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甲陽軍鑑 / 品第四十八

下々より大將をたつとみ奉れば勝利をうる事うたがひなしさるに付信玄公女坂にて人夫の八木をとりこぼしておきたるをもつて、諸人の大將を尊く存ずる儀をかんがへしろしめさるゝ事是も大將の秘事なり、口傳に有信州更級出家公事の事一天文二十三年甲寅五月三日の公事、信州更級に眞光寺と申律宗の寺に圓藏院と云ふ住持兩人の弟子を持、兄弟子を善万坊と云て一文不知の坊主なり、弟弟子は琳切と云て是は又師匠圓藏院か跡をつがせんと兼て約束故學問に出す、しかも律宗の事なれば大和國奈良にて學問仕故八年あまり音信なし、

新字:下々より大将をたつとみ奉れば勝利をうる事うたがひなしさるに付信玄公女坂にて人夫の八木をとりこぼしておきたるをもつて、諸人の大将を尊く存ずる儀をかんがへしろしめさるゝ事是も大将の秘事なり、口伝に有信州更級出家公事の事一天文二十三年甲寅五月三日の公事、信州更級に真光寺と申律宗の寺に円蔵院と云ふ住持両人の弟子を持、兄弟子を善万坊と云て一文不知の坊主なり、弟弟子は琳切と云て是は又師匠円蔵院か跡をつがせんと兼て約束故学問に出す、しかも律宗の事なれば大和国奈良にて学問仕故八年あまり音信なし、

書き下し

下々より大将をたつとみ奉れば勝利をうる事うたがひなしさるに付信玄公女坂にて人夫の八木をとりこぼしておきたるをもつて、諸人の大将を尊く存ずる儀をかんがへしろしめさるゝ事是も大将の秘事なり、口伝に有信州更級出家公事の事一天文二十三年甲寅五月三日の公事、信州更級に真光寺と申律宗の寺に円蔵院と云ふ住持両人の弟子を持、兄弟子を善万坊と云て一文不知の坊主なり、弟弟子は琳切と云て是は又師匠円蔵院か跡をつがせんと兼て約束故学問に出す、しかも律宗の事なれば大和国奈良にて学問仕故八年あまり音信なし、

現代語訳

下々より大将を尊み奉れば勝利を得る事は疑いなし。さるにつき、信玄公が女坂にて人夫が八木を取りこぼして置きたるをもって、諸人が大将を尊く存ずる儀を考え知ろしめさるる事、これも大将の秘事なり。口伝にあり。信州更級の出家公事の事。一、天文二十三年甲寅五月三日の公事。信州更級に真光寺と申す律宗の寺に、円蔵院という住持が両人の弟子を持つ。兄弟子を善万坊と言うて一文不知の坊主なり。弟弟子は琳切と言うて、これはまた師匠の円蔵院が跡を継がせんと兼ねて約束のゆえに学問に出す。しかも律宗の事なれば大和国奈良にて学問を仕るゆえに、八年あまり音信なし。

解説

坂道で人夫がこぼした米が拾われずに置いてあるのを見て、下の者が主をどう思っているかを読む。それを大将の秘事だと言う。以下は、その裁きの実例として四つの公事が並べられていく。以下は、その裁きの実例として四つの公事が並べられていく。こぼれた米が拾われずに置いてあるという一事から、下の心を読むのが秘事だという。

この章句が説くこと

女坂八木人心秘事更級律宗

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