甲陽軍鑑 / 品第四十
一はなしめしうど家の內に居り候はゝ麁忽に其居家へおしこむべからず、うちに科人いくたりありて何道具をもらたると聞き定め、其上もし此方にあはてもの候て、敵·味方を見さかへず切りつ·つきつするものなれば其遠慮尤に候、され共無案内なる人のさたに名の高き武士さやうの塲にて右の科人の居家へむざとおしこまぬを、よき武士にひだちうち申すべき樣子なき故、是をさいはいと思ひ、あしきとひなんをいふは、臆病なる侍の女の批判にあひ似たり、
新字:一はなしめしうど家の内に居り候はゝ麁忽に其居家へおしこむべからず、うちに科人いくたりありて何道具をもらたると聞き定め、其上もし此方にあはてもの候て、敵·味方を見さかへず切りつ·つきつするものなれば其遠慮尤に候、され共無案内なる人のさたに名の高き武士さやうの塲にて右の科人の居家へむざとおしこまぬを、よき武士にひだちうち申すべき様子なき故、是をさいはいと思ひ、あしきとひなんをいふは、臆病なる侍の女の批判にあひ似たり、
書き下し
一はなしめしうど家の内に居り候はゝ麁忽に其居家へおしこむべからず、うちに科人いくたりありて何道具をもらたると聞き定め、其上もし此方にあはてもの候て、敵·味方を見さかへず切りつ·つきつするものなれば其遠慮尤に候、され共無案内なる人のさたに名の高き武士さやうの塲にて右の科人の居家へむざとおしこまぬを、よき武士にひだちうち申すべき様子なき故、是をさいはいと思ひ、あしきとひなんをいふは、臆病なる侍の女の批判にあひ似たり、
現代語訳
一、話し討ちの召し人が家の内にいるならば、粗忽にその居家へ押し込むべきではない。内に科人が幾人いて、どんな道具を持ったかと聞き定め、そのうえ、もしこちらに慌て者がいて敵味方を見境えず斬りつき突きつするものであるから、その遠慮はもっともでございます。けれども、不案内な人の沙汰に、名の高い武士がそのような場で右の科人の居家へむやみに押し込まないのを、よい武士に引けを打ち申すべき様子がないゆえに、これを幸いと思い、悪いと非難を言うのは、臆病な侍の女の批判に似ている。
解説

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