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甲陽軍鑑 / 品第四十

然れば三河の家康は人にすぐれて利根なる仁かとあれば、馬塲美濃守·穴山殿は信玄公御從弟しかも惣領むこにてましますが、憚りながらさやうの御詞を他國の家中にきこてわらひ候はんずるなり、抑も武士が武士をほむるに作法定まりたり、第一に謠·舞、或は物をよむにうけとりのはやき人を利根なると云ふ、其所作がら又は品のよき人を器用なると申、扨性發とも才智とも名づくなり、

新字:然れば三河の家康は人にすぐれて利根なる仁かとあれば、馬塲美濃守·穴山殿は信玄公御従弟しかも惣領むこにてましますが、憚りながらさやうの御詞を他国の家中にきこてわらひ候はんずるなり、抑も武士が武士をほむるに作法定まりたり、第一に謡·舞、或は物をよむにうけとりのはやき人を利根なると云ふ、其所作がら又は品のよき人を器用なると申、扨性発とも才智とも名づくなり、

書き下し

然れば三河の家康は人にすぐれて利根なる仁かとあれば、馬塲美濃守·穴山殿は信玄公御従弟しかも惣領むこにてましますが、憚りながらさやうの御詞を他国の家中にきこてわらひ候はんずるなり、抑も武士が武士をほむるに作法定まりたり、第一に謡·舞、或は物をよむにうけとりのはやき人を利根なると云ふ、其所作がら又は品のよき人を器用なると申、扨性発とも才智とも名づくなり、

現代語訳

しからば三河の家康は人にすぐれて利根な仁かとあれば、馬場美濃守が、穴山殿は信玄公の御従弟で、しかも惣領の聟でおられるが、憚りながらそのような御言葉を他国の家中に聞かれては笑われましょう。そもそも武士が武士を褒めるには作法が決まっている。第一に謡や舞、あるいは物を読むのに受け取りの早い人を利根なると言う。その所作柄、または品のよい人を器用なると申す。さては性発とも才智とも名付けるのである。

解説

家康は利根かと問われて、馬場が言葉づかいを正す。褒め言葉には作法があり、利根とは飲み込みの早さのことで、謡や舞や読書に使う語だという。主君の従弟であり婿である相手に、他国に笑われますよと言ってのけているところが、この家中の空気である。主君の従弟であり婿である相手に、他国に笑われますよと言ってのけている。褒め言葉にも作法があるという指摘が、この家中の空気をよく示す。

この章句が説くこと

利根器用言葉作法馬場

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