孔子家語 / 執轡
過失,人之情,莫不有焉;過而改之,是為不過。故官屬不理,分職不明,法政不一,百事失紀,曰亂;亂則飭冢宰。地而不殖,財物不蕃,萬民饑寒,教訓不行,風俗淫僻,人民流散,曰危;危則飭司徒。父子不親,長幼失序,君臣上下,乖離異志 ,曰不和;不和則飭宗伯。賢能而失官爵,功勞而失賞祿,士卒疾怨,兵弱不用,曰不平;不平則飭司馬。刑罰暴亂,奸邪不勝,曰不義;不義則飭司寇。度量不審,舉事失理,都鄙不修,財物失所,曰貧;貧則飭司空。故御者,同是車馬,或以取千里,或不及數百里。其所謂進退緩急,異也。夫治者同是官法,或以致平,或以致亂者,亦其所以為進退緩急異也。
新字:過失,人之情,莫不有焉;過而改之,是為不過。故官属不理,分職不明,法政不一,百事失紀,曰乱;乱則飭冢宰。地而不殖,財物不蕃,万民饑寒,教訓不行,風俗淫僻,人民流散,曰危;危則飭司徒。父子不親,長幼失序,君臣上下,乖離異志 ,曰不和;不和則飭宗伯。賢能而失官爵,功労而失賞禄,士卒疾怨,兵弱不用,曰不平;不平則飭司馬。刑罰暴乱,奸邪不勝,曰不義;不義則飭司寇。度量不審,舉事失理,都鄙不修,財物失所,曰貧;貧則飭司空。故御者,同是車馬,或以取千里,或不及数百里。其所謂進退緩急,異也。夫治者同是官法,或以致平,或以致乱者,亦其所以為進退緩急異也。
書き下し
過失は人の情、有らざる莫し。過ちて之を改むる、是を過ち無しと為す。故に官属理まらず、分職明らかならず、法政一ならず、百事紀を失う、乱と曰う。乱ずれば則ち冢宰を飭む。地にして殖えず、財物蕃らず、万民饑寒し、教訓行われず、風俗淫僻にして、人民流散す、危と曰う。危うければ則ち司徒を飭む。父子親しまず、長幼序を失い、君臣上下、乖離して志を異にす、不和と曰う。不和なれば則ち宗伯を飭む。賢能にして官爵を失い、功労ありて賞禄を失い、士卒疾み怨み、兵弱くして用いられず、不平と曰う。不平なれば則ち司馬を飭む。刑罰暴乱にして、奸邪勝えず、不義と曰う。不義なれば則ち司寇を飭む。度量審らかならず、事を挙げて理を失い、都鄙修まらず、財物その所を失う、貧と曰う。貧なれば則ち司空を飭む。故に御者、同じくこれ車馬なるも、或いは以て千里を取り、或いは数百里に及ばず。その謂わゆる進退緩急は、異なればなり。夫れ治者、同じくこれ官法なるも、或いは以て平を致し、或いは以て乱を致す者は、亦たその進退緩急を異にする所以なり。
現代語訳
過ちというものは、人の情として誰にでも起こりうるものです。過ちを改めることができれば、それはもはや過ちではないとされます。さて、役人組織が整わず、職分が明確でなく、法や政が統一されず、あらゆることが秩序を失っている状態、これを「乱」といいます。乱れたときは冢宰(宰相)を正します。土地が耕されず、財物が増えず、万民が飢え凍え、教化が行われず、風俗が乱れて、人民が流浪し離散する状態、これを「危」といいます。危ういときは司徒を正します。父子が親しまず、年長者と年少者の秩序が失われ、君臣上下がばらばらになり、志を異にする状態、これを「不和」といいます。不和なときは宗伯を正します。賢く有能な者が官職や爵位を失い、功労のある者が褒賞や俸禄を失い、兵士が病み怨み、軍が弱くて用をなさない状態、これを「不平」といいます。不平なときは司馬を正します。刑罰が乱暴に行われ、悪人邪者を抑えきれない状態、これを「不義」といいます。不義なときは司寇を正します。度量衡が正しく整わず、事を行っても道理にかなわず、都市も田舎も治まらず、財物があるべき場所に収まらない状態、これを「貧」といいます。貧しいときは司空を正します。このように、御者は同じ車と馬を使っていても、ある者は千里の道を行き、ある者は数百里にも及びません。それは進退や緩急の使い方が異なるからです。そもそも治世を担う者も、同じ官職と法制度を用いていても、ある者は太平をもたらし、ある者は混乱を招きます。これもまた、進退緩急の使い方が異なるからなのです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
