甲陽軍鑑 / 品第四十七
又それとても其方奉行を上げ候はゞ、曲淵も機つかひに存知、我等ためをも思はず忠功もうすくなるべし、然れば彼者一人にてもなし、其時代の者或は曲淵より後の兵共數度の事を仕る曲淵さへかくの分なりとて戰功ひかへ候はゞ、予がほこさきよわくならん事案のうちなるべし、良匠無弃材明君無弃士と古人も申をかれたり、堪忍の古事分別候へとて御わらひなされ、御座敷を立ておくへいらせ給へば、諸人上下みな悉く是をきゝ何の道にても御奉公をはげまし申べく候覺悟仕、感涙をながす程に存じ候は諸侍の思ひ付申事にて候、
新字:又それとても其方奉行を上げ候はゞ、曲淵も機つかひに存知、我等ためをも思はず忠功もうすくなるべし、然れば彼者一人にてもなし、其時代の者或は曲淵より後の兵共数度の事を仕る曲淵さへかくの分なりとて戦功ひかへ候はゞ、予がほこさきよわくならん事案のうちなるべし、良匠無弃材明君無弃士と古人も申をかれたり、堪忍の古事分別候へとて御わらひなされ、御座敷を立ておくへいらせ給へば、諸人上下みな悉く是をきゝ何の道にても御奉公をはげまし申べく候覚悟仕、感涙をながす程に存じ候は諸侍の思ひ付申事にて候、
書き下し
又それとても其方奉行を上げ候はゞ、曲淵も機つかひに存知、我等ためをも思はず忠功もうすくなるべし、然れば彼者一人にてもなし、其時代の者或は曲淵より後の兵共数度の事を仕る曲淵さへかくの分なりとて戦功ひかへ候はゞ、予がほこさきよわくならん事案のうちなるべし、良匠無弃材明君無弃士と古人も申をかれたり、堪忍の古事分別候へとて御わらひなされ、御座敷を立ておくへいらせ給へば、諸人上下みな悉く是をきゝ何の道にても御奉公をはげまし申べく候覚悟仕、感涙をながす程に存じ候は諸侍の思ひ付申事にて候、
現代語訳
またそれとても、その方が奉行を上げ候わば、曲淵も機遣いに存知し、我らためをも思わず忠功も薄くなるべし。しかれば、かの者一人にてもなし。その時代の者、あるいは曲淵より後の兵ども、数度の事を仕る曲淵さえこの分であるとて戦功を控え候わば、予が矛先が弱くならん事は案の内なるべし。良匠に棄材なく、明君に棄士なしと古人も申し置かれたり。堪忍の故事を分別候えとて御笑いなされ、御座敷を立ちて奥へ入らせ給えば、諸人上下がみな悉くこれを聞き、何の道にても御奉公を励まし申すべく候覚悟を仕り、感涙を流すほどに存じ候は、諸侍の思い付き申す事にて候。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
論語・雍也篇子游、武城の宰と為る。子曰く、「女、人を得たるか。」曰く、「澹台滅明なる者有り。行くに径に由らず。公事に非ざれば、未だ嘗て偃の室に至らざるなり。」
-
論語・泰伯篇舜に臣五人有りて、天下治まる。武王曰く、「予に乱臣十人有り。」孔子曰く、「『才難し』とは、其れ然らずや。唐虞の際、斯に於いて盛んなりと為す。婦人有り、九人のみ。天下を三分して其の二を有ち、以て殷に服事す。周の徳は、其れ至徳と謂う可きのみ。」
-
孫子・作戦篇其の戦を用うるや、勝つを貴ぶ。久しければ則ち兵を鈍らせ鋭を挫き、城を攻むれば則ち力屈し、久しく師を暴せば則ち国用足らず。
-
尉繚子・武議良馬も策有れば、遠道致すべし。賢士も合有れば、大道明らかにすべし。
-
『韓非子』難二第三十七桓公曰く、「吾聞く、人に君たる者は人を索むるに労し、人を使うに佚すと。吾仲父を得ること已に難し。仲父を得るの後、何為れぞ易からざらんや。」
-
論語・衛霊公篇子曰く、君子は小知す可からずして、大受す可きなり。小人は大受す可からずして、小知す可きなり。