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甲陽軍鑑 / 品第四十八

みしな申は、それは又我等廣瀨度々手抦をあらはしたる故なりと申す、辻彌兵衛申すは、手抦も人にこされたるは深き儀にては有まじといへば、みしな申すは、廣瀨·我等こしたる人はあまり覺へずといふ、辻彌兵衛申すは、旁はさすがのうでぬきをさする衆が武邊の儀に首尾不合なりといへば、みしな申すは、なにか口の違たる事ありやといへば、辻彌兵衞申すは、さいはいを手にかくる人より上の武士有間敷といひながら、今年さいをゆるされ申候て其以前三十年の間人にすぐれたると云ふは、さて首尾不合にてはなきと申て辻彌兵衛大きに笑へば、みしな一口もあかず、

新字:みしな申は、それは又我等広瀨度々手抦をあらはしたる故なりと申す、辻弥兵衛申すは、手抦も人にこされたるは深き儀にては有まじといへば、みしな申すは、広瀨·我等こしたる人はあまり覚へずといふ、辻弥兵衛申すは、旁はさすがのうでぬきをさする衆が武辺の儀に首尾不合なりといへば、みしな申すは、なにか口の違たる事ありやといへば、辻弥兵衛申すは、さいはいを手にかくる人より上の武士有間敷といひながら、今年さいをゆるされ申候て其以前三十年の間人にすぐれたると云ふは、さて首尾不合にてはなきと申て辻弥兵衛大きに笑へば、みしな一口もあかず、

書き下し

みしな申は、それは又我等広瀨度々手抦をあらはしたる故なりと申す、辻弥兵衛申すは、手抦も人にこされたるは深き儀にては有まじといへば、みしな申すは、広瀨·我等こしたる人はあまり覚へずといふ、辻弥兵衛申すは、旁はさすがのうでぬきをさする衆が武辺の儀に首尾不合なりといへば、みしな申すは、なにか口の違たる事ありやといへば、辻弥兵衛申すは、さいはいを手にかくる人より上の武士有間敷といひながら、今年さいをゆるされ申候て其以前三十年の間人にすぐれたると云ふは、さて首尾不合にてはなきと申て辻弥兵衛大きに笑へば、みしな一口もあかず、

現代語訳

三品が申すは、それはまた我らと広瀬が度々手柄を現したる故なりと申す。辻弥兵衛が申すは、手柄も人に越されたるは深き儀にてはあるまじと言えば、三品が申すは、広瀬と我らを越したる人はあまり覚えずと言う。辻弥兵衛が申すは、方々はさすがの腕抜きをさする衆が、武辺の儀に首尾不合なりと言えば、三品が申すは、なにか口の違いたる事ありやと言えば、辻弥兵衛が申すは、采配を手にかける人より上の武士はあるまじと言いながら、今年に采を許され申し候て、その以前の三十年のあいだ人にすぐれたると言うは、さて首尾不合にてはなきと申して辻弥兵衛が大きに笑えば、三品は一口も開かず。

解説

言い分の中に食い違いがあると突き、どこが違うかと問い返されて、采配が最上だと言いながら三十年許されなかった点を挙げる。笑ってみせたところで相手は口をつぐんだ。数ではなく、言葉の筋のほうで決着している。数ではなく、言葉の筋のほうで決着している。采配が最上だと言いながら三十年許されなかった点を挙げ、笑ってみせたところで相手は口をつぐんだ。

この章句が説くこと

首尾不合矛盾論法三品笑い

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