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甲陽軍鑑 / 品第六

如案打合時人のすくなき方の後より大勢かけ付てあら手を入替へうちければ、初め大勢有し方打まけてちり〳〵ににげ亂る、見物の者も我先にとのきふためく、竹千世殿見給ひて云ぬ事かと宣まひて、かたにのせ奉りたる中間のかしらを御手にてたゝきわらはせ給ふ、虎生三日有食牛機と云々、此竹千世殿は今家康と名をよばれ、海道一の弓取也、命長くましまさば是ぞ後には天下の主共ならせ給んと、心ある人は言あへり、

新字:如案打合時人のすくなき方の後より大勢かけ付てあら手を入替へうちければ、初め大勢有し方打まけてちり〳〵ににげ乱る、見物の者も我先にとのきふためく、竹千世殿見給ひて云ぬ事かと宣まひて、かたにのせ奉りたる中間のかしらを御手にてたゝきわらはせ給ふ、虎生三日有食牛機と云々、此竹千世殿は今家康と名をよばれ、海道一の弓取也、命長くましまさば是ぞ後には天下の主共ならせ給んと、心ある人は言あへり、

書き下し

如案打合時人のすくなき方の後より大勢かけ付てあら手を入替へうちければ、初め大勢有し方打まけてちり〳〵ににげ乱る、見物の者も我先にとのきふためく、竹千世殿見給ひて云ぬ事かと宣まひて、かたにのせ奉りたる中間のかしらを御手にてたゝきわらはせ給ふ、虎生三日有食牛機と云々、此竹千世殿は今家康と名をよばれ、海道一の弓取也、命長くましまさば是ぞ後には天下の主共ならせ給んと、心ある人は言あへり、

現代語訳

案の如く、打ち合った時、人の少ないほうの後ろから大勢が駆け付けて新手を入れ替えて討ったので、初めに大勢であったほうが打ち負けて、散り散りに逃げ乱れる。見物の者も我先にと退き慌てる。竹千代殿はご覧になって、言わぬ事かとおっしゃって、肩に乗せ奉った中間の頭を御手で叩いて笑わせられた。虎は生まれて三日にして牛を食らう機あり、というところである。この竹千代殿は今、家康と名を呼ばれ、海道一の弓取りである。命が長くあられるなら、これぞ後には天下の主ともなられようと、心ある人は言い合っている。

解説

見立てが当たった場面。十二歳は勝ち負けを当てただけでなく、そこに至る筋まで先に言っていた。書かれたのは天正三年で、家康はまだ三河と遠江半国の主でしかない。その時点でこの人はいずれ天下の主だろうと書き残しているのが、この品の見どころである。書かれた時点で、家康はまだ三河と遠江半国の主でしかない。その段階でいずれ天下の主だろうと書き残しているのが、この品の見どころである。

この章句が説くこと

家康予見天下少年見物

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