甲陽軍鑑 / 品第四十
扨又馬塲美濃守が、いやしき分別に大身·小身の武士を朝夕下さるこ供御にたとへて候下々の者共飯を上手にこしらへたるは、こはきもさらりとして一段賞翫なり、ましてやはらかなるわ、いかにも然るべし、又下の者、下手にこしらへたる供御はやはらかなるかと思へば、ぶきめく、こはきかと思へば、ぐしやつく、是中のにへぬ飯也、されば又人にこはきも近づきてよし、やわらかなるは猶以ておくふかく、縱へば綿にはりを包みたるごとくにてよき人なり、
新字:扨又馬塲美濃守が、いやしき分別に大身·小身の武士を朝夕下さるこ供御にたとへて候下々の者共飯を上手にこしらへたるは、こはきもさらりとして一段賞翫なり、ましてやはらかなるわ、いかにも然るべし、又下の者、下手にこしらへたる供御はやはらかなるかと思へば、ぶきめく、こはきかと思へば、ぐしやつく、是中のにへぬ飯也、されば又人にこはきも近づきてよし、やわらかなるは猶以ておくふかく、縦へば綿にはりを包みたるごとくにてよき人なり、
書き下し
扨又馬塲美濃守が、いやしき分別に大身·小身の武士を朝夕下さるこ供御にたとへて候下々の者共飯を上手にこしらへたるは、こはきもさらりとして一段賞翫なり、ましてやはらかなるわ、いかにも然るべし、又下の者、下手にこしらへたる供御はやはらかなるかと思へば、ぶきめく、こはきかと思へば、ぐしやつく、是中のにへぬ飯也、されば又人にこはきも近づきてよし、やわらかなるは猶以ておくふかく、縦へば綿にはりを包みたるごとくにてよき人なり、
現代語訳
さてまた馬場美濃守が、卑しい分別で、大身・小身の武士を朝夕下される御飯にたとえて候。下々の者が飯を上手に炊いたのは、硬くてもさらりとして一段の賞翫である。まして柔らかなのはいかにもよろしい。また下の者が下手に炊いた御飯は、柔らかなのかと思えばぶきめき、硬いのかと思えばぐしゃつく。これは中の煮えない飯である。であるから、また人も硬いのも近づいてよい。柔らかなのはなおもって奥深く、たとえば綿に針を包んだようであってよい人である。
解説
この章句が説くこと
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『甲陽軍鑑』品第四十扨人によつてこはきかと思へば、うそをつき、よき武士をそねみ、よろづ無案内にて、ゑりに付さやうありて、又其人うでだてをし、いかにもきすくを立らるゝ、此人をさして中のにへぬ人と申べきなり、
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『甲陽軍鑑』品第四十但しいかにさきへかゝりても、科人に手をおふせずして立ちのき、縦ひ一二ヶ所切り付けても、つどいて出る人にわたして引きこみたらんには、それ又跡に出る人一ツなり、ことに座中ほどにて其塲へ出で、人なみに少しの首尾に逢ふ共ケ様の人はすぐれたる武士と馬塲美濃守ほめられ候、
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『甲陽軍鑑』品第四十如件一或る時信玄公宣ふ、世中の人は色々あり、旣に分別ありて才覚なき人もあり、才覚ありて慈悲のなき人もあり慈悲ありて人をみしらぬも有、人をみしらぬ者は大身は崇敬する者共十人の内八人役にたゝぬ者多し、小身は其熟根する傍輩のあしきつれに近付なり、如此色々様々かわりてみゆれども、それはたと分別のいたらぬ心なり、分別さへ能々すぐれてある人は、才覚にも遠慮にも、人をしるにも功をなすにも、何事に付てもよからん、さる程に、人間は分別の二字諸色のもとゝ存知、朝に心ざし、
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『甲陽軍鑑』品第四十一又ゆるす事もあるべき事是法度のもと也右五ヶ条の理第一に人の目きゝあしき事を申すに、国持或は二郡·三郡とも人数を引廻す大将は、ひろくめぐみ給ふにより家老の内にも其品々有、是をくだ物にたとふるに、梅·桃などゝ云ふ物は先花さきてのち実なるなり又ざくろ·瓜などゝいふ物は先みなりて後花さくものなり、扨て又蓮花と云ふ物は花も実も一度にめぐむなり、此三様がいづれもすつるにあらず、如此に国持大将の人をつかひ給ふ事、国土の草木をやしなひ置ごとし、
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『甲陽軍鑑』品第四十馬塲美濃守又おのこどの利口者とさたするは、はなしうちの成敗者一二度、或は少の足軽、又はせりあひにかたき弓·鉄炮なとにて、人なみに少しすぐれて味方の鑓あはする剛の者の一二間後につどきて罷有が、殊更大合戦にもすぐれたる武士の鑓を始むる二三人の手抦にて、敵·味方五百·六百のうちに也、追くつす時其かちたる方にて、若者の初陣などいたしにぐる敵といへ共、切あふて辛労仕り取子にたる頸は、追付頸とは申せ共、少しふりよくして是を利口者と申ものなり、