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甲陽軍鑑 / 品第十六

長坂長閑畏て承はり如此なれども、各家老寄り合さた仕つる批判のむね言上仕るべしと、其日は內藤修理の正當番に付て、先づ内藤申す尤も喧嘩なき樣にとの義理非を不論、兩方御成敗に付ては相違有るまじく候、さりながら御用に可立者は老若によらずたがひの義をば堪忍仕るべし、但し不足をあたへられてもおめ〳〵と堪忍仕るほどの者は、さのみ御用にも立つまじく候、左候て諸人まろくなり、何をも堪忍いたせと上意においては、いかにもぶじにはみへ申すべ候、

新字:長坂長閑畏て承はり如此なれども、各家老寄り合さた仕つる批判のむね言上仕るべしと、其日は内藤修理の正当番に付て、先づ内藤申す尤も喧嘩なき様にとの義理非を不論、両方御成敗に付ては相違有るまじく候、さりながら御用に可立者は老若によらずたがひの義をば堪忍仕るべし、但し不足をあたへられてもおめ〳〵と堪忍仕るほどの者は、さのみ御用にも立つまじく候、左候て諸人まろくなり、何をも堪忍いたせと上意においては、いかにもぶじにはみへ申すべ候、

書き下し

長坂長閑畏て承はり如此なれども、各家老寄り合さた仕つる批判のむね言上仕るべしと、其日は内藤修理の正当番に付て、先づ内藤申す尤も喧嘩なき様にとの義理非を不論、両方御成敗に付ては相違有るまじく候、さりながら御用に可立者は老若によらずたがひの義をば堪忍仕るべし、但し不足をあたへられてもおめ〳〵と堪忍仕るほどの者は、さのみ御用にも立つまじく候、左候て諸人まろくなり、何をも堪忍いたせと上意においては、いかにもぶじにはみへ申すべ候、

現代語訳

長坂長閑は畏まって承り、このとおりではあるけれども、それぞれ家老が寄り合って沙汰する批判の旨を言上いたしましょうと申し、その日は内藤修理正が当番であったので、まず内藤が申すには、もっとも喧嘩がないようにという義、理非を論ぜず双方御成敗については相違ございますまい。しかしながら、御用に立つべき者は老若によらず互いの義を堪忍いたすべきです。ただし、不足を与えられてもおめおめと堪忍するほどの者は、それほど御用にも立ちますまい。そうして諸人が丸くなり、何でも堪忍せよと上意があるならば、いかにも無事には見え申しましょう。

解説

命令に対し、家老がその場で反論する。喧嘩をなくすこと自体は認めたうえで、侮辱を受けて黙っていられる者は戦でも使えないと言う。無事に見えることと、実が保たれることは別だという指摘で、以下、長い反論が続いていく。無事に見えることと、実が保たれることは別だという指摘である。命令をその場で受け止めず、まず副作用を数えるのがこの家の作法になっている。

この章句が説くこと

諫言堪忍喧嘩内藤無事

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