甲陽軍鑑 / 品第四十一
せりあひ·合戰二ツの戰に勝やうの色三ツあり、十の物六分·七分の勝一ツ、十の物八分·九分の勝一ツ、十の物十ながらの勝一ツ、第一に十を六分·七分の勝はこれ十分の勝なり、第二に十を八分·九分の勝はこれあやうし、第三に十を十分の勝はかならずけが有て、跡のほまれを無にすべきとの御諚なり一信玄公宣ふは、
新字:せりあひ·合戦二ツの戦に勝やうの色三ツあり、十の物六分·七分の勝一ツ、十の物八分·九分の勝一ツ、十の物十ながらの勝一ツ、第一に十を六分·七分の勝はこれ十分の勝なり、第二に十を八分·九分の勝はこれあやうし、第三に十を十分の勝はかならずけが有て、跡のほまれを無にすべきとの御諚なり一信玄公宣ふは、
書き下し
せりあひ·合戦二ツの戦に勝やうの色三ツあり、十の物六分·七分の勝一ツ、十の物八分·九分の勝一ツ、十の物十ながらの勝一ツ、第一に十を六分·七分の勝はこれ十分の勝なり、第二に十を八分·九分の勝はこれあやうし、第三に十を十分の勝はかならずけが有て、跡のほまれを無にすべきとの御諚なり一信玄公宣ふは、
現代語訳
一、信玄公が侍大将衆への御仕置きに、競り合い・合戦の二つの戦に勝つ様の色は三つある。十の物のうち六分・七分の勝ちが一つ、十の物のうち八分・九分の勝ちが一つ、十の物のうち十ながらの勝ちが一つ。第一に、十を六分・七分の勝ちは、これが十分の勝ちである。第二に、十を八分・九分の勝ちは、これは危うい。第三に、十を十分の勝ちは、必ず怪我があって、跡の誉れを無にするとの御諚である。
解説
勝ち方を三つに分けて、六分七分でとどめた勝ちこそ十分の勝ちだとした。八分九分は危うく、十分に勝った時は必ずどこかに怪我をして、それまでの誉れを損なう。勝ちの大きさではなく勝ち方の深さを測る物差しで、信玄の言葉として最も知られたもののひとつである。残らず討てば相手に恨みが残り、味方も消耗して、次に立ち向かう敵が増える。どこで手を止めるかを戦う前に決めておけ、という指図として読める。
この章句が説くこと
勝ち方六分七分深追い加減危うい節度
関連する章句
-
説苑・說叢聖人の衣や體に便にして以て身を安んじ、其の食や腹に安んず。衣を適し食を節し、口目に聽かず。
-
説苑・雜言孔子曰く、「中人の情は、余り有れば則ち侈り、足らざれば則ち倹にし、禁無ければ則ち淫し、度無ければ則ち失し、欲を縦にすれば則ち敗る。飲食に量有り、衣服に節有り、宮室に度有り、畜聚に数有り、車器に限有るは、以て乱の源を防ぐなり。故に夫れ度量は明らかにせざる可からず、善言は聴かざる可からず」と。
-
葉隠・聞書第一大酒にて後れを取りたる人、数多(あまた)なり。別して残念の事なり。まず我が丈け分(たけぶん)をよく覚え、その上は飲まぬ様にありたきなり。そのうちにも、時により、酔い過す事あり。酒座(しゅざ)には就中(なかんずく)気をぬかさず、図(はか)らぬ事出来(しゅったい)ても間に合う様に、了簡(りょうけん)あるべき事なり。また酒宴は……
-
尚書・說命中寵を啓きて侮りを納るる無かれ、過ちを恥じて非を作す無かれ。
-
葉隠・聞書第一時により、人に用(よう)をいい、物をもらう事有り。それも度重(たびかさ)ならば、無心(むしん)になり、いやしかるべし。何とぞ済む事ならば、用をいわぬように有りたきなり。
-
論語・述而篇子は釣りして綱せず、弋して宿を射ず。