮る事なかれ。一、第五に若敵の誉れなきは、卒爾の働きを仕掛けられ、これに勝ったといっても、味方のよき者を失って、いかがと遠慮するのがもっともである時は、必ず侮る事なかれ。小敵・若敵・弱敵に負けて敵方に名を取らせるゆえ、ひとしお工夫・思案の分別がある所である。
解説
この章句が説くこと
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『墨子』貴義子墨子曰く、今、士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。商人、一布を用うるに、敢えて茍くも繼ぎて讎らず、必ず良き者を擇ぶ。今、士の身を用うるは則ち然らず。意の欲する所は則ち之を為す。厚き者は刑罰に入り、薄き者は毁醜を被る。則ち士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。
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