甲陽軍鑑 / 品第四十
其いはれは大職冠の分別·才覺にて、うみのそこなる方八寸の水精の玉を取返したりと語り傳ふる、是も分別にてあま人をくゞらせとらんとじ、工夫し、才覺を以て右の海士人にちぎりをこめ、其後彼女を賴まるゝは大職冠の氣のきいたる人の故如此、但し此段は詐はりにしても、又人の分別·才覺褒たる事は、日月の火とり水を取事、水精をもつていたすは眼前なれば是もゝとは人間の工夫·思案する才覺なり、
新字:其いはれは大職冠の分別·才覚にて、うみのそこなる方八寸の水精の玉を取返したりと語り伝ふる、是も分別にてあま人をくゞらせとらんとじ、工夫し、才覚を以て右の海士人にちぎりをこめ、其後彼女を頼まるゝは大職冠の気のきいたる人の故如此、但し此段は詐はりにしても、又人の分別·才覚褒たる事は、日月の火とり水を取事、水精をもつていたすは眼前なれば是もゝとは人間の工夫·思案する才覚なり、
書き下し
其いはれは大職冠の分別·才覚にて、うみのそこなる方八寸の水精の玉を取返したりと語り伝ふる、是も分別にてあま人をくゞらせとらんとじ、工夫し、才覚を以て右の海士人にちぎりをこめ、其後彼女を頼まるゝは大職冠の気のきいたる人の故如此、但し此段は詐はりにしても、又人の分別·才覚褒たる事は、日月の火とり水を取事、水精をもつていたすは眼前なれば是もゝとは人間の工夫·思案する才覚なり、
現代語訳
そのいわれは、大職冠の分別と才覚によって、海の底にある方八寸の水晶の玉を取り返したと語り伝える。これも分別で海人に潜らせて取ろうと工夫し、才覚をもってその海人と契りを込め、その後かの女に頼られたのは、大職冠が気の利いた人であるゆえにこのとおりである。ただしこの段は偽りであるとしても、また人の分別・才覚を褒めた事は、日月から火を取り水を取る事、水晶をもっていたすのは眼前であるから、これももとは人間の工夫・思案する才覚である。
解説

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
関連する章句
-
『甲陽軍鑑』品第四十是に付、分別にて河の案内者を頼みてよしと工夫し出す、され共案内能く存知たる者共を、人が雇てなければ種々はしり廻りて、よのかたへ行を、物など沢山にあたへんと云て案内者の此方へすゝむ様に仕る是才覚なり一高坂弾正申す、
-
『甲陽軍鑑』品第四十一又或る夜信玄公仰せらるゝは工夫と思案のかはるごとく、分別と才覚とは別ならん子細は、世間にありて才覚のなき人もあり、才覚ありて又分別なき者もあり、されば手を付ていはねば、若き者知恵つかざる間、かれが為になづけて申さば、分別は心にてする、才覚は気のきいたる者のわざなり、分別者には越度まれなり、才覚ばかりで分別なきはあやまりおほし物しりたる人の上には批判いかほども有べし、それは無学の若者合点まれなり一或る時信玄公仰らるゝ、
-
『甲陽軍鑑』品第四十又た心しんを三ツにわけて申候聞給へ、長坂長閑·跡部大炊介殿、先一ツに遠慮は志、二ツ工夫は分別、三ツに才覚は気なり、扨いかに志しても分別にて工夫して其体を見付ねば志しの詮なし、いかに見付ても気をきひても才覚をもつてことをすまさずんば其かひなし、たとへば道を行時、大河のはた迄参り、水のましたるに瀨をしらずしてわたらば、もしながれやせんと遠慮する、是志し也、さやうに心ざしても、渡るべき手だてなければ是又詮なし、
-
『甲陽軍鑑』品第十一其身の所へ出入する者は、是れを鬼や神の様に申すを能く糺して聞けば、已が内の小者などを被官に云ひ付け、ころさせ又は 適合戦せり合ひにあふて被官の取りたる頸などを、高名帳にのせ、一本鑓をつきたるほどに云ひまはれども、いつぞの種に其被官を追出せば、下劣の者の浅間敷は、其主につかはるゝ内はかくせども、出て後幾年過ても主の悪き義恐く化を顕はすも早キオンのなり、
-
『甲陽軍鑑』品第四十或時高坂弾正少弼と内藤修理亮物語の時、高坂がいはく、人をつかふて見るに、鈍なる者は無念にてかならず卒爾なりと云ふ、内藤がいはく、一様に上手なる人は万事にわたり物をよく聞き知るなり、それ聞きしらざる芸者は下手ならんと内藤修理亮申すなり一信玄公惣別出家衆に対面は、
-
『甲陽軍鑑』品第四十ふかくつゝしめ〳〵如件一高坂弾正が申、物よみ衆の中にて定て此さた聞事に有べけれ共、それは文盲成者の心にて、心至らねばきゝしらず、聞しらねば事をわけて物いふこともならず候間、愚人の中にてもそれ〳〵に名を付ていはねば、物のはかゆかずして、大きに悪くさる程に、はづかしながら高坂弾正が愚痴の心を以て、