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甲陽軍鑑 / 品第四十

武士は大小によらず武道を心がくる事第一也、武道を心がくる共、不辨にて事たらずは心に存じても萬つ成がたし、事かなはねば武具·馬藏見苦敷く、似合のよき被官もつるゝ事ならず、去程に男をたて、賴もしう奉公の忠節もすりきりては成まじ、人は分々相當に身を持分限成者をば主の方へ一忠節と思して、ケ樣の侍に目を付て取立ツる事肝要也、但分限の有者に物をためておくお三年く引こまんと思ふか、扨は息女子などに能聟をとらんと存候者、物をたむる侍を見そこなふて加恩すれば、

新字:武士は大小によらず武道を心がくる事第一也、武道を心がくる共、不弁にて事たらずは心に存じても万つ成がたし、事かなはねば武具·馬蔵見苦敷く、似合のよき被官もつるゝ事ならず、去程に男をたて、頼もしう奉公の忠節もすりきりては成まじ、人は分々相当に身を持分限成者をば主の方へ一忠節と思して、ケ様の侍に目を付て取立ツる事肝要也、但分限の有者に物をためておくお三年く引こまんと思ふか、扨は息女子などに能婿をとらんと存候者、物をたむる侍を見そこなふて加恩すれば、

書き下し

武士は大小によらず武道を心がくる事第一也、武道を心がくる共、不弁にて事たらずは心に存じても万つ成がたし、事かなはねば武具·馬蔵見苦敷く、似合のよき被官もつるゝ事ならず、去程に男をたて、頼もしう奉公の忠節もすりきりては成まじ、人は分々相当に身を持分限成者をば主の方へ一忠節と思して、ケ様の侍に目を付て取立ツる事肝要也、但分限の有者に物をためておくお三年く引こまんと思ふか、扨は息女子などに能婿をとらんと存候者、物をたむる侍を見そこなふて加恩すれば、

現代語訳

武道を心がけても、不弁で事が足りなければ、心に存じても万事が成りがたい。事が叶わなければ武具や馬具が見苦しく、似合いのよい被官を連れることもできない。さるほどに、男を立てて頼もしく奉公の忠節も、すり切れては成るまい。人は分に応じ相応に身を保ち、分限のある者を主人の方へ一つの忠節と思し召して、このような侍に目を付けて取り立てる事が肝要である。ただし分限のある者に物を蓄えておいて、引っ込もうと思うか、あるいは娘などによい聟を取ろうと存ずる者、物を蓄める侍を見損なって加恩すれば、下賤のたとえに、盗人に追い討ちを打つと申す儀になろう。

解説

武道の前に暮らしが立つことを置く。装備も家来も金がなければ揃わないので、身代を保っている者を忠節と見て取り立てよという。ただし蓄えの目的が引退や娘の縁組であれば、それは家のためではないので、見誤って加増すれば盗人に追い討ちを打つことになる。蓄えの目的が引退や娘の縁組であれば、それは家のためではない。見誤って加増すれば、盗人に追い討ちを打つことになると言われている。

この章句が説くこと

分限武道加恩見損い忠節

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