甲陽軍鑑 / 品第四十八
信玄聞召即時に被仰出繩かゝりたる出家、よの宗旨ならば種々せんさくも有べきが日蓮宗においては先誤りなり、仔細は法花經にも五の卷に、入里乞食將一比丘若無比丘一心念佛と、是をくんに讀時はさとに入乞食せんとならば、まさに一人のびくをつれよ、もしびくなくは、ひとつ心に佛をねんぜよと有時は何として僧を一人やとひてゆかぬぞ、げに又やとはるゝ坊主に事をかくならば其身一人行共、數珠を取ていかにも殊勝成体にてこそ法花宗共申べき、衣をぬぎ人の不審立樣に、猥りに仕り出家のいぎをみだす事、法花經の宗旨には法に背きたる道理なり、
新字:信玄聞召即時に被仰出縄かゝりたる出家、よの宗旨ならば種々せんさくも有べきが日蓮宗においては先誤りなり、仔細は法花経にも五の巻に、入里乞食将一比丘若無比丘一心念仏と、是をくんに読時はさとに入乞食せんとならば、まさに一人のびくをつれよ、もしびくなくは、ひとつ心に仏をねんぜよと有時は何として僧を一人やとひてゆかぬぞ、げに又やとはるゝ坊主に事をかくならば其身一人行共、数珠を取ていかにも殊勝成体にてこそ法花宗共申べき、衣をぬぎ人の不審立様に、猥りに仕り出家のいぎをみだす事、法花経の宗旨には法に背きたる道理なり、
書き下し
信玄聞召即時に被仰出縄かゝりたる出家、よの宗旨ならば種々せんさくも有べきが日蓮宗においては先誤りなり、仔細は法花経にも五の巻に、入里乞食将一比丘若無比丘一心念仏と、是をくんに読時はさとに入乞食せんとならば、まさに一人のびくをつれよ、もしびくなくは、ひとつ心に仏をねんぜよと有時は何として僧を一人やとひてゆかぬぞ、げに又やとはるゝ坊主に事をかくならば其身一人行共、数珠を取ていかにも殊勝成体にてこそ法花宗共申べき、衣をぬぎ人の不審立様に、猥りに仕り出家のいぎをみだす事、法花経の宗旨には法に背きたる道理なり、
現代語訳
信玄が聞こし召し、即時に仰せ出だされる。縄のかかりたる出家、他の宗旨ならば種々の詮索もあるべきが、日蓮宗においてはまず誤りなり。子細は、法花経にも五の巻に、里に入り乞食するには一の比丘を将いよ、もし比丘なくは一心に念仏せよと。これを訓に読む時は、里に入り乞食せんとならば、まさに一人の比丘を連れよ。もし比丘なくば、一つ心に仏を念ぜよとある時は、何として僧を一人雇いて行かぬぞ。げにまた、雇わるる坊主に事を欠くならば、その身一人が行くとも、数珠を取っていかにも殊勝なる体にてこそ法花宗とも申すべき。衣を脱ぎ人の不審の立つように猥りに仕り、出家の威儀を乱す事は、法花経の宗旨には法に背きたる道理なり。
解説

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