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甲陽軍鑑 / 品第四十

其いはれは大職冠の分別·才覺にて、うみのそこなる方八寸の水精の玉を取返したりと語り傳ふる、是も分別にてあま人をくゞらせとらんとじ、工夫し、才覺を以て右の海士人にちぎりをこめ、其後彼女を賴まるゝは大職冠の氣のきいたる人の故如此、但し此段は詐はりにしても、又人の分別·才覺褒たる事は、日月の火とり水を取事、水精をもつていたすは眼前なれば是もゝとは人間の工夫·思案する才覺なり、

新字:其いはれは大職冠の分別·才覚にて、うみのそこなる方八寸の水精の玉を取返したりと語り伝ふる、是も分別にてあま人をくゞらせとらんとじ、工夫し、才覚を以て右の海士人にちぎりをこめ、其後彼女を頼まるゝは大職冠の気のきいたる人の故如此、但し此段は詐はりにしても、又人の分別·才覚褒たる事は、日月の火とり水を取事、水精をもつていたすは眼前なれば是もゝとは人間の工夫·思案する才覚なり、

書き下し

其いはれは大職冠の分別·才覚にて、うみのそこなる方八寸の水精の玉を取返したりと語り伝ふる、是も分別にてあま人をくゞらせとらんとじ、工夫し、才覚を以て右の海士人にちぎりをこめ、其後彼女を頼まるゝは大職冠の気のきいたる人の故如此、但し此段は詐はりにしても、又人の分別·才覚褒たる事は、日月の火とり水を取事、水精をもつていたすは眼前なれば是もゝとは人間の工夫·思案する才覚なり、

現代語訳

そのいわれは、大職冠の分別と才覚によって、海の底にある方八寸の水晶の玉を取り返したと語り伝える。これも分別で海人に潜らせて取ろうと工夫し、才覚をもってその海人と契りを込め、その後かの女に頼られたのは、大職冠が気の利いた人であるゆえにこのとおりである。ただしこの段は偽りであるとしても、また人の分別・才覚を褒めた事は、日月から火を取り水を取る事、水晶をもっていたすのは眼前であるから、これももとは人間の工夫・思案する才覚である。

解説

藤原鎌足が海女に玉を取り返させた伝説を引き、それが作り話だとしても、と続けるところが面白い。水晶で日から火を取り月から水を取るのは目の前で起きているのだから、人の工夫と才覚は実際にそこまで届くのだと言う。伝説を根拠にせず、確かめられる事実に置き換えている。伝説を根拠にせず、確かめられる事実に置き換えている。水晶で日から火を取るのは目の前で起きているのだから、と言う運びが巧みである。

この章句が説くこと

工夫才覚大職冠分別伝説事実

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