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甲陽軍鑑 / 品第十三

舘々へ引籠る、しかうして後此義に付て山內殿と扇谷殿と其年中に取あひおこつて、羽入の峯·岩とヒ四ゴロの峯·ふく田のゝ·ならのはしなどゝ申す所におひて、大きなる合戰ありて味方も敵もみへわかず、日來無心懸の奉公人共働くすべもしらずして、こねつ返しつうろつきまはる、小旗をすて、或ひは鎗をきりおり杖につき、北ニぐる者は跡をみず、主を捨てゝ大塲方も平井衆も敵味方共に、己が在所々々へ長北いたしたる者一そなへに二人三人づゝ在之、

新字:舘々へ引籠る、しかうして後此義に付て山内殿と扇谷殿と其年中に取あひおこつて、羽入の峯·岩とヒ四ゴロの峯·ふく田のゝ·ならのはしなどゝ申す所におひて、大きなる合戦ありて味方も敵もみへわかず、日来無心懸の奉公人共働くすべもしらずして、こねつ返しつうろつきまはる、小旗をすて、或ひは鎗をきりおり杖につき、北ニぐる者は跡をみず、主を捨てゝ大塲方も平井衆も敵味方共に、己が在所々々へ長北いたしたる者一そなへに二人三人づゝ在之、

書き下し

舘々へ引籠る、しかうして後此義に付て山内殿と扇谷殿と其年中に取あひおこつて、羽入の峯·岩とヒ四ゴロの峯·ふく田のゝ·ならのはしなどゝ申す所におひて、大きなる合戦ありて味方も敵もみへわかず、日来無心懸の奉公人共働くすべもしらずして、こねつ返しつうろつきまはる、小旗をすて、或ひは鎗をきりおり杖につき、北ニぐる者は跡をみず、主を捨てゝ大塲方も平井衆も敵味方共に、己が在所々々へ長北いたしたる者一そなへに二人三人づゝ在之、

現代語訳

そうして後、この件について山内殿と扇谷殿とがその年のうちに争いを起こし、羽入の峯・岩との峯・ふく田の野・ならの橋などという所において大きな合戦があって、味方も敵も見分けがつかず、日ごろ心がけのない奉公人どもは働くすべも知らずに、こねつ返しつうろつき回る。小旗を捨て、あるいは槍を切り折って杖につき、逃げる者は後ろを見ず、主を捨てて、大場方も平井衆も敵味方ともに、自分の在所在所へ逃げていった者が一備えに二人三人ずついたのである。

解説

太田道灌の謀殺から一年のうちに、兄弟であった両上杉が正面から戦う。そこで起きたのは戦闘というより崩壊で、味方も敵も見分けがつかず、小旗を捨て槍を折って杖にして逃げる。日ごろ心がけがないとこうなる、という前段までの議論が、そのまま情景になっている。日ごろ心がけがないとこうなる、という前段までの議論が、そのまま情景になっている。崩れる時は、戦う前に隊としての形が消えている。

この章句が説くこと

崩壊合戦心懸内輪上杉

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