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甲陽軍鑑 / 品第四十

何事に付ても上意背きがたき事一方ならず候へども、此女房の儀は我等舊妻と申しながら、長野信濃守御退治如此にて、いづかたへも參るべき方なくして、女落所なくて流浪いたすならば、舊妻の恥、悉皆小幡上總が惡名にて候間、御成敗是れあるとても此女房において離別申間敷と申し切りて返事なり、

新字:何事に付ても上意背きがたき事一方ならず候へども、此女房の儀は我等旧妻と申しながら、長野信濃守御退治如此にて、いづかたへも参るべき方なくして、女落所なくて流浪いたすならば、旧妻の恥、悉皆小幡上総が悪名にて候間、御成敗是れあるとても此女房において離別申間敷と申し切りて返事なり、

書き下し

何事に付ても上意背きがたき事一方ならず候へども、此女房の儀は我等旧妻と申しながら、長野信濃守御退治如此にて、いづかたへも参るべき方なくして、女落所なくて流浪いたすならば、旧妻の恥、悉皆小幡上総が悪名にて候間、御成敗是れあるとても此女房において離別申間敷と申し切りて返事なり、

現代語訳

何事につけても上意に背きがたい事は一方ならず候えども、この女房の儀は我らの旧妻と申しながら、長野信濃守の御退治がこのとおりで、どこへも参るべき方がなくして、女が落ち所なくて流浪いたすならば、旧妻の恥は、ことごとく小幡上総が悪名でございますから、御成敗がこれあるとても、この女房において離別は申すまじと言い切っての返事である。

解説

妻を離縁できない理由が、情ではなく名で語られる。実家が滅びた以上、離縁された女には行き場がない。その女が流浪する恥は、そのまま自分の悪名になる。成敗されてもよいと言い切って断っている。妻を離縁できない理由が、情ではなく名で語られる。離縁された女の流浪が、そのまま自分の悪名になるという筋で断り切っている。
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この章句が説くこと

離別悪名旧妻流浪覚悟名

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