孔子家語・執轡古の天下を御する者は、六官を以て総治す。冢宰の官は以て道を成し、司徒の官は以て徳を成し、宗伯の官は以て仁を成し、司馬の官は以て聖を成し、司寇の官は以て義を成し、司空の官は以て礼を成す。六官手に在りて以て轡と為し、仁を均しくして以て納と為す。故に曰わく、四馬を御する者は六轡を執り、天下を御する者は六官を正す、と。是の故に善く馬を御する者は、身を正して轡を総べ、馬力を均しくし、馬心を斉え、回旋曲折、唯だその之く所のままなり。故に以て長道を取るべく、以て急疾に赴くべし。此れ聖人の天地と人事とを御する所以の法則なり。天子は内史を以て左右の手と為し、六官を以て轡と為す。已にして三公と六官を執るを為し、五教を均しくし、五法を斉う。故に亦た唯だその引く所のままにして、志の如くならざる無く、これを道を以てすれば則ち国治まり、これを徳を以てすれば則ち国安んじ、これを仁を以てすれば則ち国和し、これを聖を以てすれば則ち国平らかに、これを礼を以てすれば則ち国安んじ、これを義を以てすれば則ち国義しく、此れ政を御するの術なり。
-
『管子』立政國の治亂する所以の者は三、殺戮刑罰は用うるに足らざるなり。國の安危する所以の者は四、城郭險阻は守るに足らざるなり。國の富貧する所以の者は五、稅租を輕くし賦斂を薄くするは恃むに足らざるなり。國を治むるに三本有り、國を安んずるに四固有り、國を富ますに五事有り。五事は、五經なり。君の審らかにする所の者は三。一に曰く德其の位に當たらず、二に曰く功其の禄に當たらず、三に曰く能其の官に當たらず。此の三本なる者は、治亂の原なり。故に國に德義未だ朝に明らかならざる者有らば、則ち尊位を加う可からず。功力未だ國に見われざる者は、則ち授くるに重禄を以てす可からず。事に臨みて民に信ぜられざる者は、則ち大官に任ぜしむ可からず。故に德厚くして位卑しき者は之を過と謂い、德薄くして位尊き者は之を失と謂う。寧ろ君子に過つとも、小人に失する毋かれ。君子に過つは、其の怨みを為すこと淺し。小人に失するは、其の禍を為すこと深し。
-
『淮南子』主術訓亂國は則ち然らず。眾 咸な譽むる者有れば功無くして賞し、職を守る者は罪無くして誅せらる。主上 暗くして明らかならず、群臣 黨して忠ならず、說談する者は辯に游び、行いを修むる者は住に競う。主上 令を出だせば、則ち之を非として與にす。法令の禁ずる所は、則ち之を犯すに邪を以てす。智を為す者は巧詐に務め、勇を為す者は鬥爭に務む。大臣 權を專らにし、下吏 勢を持し、朋黨周比して、以て其の上を弄ぶ。國 存するが若しと雖も、古の人は亡べりと曰えり。且つ夫れ官職を治めずして甲兵を被り、南畝に隨わずして賢聖の聲有る者は、國に教うる所以に非ざるなり。騏驥・騄駬は、天下の疾馬なり。之を驅れども前まず、之を引けども止まざれば、愚者と雖も體を加えざるなり。今 治亂の機、轍跡 見る可きに、而も世主 之を能く察する莫し。此れ治道の塞がる所以なり。權勢なる者は、人主の車輿なり。爵祿なる者は、人臣の轡銜なり。是の故に人主は權勢の要に處りて、爵祿の柄を持し、緩急の度を審らかにして、取予の節に適う。是を以て天下 力を盡くして倦まず。
-
