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後世への最大遺物 / 第二回・私の油のできるまでは本を読まぬ

この人の生涯はすでにご承知の方もありましょうが、チョット申してみましょう。二宮金次郎氏は十四のときに父を失い、十六のときに母を失い、家が貧乏にして何物もなく、ためにごく残酷な伯父に預けられた人であります。それで一文の銭もなし家産はことごとく傾き、弟一人、妹一人持っていた。身に一文もなくして孤児です。その人がドウして生涯を立てたか。伯父さんの家にあってその手伝いをしている間に本が読みたくなった。そうしたときに本を読んでおったら、伯父さんに叱られた。この高い油を使って本を読むなどということはまことに馬鹿馬鹿しいことだといって読ませぬ。そうすると、黙っていて伯父さんの油を使っては悪いということを聞きましたから、「それでは私は私の油のできるまでは本を読まぬ」という決心をした。

書き下し

この人の生涯はすでにご承知の方もありましょうが、ちょっと申してみましょう。二宮金次郎氏は十四のときに父を失い、十六のときに母を失い、家が貧乏にして何物もなく、ためにごく残酷な伯父に預けられた人であります。それで一文の銭もなし、家産はことごとく傾き、弟一人、妹一人持っていた。身に一文もなくして孤児です。その人がどうして生涯を立てたか。伯父さんの家にあって、その手伝いをしている間に本が読みたくなった。そうしたときに本を読んでおったら、伯父さんに叱られた。この高い油を使って本を読むなどということは、まことに馬鹿馬鹿しいことだといって読ませぬ。そうすると、黙っていて伯父さんの油を使っては悪いということを聞きましたから、「それでは私は私の油のできるまでは本を読まぬ」という決心をした。

現代語訳

この人の生涯はすでにご存じの方もあるでしょうが、少し申しましょう。二宮金次郎氏は十四で父を失い、十六で母を失い、家が貧しくて何もなく、そのためにごく厳しい伯父に預けられた人です。一文の金もなく、家産はすっかり傾き、弟が一人、妹が一人いました。身に一文もない孤児です。その人がどうやって一生を立てたか。伯父の家にいて手伝いをしているうちに本が読みたくなった。そして本を読んでいたら伯父に叱られた。この高い油を使って本を読むなど、まったく馬鹿馬鹿しいと言って読ませない。そこで、黙って伯父の油を使うのは悪いと聞きましたから、それでは自分の油ができるまで本は読まない、という決心をしました。

解説

抗議でも懇願でもなく、自分の油を作るという道を選んだ少年の話です。叱られた理由を正しく受け取り、油が伯父のものであることを認めたうえで、では自分の油を作ろうと決める。理不尽に対する構えとして、これ以上ないほど実際的です。後に報徳の教えとして体系になる考え方の芽が、ここに見えます。前段で内村が、規模ではなく生涯が遺物だと言った、その生涯の中身がこれから示されていきます。

この章句が説くこと

自立決心貧困勤勉尊徳

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