孔子家語 / 禮運
夫禮者,君之柄。所以別嫌明微,儐鬼神,考制度,列仁義,立政教,安君臣上下也。故政不正,則君位危;君位危,則大臣倍、小臣竊;刑肅而俗弊,則法無常;法無常,則禮無別;禮無別,則士不仕、民不歸;是謂疵國。是故夫政者,君之所以藏身也。必本之天,效以降命;命降於社,之謂效地;降於祖廟,之謂仁義;降於山川,之謂興作;降於五祀,之謂制度;此聖人所以藏身之固也。聖人參於天地,並於鬼神以治政也。處其所存,禮之序也;翫其所樂,民之治也。天生時,地生財,人其父生而師教之。四者君以政用之,所以立於無過之地。
新字:夫礼者,君之柄。所以別嫌明微,儐鬼神,考制度,列仁義,立政教,安君臣上下也。故政不正,則君位危;君位危,則大臣倍、小臣竊;刑粛而俗弊,則法無常;法無常,則礼無別;礼無別,則士不仕、民不帰;是謂疵国。是故夫政者,君之所以蔵身也。必本之天,効以降命;命降於社,之謂効地;降於祖廟,之謂仁義;降於山川,之謂興作;降於五祀,之謂制度;此聖人所以蔵身之固也。聖人参於天地,並於鬼神以治政也。処其所存,礼之序也;翫其所楽,民之治也。天生時,地生財,人其父生而師教之。四者君以政用之,所以立於無過之地。
書き下し
夫れ禮は、君の柄なり。嫌を別ち微を明らかにし、鬼神を儐し、制度を考え、仁義を列ね、政教を立て、君臣上下を安んずる所以なり。故に政正しからざれば、則ち君位危うし。君位危うければ、則ち大臣倍き、小臣竊む。刑肅にして俗弊るれば、則ち法常無し。法常無ければ、則ち禮別無し。禮別無ければ、則ち士仕えず、民歸せず。是を疵國と謂う。是の故に夫れ政は、君の身を藏する所以なり。必ず之を天に本づけ、效して以て命を降す。命社に降るは、之を地に效うと謂う。祖廟に降るは、之を仁義と謂う。山川に降るは、之を興作と謂う。五祀に降るは、之を制度と謂う。此れ聖人の身を藏するを固くする所以なり。聖人天地に參わり、鬼神に並びて以て政を治む。其の存する所に處るは、禮の序なり。其の樂しむ所を翫ぶは、民の治なり。天は時を生じ、地は財を生じ、人は其の父生みて師教う。四者君政を以て之を用う、無過の地に立つ所以なり。
現代語訳
そもそも礼とは、君主にとっての統治の柄(取っ手)である。それによって嫌疑を区別し、微妙な事柄を明らかにし、鬼神をもてなし、制度を考究し、仁義の徳目を並べ立て、政治と教化を確立し、君臣上下の関係を安定させるのである。だから政治が正しくなければ、君主の地位が危うくなる。君主の地位が危うくなれば、大臣は背き、小臣は権力を盗み取る。刑罰ばかりが厳しくなって風俗が乱れれば、法に一貫性がなくなる。法に一貫性がなければ、礼の区別もなくなる。礼の区別がなくなれば、士は仕えず、民も帰服しない。これを『疵國(欠陥のある国)』と呼ぶ。だからこそ、政治とは君主がその身を安んじ隠す(保つ)ための拠り所なのである。それは必ず天に根拠を置き、天に則って政治の命令を下す。命令が社(土地の神)に及ぶのを、『地に則る』という。命令が祖廟に及ぶのを、『仁義』という。命令が山川に及ぶのを、『自然の興作を導く』という。命令が五祀(住居に関わる五つの神)に及ぶのを、『制度』という。これが聖人が自らの身を固く保つための拠り所である。聖人は天地の働きに参与し、鬼神と並んで政治を治める。自らのあるべき場所に身を置くのは、礼の秩序による。人々が楽しむものを慈しみ用いるのは、民を治める道である。天は時(季節)を生み出し、地は財(産物)を生み出し、人はその父が生み、師がこれを教育する。この四つのものを、君主は政治によって用いる。これが過ちのない境地に立つための拠り所である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
孔子家語・禮運夫れ禮は:必ず太一に本づき、分れて天地と爲り、轉じて陰陽と爲り、變じて四時と爲り、列して鬼神と爲る。其の降るを命と曰い、其の天に官たるなり。分藝に協い、其の人に居るを、養と曰う。信を講じ睦を修め、人の肌膚の會、筋骸の束を固くする所以なり。生を養い死を送り、鬼神に事うるの大端なる所以なり。天道に達し、人情の大竇に順う所以なり。唯だ聖人のみ禮の以て已む可からざるを知ると爲す。故に國を破り家を喪い人を亡ぼすは、必ず先ず其の禮を去る。禮の人に於けるや、猶お酒の糱有るがごとし。君子は以て厚く、小人は以て薄し。聖人義の柄、禮の序を修めて、以て人情を治む。人情は、聖王の田なり。禮を修めて以て之を耕し、義を陳ねて以て之を種え、學を講じて以て之を耨し、仁を本づけて以て之を聚め、樂を播きて以て之を安んず。故に禮は、義の實なり。諸を義に協えて協えば則ち禮なり、先王未だ義を以て起す可からずと雖も。義は、藝の分、仁の節なり。藝に協い、仁に講ず。之を得る者は強く、之を失う者は喪う。仁は、義の本、順の體なり。之を得る者は尊し。故に國を治むるに禮を以てせざるは、猶お耜無くして耕すがごとし。禮を爲して義に本づかざるは、猶お之を耕して種えざるがごとし。義を爲して學に講ぜざるは、猶お種えて耨せざるがごとし。之を學を以て講じて、仁を以て合せざるは、猶お耨して獲ざるがごとし。之を仁を以て合して、樂を以て之を安んぜざるは、猶お獲て食わざるがごとし。之を樂を以て安んじて、順に達せざるは、猶お食いて肥えざるがごとし。
