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甲陽軍鑑 / 品第四十

或る時又むろが入道馬塲美濃に語りていはく、人のおづる名大將の二代目は、大略九年はくるしからずして、十年めはかならずあやうし、其謂れは先づ三年は先代の威光にて何かと取まはして大事なし又三年は、かはりめに仕合せよき衆さどめきわたれば、それにつきて悉くいさみて是れ又大事なし、扨其後三年はあしき仕置といひながら、とかくして都合九年也、如此ありて十年めは大きにあやうし、それすぎばかならず敵方生れ替りになり、其仕置に大事ありて此方は大吉ならんと、むろが入道がかんがへ工夫これなり一阿部加賀守がいはく、

新字:或る時又むろが入道馬塲美濃に語りていはく、人のおづる名大将の二代目は、大略九年はくるしからずして、十年めはかならずあやうし、其謂れは先づ三年は先代の威光にて何かと取まはして大事なし又三年は、かはりめに仕合せよき衆さどめきわたれば、それにつきて悉くいさみて是れ又大事なし、扨其後三年はあしき仕置といひながら、とかくして都合九年也、如此ありて十年めは大きにあやうし、それすぎばかならず敵方生れ替りになり、其仕置に大事ありて此方は大吉ならんと、むろが入道がかんがへ工夫これなり一阿部加賀守がいはく、

書き下し

或る時又むろが入道馬塲美濃に語りていはく、人のおづる名大将の二代目は、大略九年はくるしからずして、十年めはかならずあやうし、其謂れは先づ三年は先代の威光にて何かと取まはして大事なし又三年は、かはりめに仕合せよき衆さどめきわたれば、それにつきて悉くいさみて是れ又大事なし、扨其後三年はあしき仕置といひながら、とかくして都合九年也、如此ありて十年めは大きにあやうし、それすぎばかならず敵方生れ替りになり、其仕置に大事ありて此方は大吉ならんと、むろが入道がかんがへ工夫これなり一阿部加賀守がいはく、

現代語訳

ある時、また室が入道が馬場美濃に語って言うには、人が怖じる名大将の二代目は、おおかた九年は苦しくなくて、十年めは必ず危うい。そのいわれは、まず三年は先代の威光で何かと取り回して大事ない。また三年は、代替わりに巡り合わせのよい衆がざわめき渡れば、それについてことごとく勇んで、これもまた大事ない。さてその後の三年は、悪い仕置きといいながらとかくして、都合九年である。このようにあって十年めは大いに危うい。それを過ぎれば必ず敵方が生まれ替わりになり、その仕置きに大事があって、こちらは大吉であろうと、室が入道の考えと工夫がこれである。

解説

二代目の危機を年数で刻む。最初の三年は先代の威光、次の三年は代替わりで得をした者の勢い、さらに三年はごまかしが利く。十年めに一斉に来る、という見立てで、しかもそこを越せば今度は敵方が代替わりして有利になるという。十年めに一斉に来る、という見立てである。しかもそこを越せば、今度は敵方が代替わりして有利になるという先までが数えられている。

この章句が説くこと

二代目九年十年威光代替り危機

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