孔子家語 / 六本
曾子從孔子之齊,齊景公以下卿之禮聘曾子,曾子固辭。將行,晏子送之曰:「吾聞之君子遺人以財不若善言。今夫蘭本三年,湛之以鹿酳。既成噉之,則易之匹馬。非蘭之本性也,所以湛者美矣。願子詳其所湛者。夫君子居必擇處,遊必擇方,仕必擇君。擇君所以求仕,擇方所以修道。遷風移俗者,嗜欲移性。可不慎乎?」孔子聞之曰:「晏子之言,君子哉。依賢者,固不困;依富者,固不窮。馬蚿斬足而復行,何也?以其輔之者眾。」
新字:曽子従孔子之斉,斉景公以下卿之礼聘曽子,曽子固辞。将行,晏子送之曰:「吾聞之君子遺人以財不若善言。今夫蘭本三年,湛之以鹿酳。既成噉之,則易之匹馬。非蘭之本性也,所以湛者美矣。願子詳其所湛者。夫君子居必択処,遊必択方,仕必択君。択君所以求仕,択方所以修道。遷風移俗者,嗜欲移性。可不慎乎?」孔子聞之曰:「晏子之言,君子哉。依賢者,固不困;依富者,固不窮。馬蚿斬足而復行,何也?以其輔之者眾。」
書き下し
曾子、孔子に従いて斉に之く。斉の景公、下卿の礼を以て曾子を聘するも、曾子固く辞す。将に行かんとするに、晏子之れを送りて曰わく、「吾之れを聞く、君子人に遺るに財を以てするは善言に若かずと。今夫れ蘭本三年、之れを湛すに鹿酳を以てす。既に成りて之れを噉わば、則ち之れを匹馬に易う。蘭の本性に非ざるなり、湛す所以の者美なればなり。願わくは子其の湛す所の者を詳らかにせよ。夫れ君子は居るに必ず処を択び、遊ぶに必ず方を択び、仕うるに必ず君を択ぶ。君を択ぶは仕えんことを求むる所以なり、方を択ぶは道を修むる所以なり。風を遷し俗を移す者は、嗜欲性を移す。慎まざる可けんや。」孔子之れを聞きて曰わく、「晏子の言、君子なるかな。賢者に依れば固より困しまず、富者に依れば固より窮せず。馬蚿は足を斬られて復た行く、何ぞや。其の之れを輔くる者の衆きを以てなり。」
現代語訳
曾子が孔子に従って斉に行った。斉の景公は下卿の礼をもって曾子を招こうとしたが、曾子は固く辞退した。曾子が斉を去ろうとするとき、晏子が見送りに来て言った。「私はこう聞いています。君子が人に贈るものは、財よりも善い言葉に及ばないと。ここに蘭の根があるとして、三年たったものを鹿の脂で仕込む。それが出来上がって食べれば、一頭の馬にも匹敵する値打ちになる。これは蘭そのものの本来の性質ではなく、仕込んだ調味料が優れていたからだ。どうかあなたも、自分が何に浸り、何に染まっているかをよく見極めてほしい。そもそも君子は、住むにも必ず場所を選び、出かけるにも必ず行き先を選び、仕えるにも必ず主君を選ぶものだ。主君を選ぶのは仕官の道を求めるためであり、行き先を選ぶのは道を修めるためだ。風俗を変えてしまうのは、欲望が人の性質を変えてしまうからだ。慎まずにいられようか。」孔子はこれを聞いて言った。「晏子の言葉は、まことに君子のものだ。賢者に頼れば決して行き詰まることはなく、富める者に頼れば決して困窮することはない。馬蚿(多足の虫)は足を一本切られてもまた歩ける、それはなぜか。それを助ける足が数多くあるからだ。」
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
論語 衛霊公篇子曰わく、君子は器ならず。
-
荀子・哀公篇哀公曰く、善し。敢えて問う、何如なれば斯ち之を君子と謂うべきか、と。孔子対えて曰く、所謂る君子なる者は、言は忠信にして心に徳とせず、仁義身に在りて色に伐(ほこ)らず、思慮明通にして辞は争わず。故に猶然として将に及ぶべきが如き者は、君子なり、と。
-
論語 学而第一子曰く、「君子は食らうに飽くことを求めず、居るに安きを求めず、事に敏にして言に慎み、有道に就いて正す。学を好むと謂う可きのみ。」
-
論語 為政篇子曰、君子不器。
-
論語 学而第一子曰く、「君子重からざれば則ち威あらず、学べば則ち固ならず。忠信を主とし、己に如かざる者を友とすること無かれ、過てば則ち改むるに憚ること勿かれ。」
-
論語 公冶長篇子、子賤を謂いて曰く、『君子なるかな、若(か)の人!魯に君子無くんば、斯れ焉(いずく)んぞ斯れを取らんや。』