甲陽軍鑑 / 品第四十
一はなしめしうど家の內に居り候はゝ麁忽に其居家へおしこむべからず、うちに科人いくたりありて何道具をもらたると聞き定め、其上もし此方にあはてもの候て、敵·味方を見さかへず切りつ·つきつするものなれば其遠慮尤に候、され共無案内なる人のさたに名の高き武士さやうの塲にて右の科人の居家へむざとおしこまぬを、よき武士にひだちうち申すべき樣子なき故、是をさいはいと思ひ、あしきとひなんをいふは、臆病なる侍の女の批判にあひ似たり、
新字:一はなしめしうど家の内に居り候はゝ麁忽に其居家へおしこむべからず、うちに科人いくたりありて何道具をもらたると聞き定め、其上もし此方にあはてもの候て、敵·味方を見さかへず切りつ·つきつするものなれば其遠慮尤に候、され共無案内なる人のさたに名の高き武士さやうの塲にて右の科人の居家へむざとおしこまぬを、よき武士にひだちうち申すべき様子なき故、是をさいはいと思ひ、あしきとひなんをいふは、臆病なる侍の女の批判にあひ似たり、
書き下し
一はなしめしうど家の内に居り候はゝ麁忽に其居家へおしこむべからず、うちに科人いくたりありて何道具をもらたると聞き定め、其上もし此方にあはてもの候て、敵·味方を見さかへず切りつ·つきつするものなれば其遠慮尤に候、され共無案内なる人のさたに名の高き武士さやうの塲にて右の科人の居家へむざとおしこまぬを、よき武士にひだちうち申すべき様子なき故、是をさいはいと思ひ、あしきとひなんをいふは、臆病なる侍の女の批判にあひ似たり、
現代語訳
一、話し討ちの召し人が家の内にいるならば、粗忽にその居家へ押し込むべきではない。内に科人が幾人いて、どんな道具を持ったかと聞き定め、そのうえ、もしこちらに慌て者がいて敵味方を見境えず斬りつき突きつするものであるから、その遠慮はもっともでございます。けれども、不案内な人の沙汰に、名の高い武士がそのような場で右の科人の居家へむやみに押し込まないのを、よい武士に引けを打ち申すべき様子がないゆえに、これを幸いと思い、悪いと非難を言うのは、臆病な侍の女の批判に似ている。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『墨子』貴義子墨子曰く、今、士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。商人、一布を用うるに、敢えて茍くも繼ぎて讎らず、必ず良き者を擇ぶ。今、士の身を用うるは則ち然らず。意の欲する所は則ち之を為す。厚き者は刑罰に入り、薄き者は毁醜を被る。則ち士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。
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論語・述而篇子の慎む所は、斉・戦・疾なり。
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論語・為政篇子張禄を干(もと)むを学ぶ。子曰く、多く聞いて疑わしきを闕(か)き、其の余を慎言すれば、則ち尤(とがめ)寡なし。多く見て殆(あやう)きを闕き、其の余を慎行すれば、則ち悔寡なし。言に尤寡なく、行に悔寡なければ、禄は其の中に在り。
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孫子・火攻篇故に明主は之を慎み、良将は之を警む。此れ国を安んじ軍を全うするの道なり。
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老子・第15章古の善く士たる者は、微妙玄通、深くして識るべからず。夫れ唯だ識るべからず、故に強いて之が容を為す。豫として冬に川を渉るが若く、猶として四隣を畏るるが若く、儼としてそれ客の若く、渙として氷の将に釈けんとするが若く、敦としてそれ樸の若く、曠としてそれ谷の若く、混としてそれ濁れるが若し。孰か能く濁りて以て之を静かにして徐ろに清まさん。孰か能く安んじて以て久しく之を動かして徐ろに生ぜん。此の道を保つ者は盈つるを欲せず。夫れ唯だ盈たず、故に能く蔽れて新たに成る。
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尚書・蔡仲之命小民を康濟するに、率ね中よりし、聰明を作して舊章を亂すこと無かれ。