甲陽軍鑑 / 品第四十
一甲州に關口と申す馬乘の上手にて、曲乘は本の事にてなしと申せ共是は一入重寶なり、一丈二尺あるがけをとびおろし、よこ一尺五寸ある土居の上をも早道、いつさんをのり關の木通りいたやの上をはやみちにやり、其外あら馬·强馬のり候て、馬の藥がひ迄上手なれば、關東奥にも此關口ほどなるは終にみぬとある儀を東國の博勞共大誓文にて申すなれば、
新字:一甲州に関口と申す馬乗の上手にて、曲乗は本の事にてなしと申せ共是は一入重宝なり、一丈二尺あるがけをとびおろし、よこ一尺五寸ある土居の上をも早道、いつさんをのり関の木通りいたやの上をはやみちにやり、其外あら馬·强馬のり候て、馬の薬がひ迄上手なれば、関東奥にも此関口ほどなるは終にみぬとある儀を東国の博労共大誓文にて申すなれば、
書き下し
一甲州に関口と申す馬乗の上手にて、曲乗は本の事にてなしと申せ共是は一入重宝なり、一丈二尺あるがけをとびおろし、よこ一尺五寸ある土居の上をも早道、いつさんをのり関の木通りいたやの上をはやみちにやり、其外あら馬·强馬のり候て、馬の薬がひ迄上手なれば、関東奥にも此関口ほどなるは終にみぬとある儀を東国の博労共大誓文にて申すなれば、
現代語訳
甲州に関口という馬乗りの上手がいて、曲乗りは本当の事ではないと申すけれども、これはひとしお重宝である。一丈二尺ある崖を飛び下り、横幅一尺五寸ある土居の上をも早駆けし、一散に乗って関の木を通り、板屋の上を早駆けにやり、そのほか荒馬・強馬に乗って、馬の薬飼いまで上手であるから、関東や奥州にもこの関口ほどの者はついに見ないという儀を、東国の博労どもが大誓文で申すのであるから、およそ日本国中にも三人とあるまいと沙汰である。
解説
曲乗りは本物ではないと断りながら、その芸の中身を並べる。崖を飛び下り、幅一尺五寸の土手を駆け、板屋根の上を走る。そして馬の薬まで扱える。見世物に見える技が、実は実用に直結しているという評価になっている。見世物に見える技が、実は実用に直結しているという評価になっている。崖を下り、狭い土手を駆け、そのうえ馬の薬まで扱えるという。
この章句が説くこと
関口馬曲乗実用薬飼博労
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