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後世への最大遺物 / 第二回・カーライルの四十冊より生涯

クロムウェルがアングロサクソン民族の王国を造ったことは大事業でありますけれども、クロムウェルがあの時代に立って自分の独立思想を実行し、神によってあの勇壮なる生涯を送ったという、あのクロムウェル彼自身の生涯というものは、これはクロムウェルの事業に十倍も百倍もする社会にとっての遺物ではないかと考えます。私は元来トーマス・カーライルの本を非常に敬読する者であります。それである人にはそれがために嫌われますけれども、私はカーライルという人については全体非常に尊敬を表しております。たびたびあの人の本を読んで利益を得、またそれによって刺激をも受けたことでございます。けれども、私はトーマス・カーライルの書いた四十冊ばかりの本をみな寄せてみてカーライル彼自身の生涯に較べたときには、カーライルの書いたものは実に価値の少いものであると思います。

書き下し

クロムウェルがアングロサクソン民族の王国を造ったことは大事業でありますけれども、クロムウェルがあの時代に立って自分の独立思想を実行し、神によってあの勇壮なる生涯を送ったという、あのクロムウェル彼自身の生涯というものは、これはクロムウェルの事業に十倍も百倍もする、社会にとっての遺物ではないかと考えます。私は元来トーマス・カーライルの本を非常に敬読する者であります。それである人にはそれがために嫌われますけれども、私はカーライルという人については全体非常に尊敬を表しております。たびたびあの人の本を読んで利益を得、またそれによって刺激をも受けたことでございます。けれども、私はトーマス・カーライルの書いた四十冊ばかりの本をみな寄せてみて、カーライル彼自身の生涯に較べたときには、カーライルの書いたものは実に価値の少いものであると思います。

現代語訳

クロムウェルがアングロサクソン民族の王国を作ったことは大事業ですが、クロムウェルがあの時代に立って自分の独立の思想を実行し、神によってあの勇壮な生涯を送ったという、クロムウェル自身の生涯は、彼の事業の十倍も百倍も大きい、社会にとっての遺物ではないかと考えます。私はもともとトマス・カーライルの本を非常に敬って読む者です。そのためにある人からは嫌われますが、私はカーライルという人について全体として非常に尊敬しています。たびたびあの人の本を読んで益を得、また刺激も受けました。けれども、トマス・カーライルが書いた四十冊ほどの本をすべて集めても、カーライル自身の生涯と比べたときには、書いたものは実に価値の少ないものだと思います。

解説

自分が最も敬う著者を例に出して、その四十冊より生涯のほうが大きいと言い切ります。前に、聖書のほかに自分を作った本は二冊、その一つがカーライルの『クロムウェル伝』だと明かしていました。その恩を認めたうえで、なお書物より生き方が上だと置く。本によって動かされた当人が、本の限界を言うのですから重みがあります。業績で測る物差しを最後まで外していく手つきが、この講演の一貫した方法です。

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