甲陽軍鑑 / 起巻
御法度書之事也、さて又假名の本を用る德は、世間に學問よくして、物よむ人は、百人の內に、一二人ならてなし、さるに付、物しらぬ人も、假名をばよむ物にて候間、雨中のつれ〳〵にも、無學の老若取て、よみ給ふ樣にとの事也一侍衆大小共に、學問よくして、物しり給はん事、肝要なり、
新字:御法度書之事也、さて又仮名の本を用る徳は、世間に学問よくして、物よむ人は、百人の内に、一二人ならてなし、さるに付、物しらぬ人も、仮名をばよむ物にて候間、雨中のつれ〳〵にも、無学の老若取て、よみ給ふ様にとの事也一侍衆大小共に、学問よくして、物しり給はん事、肝要なり、
書き下し
御法度書之事也、さて又仮名の本を用る徳は、世間に学問よくして、物よむ人は、百人の内に、一二人ならてなし、さるに付、物しらぬ人も、仮名をばよむ物にて候間、雨中のつれ〳〵にも、無学の老若取て、よみ給ふ様にとの事也一侍衆大小共に、学問よくして、物しり給はん事、肝要なり、
現代語訳
さてまた仮名の本を用いる徳は、世間に学問がよくできて物を読む人は百人のうちに一人か二人よりほかにいない。それにつけて、物を知らない人も仮名は読むものであるから、雨中の徒然にも無学の老若が手に取って読まれるようにという事である。一、侍衆は大小ともに学問をよくして物を知られる事が肝要である。
解説
仮名で書く理由が数で示される。読める人は百人に一人か二人しかいないのだから、その一人二人ではなく残りの九十八人に届く形を選ぶ。雨の日の徒然に無学の老若が手に取る、という読まれ方まで想定されている。読める人は百人に一人か二人しかいない。その一人二人ではなく、残りの九十八人に届く形を選ぶという、読み手の数から逆算した判断である。
この章句が説くこと
仮名読者学問伝達無学書
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