甲陽軍鑑 / 品第四十
然ば人のうへに分別·才覺にて工夫·思案に及ばぬこと唯一ツ有ぞ、各是にあたりてみよと有時、諸々の御咄の衆一人もかなはず、そこにて信玄公のたまふは、人間命の縮まりたる義は何にても及がたしと仰られ、わらひ給ふなり、
新字:然ば人のうへに分別·才覚にて工夫·思案に及ばぬこと唯一ツ有ぞ、各是にあたりてみよと有時、諸々の御咄の衆一人もかなはず、そこにて信玄公のたまふは、人間命の縮まりたる義は何にても及がたしと仰られ、わらひ給ふなり、
書き下し
然ば人のうへに分別·才覚にて工夫·思案に及ばぬこと唯一ツ有ぞ、各是にあたりてみよと有時、諸々の御咄の衆一人もかなはず、そこにて信玄公のたまふは、人間命の縮まりたる義は何にても及がたしと仰られ、わらひ給ふなり、
現代語訳
しからば人の上で、分別・才覚によって工夫・思案の及ばないことがただ一つあるぞ。それぞれこれに当たってみよ、とあった時、もろもろの御咄の衆は一人もかなわなかった。そこで信玄公が宣われるには、人間の命が縮まった義は、何をもっても及びがたいと仰せられて、笑われたのである。
解説
問いを出して誰も答えられず、答えが縮まった命だった。工夫も才覚もそこには届かないという結論で、しかも信玄はそれを言って笑っている。前段まで人の工夫の力を讃えてきた流れの最後に、一つだけ手の届かないものを置く構成になっている。人の工夫の力を讃えてきた流れの最後に、一つだけ手の届かないものを置く構成になっている。しかも信玄はそれを言って笑っている。
この章句が説くこと
命工夫才覚限界無常信玄
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