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学問のすゝめ / 十二編・人の品行は高尚ならざるべからざるの論・盲人に向かいて誇るがごとし

しかるに今わずかに謹慎勉強の一事をもって人類生涯の事となすべきや。思わざるのはなはだしきものなり。人として酒色に溺るる者はこれを非常の怪物と言うべきのみ。この怪物に比較して満足する者は、これを譬えば双眼を具するをもって得意となし、盲人に向かいて誇るがごとし。いたずらに愚を表するに足るのみ。ゆえに酒色云々の談をなして、あるいはこれを論破し、あるいはこれを是非するの間は、到底諸論の賤しきものと言わざるを得ず。人の品行少しく進むときはこれらの醜談はすでにすでに経過し了して、言に発するも人に厭わるるに至るべきはずなり。

書き下し

しかるに今わずかに謹慎勉強の一事をもって人類生涯の事となすべきや。思わざるのはなはだしきものなり。人として酒色に溺るる者はこれを非常の怪物と言うべきのみ。この怪物に比較して満足する者は、これを譬えば双眼を具するをもって得意となし、盲人に向かいて誇るがごとし。いたずらに愚を表するに足るのみ。ゆえに酒色云々の談をなして、あるいはこれを論破し、あるいはこれを是非するの間は、到底諸論の賤しきものと言わざるを得ず。人の品行少しく進むときはこれらの醜談はすでにすでに経過し了して、言に発するも人に厭わるるに至るべきはずなり。

現代語訳

それなのに今わずかに謹慎と勉強という一事をもって人の生涯の事とすべきでしょうか。考えの足りないことの甚だしいものです。人として酒色に溺れる者は、これを非常の怪物と言うべきだけです。この怪物と比べて満足する者は、たとえれば両目が見えることを得意として、目の見えない人に向かって誇るようなものです。いたずらに愚かさを表すに足るだけです。ですから酒色うんぬんの話をして、これを論破したり是非を言ったりしている間は、結局のところ議論の卑しいものと言わざるを得ません。人の品行が少し進むときは、これらの醜い話はすでに通り過ぎてしまって、口に出しても人に嫌われるようになるはずです。

解説

比較の相手が低いことの滑稽さが、強い比喩で示されます。備わっていて当然のものを誇るのは、誇ることではない、と。そして議論の水準という見方が出てきます。何を話題にしているかで、その集団の品行の程度が分かる、と。品行が進めば、この種の話は自然と話題から消えるはずだ、という観察は、組織の会話の質を測る物差しとしても読めます。
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この章句が説くこと

比較当然水準話題滑稽

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