『管子』君臣下宫中の亂を妬紛と曰い、兄弟の亂を黨偏と曰い、大臣の亂を稱述と曰い、中民の亂を讋諄と曰い、小民の亂を財匱と曰う。財匱は薄を生じ、讋諄は慢を生じ、稱述・黨偏・妬紛は變を生ず。故に名を正し疑を稽え、刑殺亟やかに近ければ、則ち内定まる。大臣に順うに功を以てし、中民に順うに行を以てし、小民に順うに務を以てすれば、則ち國豐かなり。天の時を審らかにし、地の生を物して、以て民力を輯む。淫務を禁じ、農功を勸め、以て其の無事を職とすれば、則ち小民治まる。上は之を稽うるに數を以てし、下は什伍もて以て徵し、其の罪伏を近くして、以て其の意を固くす。鄉に之が師を樹てて、以て其の學を遂げしめ、之に官するに其の能を以てし、年に及びて舉ぐれば、則ち士行に反る。德を稱し功を度り、其の能くする所を勸め、若しくは之を稽うるに衆風を以てし、若しくは任ずるに社稷の任を以てす。此くの若くんば、則ち士情に反る。
-
孔子家語・執轡古の天子は常に季冬を以て徳を考え法を正し、以て治乱を観る。徳盛んなる者は治まるなり、徳薄き者は乱るるなり。故に天子徳を考うれば、則ち天下の治乱、廟堂の上に坐して知るべし。夫れ徳盛んなれば則ち法修まり、徳盛んならざれば則ち飭む、法と政と咸な徳にして衰えず。故に曰わく、王者は又た孟春を以て其の徳及び功能を論ず、と。能く徳法する者を有徳と為し、能く徳法を行う者を有行と為し、能く徳法を成す者を有功と為し、能く徳法を治むる者を有智と為す。故に天子吏を論じて徳法行われ、事治まりて功成る。夫れ季冬に法を正し、孟春に吏を論ずるは、国を治むるの要なり。」
-
孔子家語・入官上為る者は、譬えば木に縁るがごとし、高きを務めて下を畏るること滋々甚だし。六馬の乖離するは、必ず四達の交衢に於てす。万民の道に叛くは、必ず君上の政を失うに於てす。上は尊厳にして危うく、民は卑賤にして神なり、之を愛すれば則ち存し、之を悪めば則ち亡ぶ。民に長たる者は、必ず此の要を明らかにす。故に南面して官に臨み、貴くして驕らず、富みて能く供す。本有りて能く末を図り、事を修めて能く業を建つ。久しく居りて滞らず、情近くして遠きに暢ぶ。一物を察して多きを貫き、一物を治めて万物乱るる能わざる者は、身を以て本とする者なり。君子民に蒞むには、民の性を知らざる可からずして、諸を民の情に達す。既に其の性を知り、又其の情に習えば、然る後民乃ち命に従う。故に世挙がれば則ち民之に親しみ、政均しければ則ち民怨み無し。故に君子民に蒞むには、高きを以て臨まず、遠きを以て導かず、民の為さざる所を責めず、民の能くせざる所を強いず。明王の功を以て、其の情に因らざれば、則ち民厳にして迎えず。之を篤くするに累年の業を以てするも、其の力に因らざれば、則ち民引きて従わず。若し民の為さざる所を責め、民の能くせざる所を強いれば、則ち民疾む、疾めば則ち僻す。古の聖主冕して前に旒するは、明を蔽う所以なり。紘紞耳を充つるは、聡を掩う所以なり。水至って清ければ則ち魚無く、人至って察すれば則ち徒無し。枉りて之を直くし、自ら之を得しめ、優にして之を柔にし、自ら之を求めしめ、揆りて之を度り、自ら之を索めしむ。民に小罪有らば、必ず其の善を求めて、以て其の過ちを赦す。民に大罪有らば、必ず其の故を原ねて、仁を以て化を輔く。如し死罪有るも、其れをして生かしむれば、則ち善なり。是を以て上下親しみて離れず、道化流れて蘊わらず。故に徳は、政の始めなり。政和せざれば、則ち民其の教えに従わず。教えに従わざれば、則ち民習わず。習わざれば、則ち得て使う可からず。君子言の信ぜらるるを見んと欲せば、先ず其の内を虚しくするより善きは莫し。政の速やかに行われんことを欲せば、身を以て之に先んずるより善きは莫し。民の速やかに服せんことを欲せば、道を以て之を御するより善きは莫し。故に服すと雖も必ず強う。忠信に非ざるよりは、則ち以て親しみを百姓に取る可き者無し。内外相い応ぜざれば、則ち以て信を庶民に取る可き者無し。此れ民を治むるの至道なり、入官の大統なり。」子張既に孔子の斯の言を聞き、遂に退きて之を記す。