孔子家語 / 正論解
孔子在齊。齊侯出田,招虞人以弓不進。公使執之,對曰:「昔先君之田也,旌以招大夫,弓以招士,皮冠以招虞人。臣不見皮冠,故不敢進,乃舍之。」孔子聞之曰:「善哉。守道不如守官,君子韙之。」
新字:孔子在斉。斉侯出田,招虞人以弓不進。公使執之,対曰:「昔先君之田也,旌以招大夫,弓以招士,皮冠以招虞人。臣不見皮冠,故不敢進,乃舎之。」孔子聞之曰:「善哉。守道不如守官,君子韙之。」
書き下し
孔子齊に在り。齊侯田(かり)に出で、虞人を招くに弓を以てするも進まず。公之を執えしむ。對えて曰く、「昔先君の田するや、旌を以て大夫を招き、弓を以て士を招き、皮冠を以て虞人を招く。臣皮冠を見ず、故に敢えて進まず。」乃ち之を舍(ゆる)す。孔子之を聞きて曰く、「善いかな。道を守るは官を守るに如かず。君子之を韙(よし)とす。」
現代語訳
孔子が斉にいたときのことである。斉侯が狩りに出て、弓を掲げて猟場の管理人(虞人)を呼び寄せようとしたが、その人は進み出なかった。斉侯はその者を捕らえさせようとした。その人は答えて言った。「昔、先君が狩りをされたときは、旌旗で大夫を招き、弓で士を招き、皮の冠で虞人を招くのが決まりでした。私は皮の冠を見ませんでしたので、あえて進み出なかったのです。」そこで斉侯は彼を許した。孔子はこれを聞いて言った。「立派なことだ。道を守ることは職務を守ることに及ばない、というが、この場合はまさに君子がこれをよしとする振る舞いだ。」
解説
斉の虞人(猟場管理人)が、定められた作法通りの合図(皮冠)がなければ君主の招きにも応じなかったという故事です。この逸話は『春秋左氏伝』や『孟子』にも見え、招く際の礼法を守ることの重要性を説く例として広く知られています。虞人は君主の権威よりも定められた職務上の礼、すなわち「守官」を優先し、結果として君主もそれを咎めず許しました。孔子はこの行動を高く評価し、「道を守ることは官(職分)を守ることに及ばない」と述べています。これは、上位者の意向であっても、自らの職責の範囲や決められた手続きを逸脱しないことの大切さを説くものです。現代の組織においても、権限や手順を軽んじず、たとえ上司の求めであっても定められた原則を守り抜く姿勢が、結果として信頼を得ることにつながるという教訓といえます。
この章句が説くこと
虞人守官礼斉侯孔子
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