甲陽軍鑑 / 品第四十三
横田十郞兵衞·日向藤九郞兩人は鐵砲を用にたて候なり口傳○五敵一强敵一大敵一小敵一弱敵一若敵一第一に强敵とは無類に健やかにて人の目利よく上手にありて、我れにおとらぬ家老の、然かも大將御ため不淺存奉り、侍大將あまたもち、工夫·思案の分別すぐれて、せりあひ·合戰·城ぜめに度々勝利を得たる名大將を强敵と其名をとなふる、此强敵にも大身·小身の兩人あり小身の一郡計持たるをば名人と申す、名大將とはいはず、一國からして上の大身にほまれありて、かけみちなきを名大將と申也、
新字:横田十郎兵衛·日向藤九郎両人は鉄砲を用にたて候なり口伝○五敵一强敵一大敵一小敵一弱敵一若敵一第一に强敵とは無類に健やかにて人の目利よく上手にありて、我れにおとらぬ家老の、然かも大将御ため不浅存奉り、侍大将あまたもち、工夫·思案の分別すぐれて、せりあひ·合戦·城ぜめに度々勝利を得たる名大将を强敵と其名をとなふる、此强敵にも大身·小身の両人あり小身の一郡計持たるをば名人と申す、名大将とはいはず、一国からして上の大身にほまれありて、かけみちなきを名大将と申也、
書き下し
横田十郎兵衛·日向藤九郎両人は鉄砲を用にたて候なり口伝○五敵一强敵一大敵一小敵一弱敵一若敵一第一に强敵とは無類に健やかにて人の目利よく上手にありて、我れにおとらぬ家老の、然かも大将御ため不浅存奉り、侍大将あまたもち、工夫·思案の分別すぐれて、せりあひ·合戦·城ぜめに度々勝利を得たる名大将を强敵と其名をとなふる、此强敵にも大身·小身の両人あり小身の一郡計持たるをば名人と申す、名大将とはいはず、一国からして上の大身にほまれありて、かけみちなきを名大将と申也、
現代語訳
横田十郎兵衛・日向藤九郎の両人は鉄炮を用に立て候なり。口伝。五敵、一に強敵、一に大敵、一に小敵、一に弱敵、一に若敵。第一に強敵とは、無類に健やかにて人の目利きがよく、上手であって、我に劣らぬ家老が、しかも大将の御ためを浅からず存じ奉り、侍大将をあまた持ち、工夫・思案の分別が優れて、競り合い・合戦・城攻めに度々勝利を得た名大将を、強敵とその名を称する。この強敵にも大身・小身の両人があり、小身で一郡ばかり持ったのをば名人と申す。名大将とは言わず、一国からして上の大身で誉れがあって、欠け道のないのを名大将と申すのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『甲陽軍鑑』品第四十三一第二に大敵とは、国五ケ国·十ケ国も持たる大将の事也、大敵にも二ツ有、一ツには弱敵、二ツに若敵、弱敵とは未練にして我持来る国計り長久と存知、他国へ心をかけざるは、よそより其まゝおかぬものなり、但し大軍の中にはなき様にても、弓矢の功者小身の家中よき侍の有と云ふより、大身の家中よき人のすくなきは遥々上也、子細は国を三ツとも取ば、いづれに一代弓矢の手抦ありたると相心得べきなり、如件手抦の後、末になりても前代の弓矢少し残りて、其国を破るは必ず手間を取者也、大将弱くとも必らずあなづる事勿れ、
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『甲陽軍鑑』品第四十三一第三に小敵の强きは能々弓矢强ければこそ、少身にて大軍と戦かはんと存るなれば是れもつてあなづるに及ばず、一第四に弱敵の小身なるが不随に何ぞあて処ありて如件と分別して、是をもつてあなづる事なかれ、一第五若敵のほまれなきは卒爾のはたらきを仕懸られ、是れに勝たるといふても、味方のよき者を失なひて、いかゞと遠慮尤も成ときんば必らず謾る事なかれ、小敵·若敵·弱敵に負て敵方に名をとらする故、一入工夫·思案の分別ある処也、
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『甲陽軍鑑』品第四十名大将と申せ共一国斗りの大将をば世間のとなへも、さのみ大きくは申さぬなり、せめて二ケ国も取りて其近国三ケ国程有る我持つ国共に五ケ国にて鋒をふりて名をとり、三ケ国·四ケ国·五ケ国を支配なさるゝ大将は敵多くして沙汰多し、如此の多き敵と戦ひて種々の智略あれば、それをさたして名をよぶなり、
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『甲陽軍鑑』品第四十三扨又若敵とは年はいくつにもなり候へ、よはくもつよくも落つかず、一度もほまれなき大将は其わざ若き故、是若敵と云ふ、勿論年若く、てがらなきは若敵也、年寄て一度も誉れなき大将は世間のとなへ口惜存ぜられ、何様のはたらきこれ有べきもしらず、必らずあなづる事なかれ、其国より来る者によく尋ねて後ち国へ取かけ戦かふべきならし尤之事、
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『甲陽軍鑑』品第四十三件の大将にも、破敵·随敵の二あり、破敵とはやぶる敵、随敵とはしたがふ敵、それをしる事其国より来る、諸牢人に彼大将の万づ行政一切の仕形の中に、侍のせんさく·ひはんの様子をよく尋て、能くきいてたゝかふべき、もくさんのならし尤もの事、
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『甲陽軍鑑』品第十三强き大将はふまへ所有るに付き、下劣の口に侵されず、生れ付きたるごとくにありて、俄かに器用も立てずしてまします、是れも强成る故ぞかし、必ず心の剛なる大将は主の意地にあてがふて、目利きし給ふにより少しも崇敬有る侍に柔弱なるはなし、縦へば十人の中に一二人よわき者あれども、それは又何ぞ取り得の有ること一二ヶ条も在之、とかくとしてむてなるはさのみなし、それ〳〵の得物を目利きし給びて召しつかはるゝは、是れ心の剛なる大将のわざなり、