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甲陽軍鑑 / 品第四十

一曾根內匠がいはく、信玄公の御弓箭、信州村上殿五郡持ち給ひても、信濃國甲州より廣ければ、武田勢より村上勢大陣なり、其上村上賴平公武勇のほまれ近國にならぶかたなし、殊に越後爲景にかち、越後の內をもせめとる大將と信玄公十八歲より數度の合戰ある間に、同く信州大身衆諏訪殿·小笠原殿·木曾殿各同事にて信玄公と戰ひ、就中上杉衆是は猶以て大敵なり、小田原北條殿ひろき國を持ち給へば、是れ以て大敵なり、日本に弓箭の儀、若手の家康と信長申しあはせられ無事にいたし信玄公とあひたこかふ時は是又大敵なり、又輝虎は日本に當代の强將なれ共此大將衆にから給ふ、是によつて信玄公御武勇當代の無双也、

新字:一曽根内匠がいはく、信玄公の御弓箭、信州村上殿五郡持ち給ひても、信濃国甲州より広ければ、武田勢より村上勢大陣なり、其上村上頼平公武勇のほまれ近国にならぶかたなし、殊に越後為景にかち、越後の内をもせめとる大将と信玄公十八歳より数度の合戦ある間に、同く信州大身衆諏訪殿·小笠原殿·木曽殿各同事にて信玄公と戦ひ、就中上杉衆是は猶以て大敵なり、小田原北条殿ひろき国を持ち給へば、是れ以て大敵なり、日本に弓箭の儀、若手の家康と信長申しあはせられ無事にいたし信玄公とあひたこかふ時は是又大敵なり、又輝虎は日本に当代の强将なれ共此大将衆にから給ふ、是によつて信玄公御武勇当代の無双也、

書き下し

一曽根内匠がいはく、信玄公の御弓箭、信州村上殿五郡持ち給ひても、信濃国甲州より広ければ、武田勢より村上勢大陣なり、其上村上頼平公武勇のほまれ近国にならぶかたなし、殊に越後為景にかち、越後の内をもせめとる大将と信玄公十八歳より数度の合戦ある間に、同く信州大身衆諏訪殿·小笠原殿·木曽殿各同事にて信玄公と戦ひ、就中上杉衆是は猶以て大敵なり、小田原北条殿ひろき国を持ち給へば、是れ以て大敵なり、日本に弓箭の儀、若手の家康と信長申しあはせられ無事にいたし信玄公とあひたこかふ時は是又大敵なり、又輝虎は日本に当代の强将なれ共此大将衆にから給ふ、是によつて信玄公御武勇当代の無双也、

現代語訳

一、曾根内匠が言うには、信玄公の御弓箭。信州の村上殿が五郡を持ち給うても、信濃国は甲州より広ければ、武田勢より村上勢が大陣である。そのうえ村上頼平公は武勇の誉れが近国に並ぶ方がない。ことに越後の為景に勝ち、越後の内をも攻め取る大将と、信玄公が十八歳より数度の合戦があるあいだに、同じく信州の大身衆、諏訪殿・小笠原殿・木曾殿もそれぞれ同じ事で信玄公と戦い、とりわけ上杉衆、これはなおもって大敵である。小田原の北条殿は広い国を持ち給えば、これもって大敵である。日本に弓箭の儀、若手の家康と信長が申し合わせられ無事にいたし、信玄公と相対する時は、これまた大敵である。また輝虎は日本に当代の強将であるけれども、この大将衆に絡み給う。これによって信玄公の御武勇は当代無双である。

解説

強さを、勝った回数ではなく相手の顔ぶれで測っている。村上、諏訪、小笠原、木曾、上杉、北条、そして家康と信長。どれも大敵であり、しかも国の広さでは負けている。誰と戦ってきたかがその人の武勇だという数え方である。誰と戦ってきたかがその人の武勇だという数え方である。しかも並べられた相手は、どれも国の広さでは勝っている大敵ばかりである。

この章句が説くこと

信玄大敵村上上杉北条武勇

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