-
孔子家語・禮運先王蓍龜を秉り、祭祀を列ね、瘞し、繒し、宣し、祝嘏の辭說、制度を設く。故に國に禮有り、官に御有り、事に職有り、禮に序有り。先王禮の下に達せざるを患う、故に:帝を郊に饗するは、天位を定むる所以なり。社を國に祀るは、地利を列ぬる所以なり。祖廟を禘するは、仁を本づくる所以なり。山川を旅するは、鬼神を儐する所以なり。五祀を祭るは、事を本づくる所以なり。故に宗祝は廟に在り、三公は朝に在り、三老は學に在り、王は巫を前にして史を後にし、卜蓍瞽侑、皆左右に在り。王の中心違う無く、以て至正を守る。是を以て禮郊に行われて、百神職を受く。禮社に行われて、百貨極む可し。禮祖廟に行われて、孝慈服す。禮五祀に行われて、正しく法則す。故に郊、社、祖廟、山川、五祀は、義の脩まりて禮の藏なり。
-
孔子家語・禮運君は:人の明らかにする所にして、人を明らかにする者に非ざるなり。人の養う所にして、人を養う者に非ざるなり。人の事うる所にして、人に事うる者に非ざるなり。夫れ君は、人を明らかにすれば則ち過ち有り。故に人を養えば則ち足らず、人に事うれば則ち位を失う。故に百姓は君を明らかにして以て自ら治め、君を養いて以て自ら安んじ、君に事えて以て自ら顯す。是を以て禮達して分定まる。人皆其の死を愛して、其の生を患う。是の故に人の智を用いて其の詐を去り、人の勇を用いて其の怒を去り、人の仁を用いて其の貪を去る。國に患有れば:君は社稷に死す、之を義と爲す。大夫は宗廟に死す、之を變と爲す。凡そ聖人能く天下を以て一家と爲し、中國を以て一人と爲す、之を意にするに非ざるなり。必ず其の情を知り、其の義に從い、其の利に明らかに、其の患に達して、然る後に之を爲す。
-
孔子家語・禮運言偃復た問いて曰わく:「此くの如きか、禮の急なるや。」孔子曰わく:「夫れ禮は、先王の天の道を承け、以て人の情を治め、其の鬼神を列ね、喪、祭、鄉射、冠、婚、朝、聘に達する所以なり。故に聖人禮を以て之を示せば、則ち天下國家禮を以て正す可し。」
-
孔子家語・論禮子貢退き、言遊進みて曰わく、「敢えて問う、礼や、悪を領めて好を全うする者か。」子曰わく、「然り。」子貢問う、「何ぞや。」子曰わく、「郊社の礼は、鬼神を仁する所以なり。禘嘗の礼は、昭穆を仁する所以なり。饋奠の礼は、死喪を仁する所以なり。射饗の礼は、郷党を仁する所以なり。食饗の礼は、賓客を仁する所以なり。郊社の義、禘嘗の礼に明らかなれば、国を治むることそれ諸を掌に指すがごときのみ。是の故に家に居るに礼有れば、故に長幼これを以て弁じ、閨門に礼有れば、故に三族これを以て和し、朝廷に礼有れば、故に官爵これを以て序し、田猟に礼有れば、故に戎事これを以て閑い、軍旅に礼有れば、故に武功成る。是を以て宮室その度を得、鼎俎その象を得、物その時を得、楽その節を得、車その軾を得、鬼神その享を得、喪紀その哀を得、弁説その党を得、百官その体を得、政事その施を得。身に加えて前に措く、凡そ衆の動くこと、その宜しきを得るなり。」
-
孔子家語・禮運聖人則を作るに、必ず天地を以て本と爲し、陰陽を以て端と爲し、四時を以て柄と爲し、日星を以て紀と爲し、月を以て量と爲し、鬼神を以て徒と爲し、五行を以て質と爲し、禮義を以て器と爲し、人情を以て田と爲し、四靈を以て畜と爲す。天地を以て本と爲す、故に物舉ぐ可し。陰陽を以て端と爲す、故に情睹る可し。四時を以て柄と爲す、故に事勸む可し。日星を以て紀と爲す、故に業別つ可し。月を以て量と爲す、故に功藝有り。鬼神を以て徒と爲す、故に事守有り。五行を以て質と爲す、故に事復す可きなり。禮義を以て器と爲す、故に事行に考有り。人情を以て田と爲す、故に人以て奧と爲す。四靈を以て畜と爲す、故に飲食由有り。何をか四靈と謂う。麟、鳳、龜、龍、之を四靈と謂う。故に龍を以て畜と爲せば、魚鮪諗せず。鳳を以て畜と爲せば、鳥獝せず。麟を以て畜と爲せば、獸狘せず。龜を以て畜と爲せば、人情失わず。